凡骨の意地情報局

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ブレストパスト抗争

エピローグ

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「そんな事になってたのか」
大した感情も動かないまでも、多少は驚いた。
 そんな声音でハリスは今日の新聞紙の一面を飾るニュースを読んでいた。
 一週間前は空飛ぶ少女が背中にメイド服の少女を乗せて国中を飛び回っているというニュースが連日流れていたが、一昨日王都の郊外の他に全国で光の柱が出現した事や、昨日、ベーリック商会の一族郎党が処刑。
 関係者が犯罪奴隷に落とされたことが報道され、今日になって事の真相が明らかになったと報じられた。
 ベーリック商会の一族郎党が処刑された事の経緯が事細かに記されており、中にはハリスの知らない事実も含まれていた。
 その事をサリーに指摘すると、面白いくらいに顔を歪めて静かに闘志を燃やし始めたようである。

 そんな会話や、別の案件の話をしていると、前に割った後放置されたままの窓の外から自動車の停車する音が聞こえてきた。窓によって見下ろすと、ブレストマイズ家の所有する蒸気自動車が停まっていた。

 数分すると、見違えるように表情が明るくなったアシュリー・フォン・ブレストマイズがやってきた。
 ハーフアップを止めてポニーテールに戻したらしい。
 その他にも優美なドレス姿から動きやすいパンツルックに替えて要所を金属で守り、その上からローブを羽織るという騎士とも魔導師とも取れる格好になっていた。
「これはこれはアシュリー嬢。今朝の新聞、読みましたよ」
北方の暴れ馬と呼ばれ始めた頃の出で立ちの情報に戻った彼女に安堵の溜息を吐く。その後祝福するように明るい声で声をかけると、「貴方のお陰です!」とハキハキとした返事が返ってきた。

 アシュリーがやってきたのはハリスの出した助言と、それを実現させるための技術の提供。それで解決できた事件の報酬だそうだ。
 事件解決で国王から出された報酬のうち、アシュリーとハリスで決めたハリスの取り分は二割。金貨二百枚と、助言と技術提供の報酬金貨百枚の合計金貨三百枚が今回の報酬になった。
 全体の合計が二百枚でも貰いすぎだと思ったが、アシュリーにこれ以上まけさせないと言う強い意志や、サリーからの助言でこの額になった。
 そこからは話を切り替えてこれからのアシュリーの展望を聞くことになった。

 何でも、光の柱の下には新築された薬物生産拠点があり、国王の命令で砂礫にした後爆破せよと言われたのでその様にしたら騎士団と魔導師団の両方から声がかかり、国王の仲介で両方に席を置くことになったのだとか。
 ただし、自分としては魔法研究や農地の研究をしたいと発言した所これも通ってしまい、現状では研究部に籍を置き、騎士団の朝練に顔を出し午前中は魔導師団、午後は夜まで研究部と言う三足の草鞋わらじ状態で話がまとまったらしい。
 そのお陰で、専属従者を増やす事にしたのだそうだ。そうすればマーシェリーも気兼ねなく動けるし、一人では捌ききれないほどの仕事量が有りそうだからと。
 その言葉にハリスは穏やかな笑みを浮かべて溜息を付く。
「君の今の心はすごく綺麗だ。今の心の向くまま思う事を存分にやりなさい」
その言葉を聞いて、アシュリーは嬉しそうに微笑んで力強く頷いた。
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