習作

Luckstyle

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あれから一ヶ月が経った。変わった事と言えば、スールと別々にとっていた宿の部屋を二人部屋一つに変え、俺達が倒した魔物の報賞でランクがBになったぐらいか。
 後は、スールの交友関係が少し変わった。パーティー以外には興味を見せていないのはいつも通りだが、男のグループに着いてくることは少なくなり、女のグループに居ることが多くなった。
 俺の所属しているパーティーは男三、女三のちょうど良い具合のパーティーなのだが、前まではスールがこちらに居たので町の中で分かれるときは四人と二人に分かれてバランスが悪かったのだがそれが改善された。
 この前喫茶店で女のグループにばったり出くわした時にスールの様子を聞くと、きゃいきゃいと騒ぐように出し惜しみする様子もなく、スールが見た目に反して甘い物好きだっただとか、可愛らしい服が実は好みだとかを嬉々として教えてくれた。
 その後ろで顔を真っ赤にしたスールがおろおろと忙しなく二人を止めようとしていたのが微笑ましい。
 そこで決まったのは、しばらくこの町でゆっくり過ごすと言う事と、スールの服を買う事、朝から夕飯までは三チームに分かれて行動する事、夕飯は全員で摂る事だった。リーダーの俺とサブリーダーのスールがくっついた事でパーティーメンバー達が漸く大手を振って意中の人と時間が過ごせると言われた。俺とスールがくっつくのをやきもきしながら待っていたらしい。

「さてと」
夕飯の酒場から宿に戻り、本日二度目の口付けを交わしてから抱きしめているスールを見下ろして声を上げた。スールは夢見心地で頬を紅潮させている。
「そろそろ慣れたか?出来ることなら、一歩先に進んでも良いと思ったんだが」
理性とは鍛え上げることが出来るようで、この一ヶ月でキスする長さは四半刻の半分くらいならば続けられる様になっていた。今では互いの唇を楽しむ余裕も出来ていると感じる。
 始めの内はすぐに離れても半日は顔を真っ赤にしていたスールも、今ではギリギリまで口付けをしても一刻もすればどうにかギクシャクしない位に復活する様になった。
 ・・・・・・ディープキスを教えたら、また一ヶ月は同じ事になるかも知れない。
「い、一歩先・・・・・・」
びくりと肩を震わせるスールは、期待と不安を孕んだ黒瞳を揺らし、みるみる内に耳と首が赤くなっていく。
「舌と舌を絡ませようと思うんだが、知ってるか?」
スールの反応に、半ば確信を得ながら問うてみる。その間にスールを横抱きにし、ベッドへと連れて行く。
「ディープ・・・・・・キスって聞いた」
穴が有ったら入りたいと訴えるように、スールは顔を俯かせて身体を丸めながら、か細く俺の問いに答える。俺の狙い通り、あの二人はしっかりスールに予習をさせたみたいだ。
「そうか。・・・・・・出来そうか?」
二人の働きに満足して頷いた後、拒否されないか心配になりながら聞いてみる。
 スールは心を落ち着けるためか幾度も深呼吸を繰り返してから、小さく頷いてくれた。
 その反応を見て嬉しくなり、俺はいそいそと彼女の隣に横になって右腕を差し出す。スールは緊張した面持ちでゆっくりと横座りの体勢から俺の胸の中に舞い降り、いつものように身体を密着させてくる。
「じゃあ、失礼して」
顎を上げて目を閉じたスールに声をかけてから、何度目になるのか極上の触感をしているスールの唇に俺の唇を合わせる。それだけで俺の体は燃え上がるように熱くなるが、チリチリと焼ける理性を叱咤して本能の赴くままに動き出そうとする自身を抑えつける。
 啄むように何度も離し、そして合わせながら次第に合わせる時間を増やしていくと、いつの頃からか離す度にスールが離すのを残念がるようなか細く小さなうめき声が聞こえてきた。
 いつもなら此処でキスを止めるが、今は少し強めに唇を押し付ける。右腕で頭を、左腕で腰を捕縛し、スールの口腔に舌を忍ばせた。
「~~~~~!!」
途端にスールの身体がびくんと跳ねた。まだスールの舌と出逢っては居ないが、やはり刺激が強すぎたのだろうか?
 逡巡していると、力を抜いたスールが片腕を俺の頭に回して催促するようにぐいぐいと引っ張ってきた。それを感じて、カッとなった俺は今まで慎重に進めてきた次第をかなぐり捨てて嬲るように荒々しく、スールの口腔を蹂躙し始めてしまった。
 彼女の、声にならない悲鳴が、遠くから聞こえる。

 気がつくと、スールを横抱きにしての首筋に顔を埋め、スールの形のいい尻に手を這わしているところだった。スールは俺を抱きしめながら、力なくゆらゆらと頭を振り、俺の与え続けている感覚に翻弄されて肩をひっきりなしに震わせている。
「す、すまん!」
痺れた頭をやっとの思いで動かし状況を確認すると、慌ててスールを解放する。
 安堵するようなため息が聞こえてきたがスールは離れることはなく、両腕に力を込めて俺にしがみついているようだが残ったなけなしの力を総動員でもしているかのように、いつもの彼女にしては余りにも弱々しい力でもって両手を震わせている。
「・・・・・・びっくりした」
隙間のある、普通の横抱きにするとスールは本当に驚いただけだと示すよう、怯えを見せずにあっけらかんと呟いた。それだけで重くのしかかっていた罪悪感が晴れていくようだ。
「すまなかった。スールに頭を引っ張られた辺りでついカッとなってしまって。本当はもっと優しくするつもりだったんだが・・・・・・」
「大丈夫。レヴィは優しくしてくれてるって分かってたし、本当はどれだけオレを求めてるかもわかって嬉しかった。腰は抜けたけど」
今にも平謝りしそうになる俺を察してか、機先を制してスールが恥ずかしそうにそっぽを向きながら口を尖らせる。
 かわいい。
「あんな・・・・・・一刻もずっとキス・・・・・・合間に言葉も・・・・・・嬉しくて、恥ずかしくて死にそうだった」
俯きながらぽつりぽつりと行為の感想を必死になって述べてくれるスールは、最後は耐えきれなくなったのかオレの胸に顔を埋めた。
 一刻もキス・・・・・・。なにをやっていたんだ俺は。
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