異世界探訪記

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二十二日目。最果ての森の中、野営地にて

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二十二日目。
 森に入ってから二日目。この辺りがこの森で一番深い所らしく、エルットさんが昨日の夕餉が終わった後と今日の朝に注意するよう言ってきたのが印象深かった。
 そして、言葉に違わずめちゃ暗い。足元はぼんやりと見えるだけで、それも先導するエルットさんと殿を務めるギルビットさんがカンテラを持ってくれている為だ。
 竹の子の森と同じく俺の身長と同じくらいの直径の木の根や俺の身長の三倍くらいの直径を持つ木の幹がうねうね曲がる道からボンヤリ見え、時折風か小動物か分からないが枝葉が揺れる音が木霊する。

昼休憩の時にギルビットさんが簡単な魔法陣が描かれた紙を見せてくれた。
 円上に描かれた文字と、そこから文字で描かれた直線。その先には指先大の円があり、その円も文字で描かれていた。
 この魔法陣は神話の時代から伝わる古書の中に記されていた選別の魔術陣らしい。学者が言うにはこれを使って魔法の使える者と使えない者を選別していたらしい。
 確かに、選別の魔法陣と読める文字が下に書いてあった。
 でもこれ、ギルビットさんに解説されながら読み解いていくと、発動には消費魔素マナが数値にして一と書いてあるんだが・・・・・・。
 ギルビットさん曰わく、神話の時代には魔素を持たない人も居たのだろうと言う見解だったが、この魔法陣が描かれた古書のページの写しを見てその見解が間違っている事が分かった。
 『五十回で打ち止めの者は肉体労働、百回で打ち止めの者は厨房及び部屋の清掃が望ましい』と書かれていたのだ。
 その事を告げると、ギルビットさんは唖然としていた。古代語は判読が難しく、かつ、文法が良く分からなかったため、余生の楽しみとして古代語の研究をしていて、その道では第一線だったのだがこれはまだ解読していなかったらしい。数字と厨房と部屋が出てきたのは分かったが、その間の言葉が分からず何を言っているのかさっぱりだったらしい。
 うーん、これ、俺が見るとただ平仮名が書いてあるだけなんだよな。魔術陣の注釈なんて、『ここに指を置いて魔力を込める。すると、意志や想像の固定化を無くして純粋な魔力を取り出せる』としか書いてないし。え?それを読み解くのに十数年かかったの?遅過ぎない?いや、早すぎるのか?まぁ、どうでも良いか。
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