異世界探訪記

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七十八日目。最果ての森の中、野営地にて

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七十八日目。
 今日は雨が降っているのか天井……じゃないか。頭上の葉っぱに雨が当たる音が騒々しい。たまに首筋に当たってびっくりする。
 それでもカッパを着るほどではないのか、マナフィに勧められたのをラスティーは断っていた。
 俺?徘徊していた時にどうでも良くなって、逆に喜び勇んで葉っぱのコップを量産したもんだ。
 うん、その癖が治ってなかった。最初に雨粒が当たったときに嬉々として周辺の草を探し出し、コップを作り始めたら疑問符を飛ばしまくるような表情で見られて恥ずかしかった。

 まぁ、そんな寝起きの出来事はどうでも良い。
 なにもしないとそわそわしてしまったため、ギルビットさんから貰った木のコップを片手に、ハヌラット君、メヌエットさん、ギルビットさんと、ラスティー、アズラータさんを交えて教育に関して議論した。
 エルフ族から提供できるのは、識字率向上のための施策。アズラータさんからはそれを土台にした教育方法。俺とラスティーからは識字率ほぼ百パーセントの世界の体験談だ。ラスティーはアズラータさんと一緒にこの世界の学校に通っていたので教育方法の方でも意見を出していた。
 あっちの世界の話しはこちらの世界にとってはまだ夢のまた夢ではあるが、しっかりとしたビジョンを示せればそれに向かうことが出来る。
 そこからはこの領地の予算などを勘案してこの領地に合った施策を実行していけばいいと思う。

 結構有意義な議論だったのでは無かろうか。歩きながらずっと議論していたので、最後まで参加できたのはギルビットさん、俺、アズラータさん。ハヌラット君やメヌエットさんが脱落する中でアズラータさんが残ったのは意外だった。
 メヌエットさんとハヌラット君は声を出さなくなった代わりに、文字の移動を積極的に遣ってくれていた。
 最終的にこれが今現在で最も現実的だろうと言われたのが読み書き算盤を教える寺子屋システム。先生としては平民として生きている貴族の次男、三男坊の中で素行、性格の良い人物。そう言った人物は大体、冒険者として活躍しているのだそうだ。

 今日はキノコメインの夕餉になった。朝にコップになる葉を探して居たときに群生地を見つけたためだ。
 キノコ料理が苦手なラスティーには肉メイン。そこでアズラータさんが驚いたので聞いたところ、キノコが入った料理を平然と食べていたので苦手だと知らなかったそうだ。
 真相はと言うと、やせ我慢して食べていたらしい。
 せ、成長してる……っ!!
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