異世界探訪記

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五十一日目。ストレイフーズにて

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五十一日目。
 今日は観光する日と言うことでギルビットさんが先導に立って色々見て回った。午前中はハルスヴォルグさんの鍛冶屋に始まり、資材商、雑貨屋、薬屋を巡った。バヤット君は雑貨屋、ハヌラット君は薬屋に興味を示し、バヤット君は特にリボンを熱心に眺めていたので好きな娘でもいるのか聞いてみたら顔を真っ赤にして否定していた。うい奴め。
 ハヌラット君の方は丸薬や粉薬を手に取り戻しを繰り返していたので病弱な家族でも居るのか聞くと、「もっと長期保存が出来る薬が有れば安心できるのに……」と応じられて返答に困った。
 日光を遮る容器に煮沸を施し薬を入れ、空気を抜きながら蓋をすれば多少保存期間が延びるんじゃないかなぁ?とは言っておいたが実際どうなんだろう?

 次に訪れたのは青果商店街。行商人や村で余った野菜を売っていて、基本的にはこの街に籍を持たない商店街なのだそう。円で言う四等分した線の右側の部分を占め、混み具合はここ辺りでは最大の様に思える。
 ドワーフやノーム、妖精ピクシー族やその他種族の子供たちが走り回っていて心臓に悪い。
 だが、あの混雑様から想像もできないが接触事故は子供の方が少ないとの事。
 青果商店街では行商人の他に屋台が立ち並ぶ区画が中央寄りにあり、そこで昼ご飯を堪能した。

 午後は資料館巡り。知識欲にまみれた人達の要望で作られた南東の区画で、歴史学、各国国語学、数学、魔法学と、この付近で学ばれる大体の学科毎の図書館が連立している。一部職員の収集癖が祟ってこれだけ大きくなったのだとか。
 因みに、この国の識字率は高い方らしい。それでも六割と出たら喝采もの。識字率百パーセントのエルフ族の集落が異常なのだそう。
 まぁ、主にギルビットさんの所為だが。

 その後は南西区に移動してお洒落に喫茶店でブレイク。そこでは紅茶とハーブティーがいただけた。
 初めて来るのだろうバヤット君やハヌラット君は厳かな雰囲気に当てられてガチガチだったが、領主の不要になった家具や食器を貰い受けて整備し、領主から了承を得てから使っているので高級だが価値は無いに等しいとの事。
 経営者は元貴族の令嬢で、俺が尋ねたのはその令嬢を慕って着いてきた専属の侍従。歳はバヤット君やハヌラット君と同じ十五歳との事。他にウエイトレスも居たが、彼女も経営者を慕って着いてきた元専属侍女。
 因みに、この建物は王太子殿下の婚約者だったここの経営者が、婚約破棄されて流れてきたのを哀れんだ領主が提供したらしい。なんでも、ここの経営者は領主の悪友だったとか。
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