凡骨の意地情報局

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ハリス、幼女を拾う

問題の発覚

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 先日、国王の発令で成人前の子供を保護する法律が制定された。
 家が裕福であるにも関わらず絶食を課す事や公の場では無論の事、家の中でも使用人の居る前で子を蔑ろにする行為は程度により罰せられることになった。
 家の中での出来事は告発と言う形に頼らざるを得ないが、罰する法律が有るのと無いのとでは扱いが違うだろうとの事。
 告発する側にも制約があり、虚偽を報告した場合には軽くて鞭打ち、重いと反逆罪の適応まで有り得るという。
 告発時には証拠となる資料が必要となり、裁判所の判断で足りない場合は国の情報局に情報収集を要請する事まで明記された。

「国王から内密に記憶玉の量産を打診されたのは情報局の為だったか。
 予想は出来たけど」
それと同時にしれっと発令された法に、記憶玉に関する法律が有った。
 記憶玉の生産、販売、所持には許可が必要で、制定される前に生産販売の許可証が王宮から送りつけられてきたのはこれの所為だったのか。
 ハリスは動きやすくなっていく周辺の環境に戸惑いつつも、リリーの身元を探っていた。
 その事をリリーにも話しており、リリーの親権をその親からハリスに変えるのが目的と聞いて賛同を示していた。
 その意気込みはハリスが驚くほどで、
『今から帰って証拠を作ってくる!』
とリリーが自ら作り上げた記憶玉をひっつかんで駆け出した。
 それを止めたのはタツヤとサリーで、二人の調査が上手く行けばリリーが苦しい思いをせずに済むと力説していた。

「いやぁ、上手くできてるでしょう?この法律。
 売りたいなら自分で試行錯誤して記憶玉を作り上げ、王宮の許可が必要で、分解、改造、内容改変の禁止。
 それを確実にするためにそれらをしようとすれば自壊の上爆発の義務化。
 向こう五年は独占販売で儲けられますよ」
「それを売り込む為にリリーの回復の様子を国王に示す必要が有ったのか?」
タツヤの自慢気な声音に、ハリスは苦言を呈す。
 そうなのだ。
 記憶玉の有用性を示すために提示された記憶玉の内容はここ一ヶ月ばかりのリリーの様子であった。
「それがこっちに反映されてるんじゃないですか。
 子供を保護する法律。
 こっちは自分、本当にノータッチですよ。
 まあ、前に平民の子供に教育を施すと結果的に国が豊かに強くなりますよって謁見したときに伝えた事は有りますが」
「おまっ……国王に謁見できるのか……?」
「偶に料理を作ってくれって個人的に依頼されるんで、その時に。
 向こうの世界の事を知りたいみたいでしたね」
しれっともたらされる事実に、ハリスは驚嘆を禁じ得ない。
「失礼します。リリーの身元がわかりました」
そこに丁度入ってきたサリーは、からから笑うタツヤと珍しく細い目を見開いてタツヤを凝視するハリスの姿だった。
「そうか。詳しく聞こう」
そう答えたハリスには、どこか諦めの境地のような物が見え隠れしていた。

 サリーの説明によると、リリー本来の名前はミスリー・アステヤック。
 アステヤック侯爵の現当主らしい。
 前当主はレイリー・アステヤックと言い、アステヤック侯爵は代々女貴族で成り立っており、その勃興は建国時代まで遡るのだとか。
 そして、レイリー・アステヤックはリリーを生んだ後、三年後に容態を急変させて死んでいて、婿養子のジェフリー・ボートマンがミスリー・アステヤックの後見人として政務に就いている。
 しかしながらこのジェフリー・ボートマン、レイリーの死後すぐに愛人をアステヤック邸に招き入れて臣下に不興を買った他、領地経営も無能で領民は不況に喘いでいるとか。
 それでも豪遊は止まらず、度重なる課税に領民の間では反乱の機運が高まっているらしい。
「なんとも度し難いな。婿養子の分際でアステヤック侯爵を名乗り、やりたい放題か」
「そうでもないみたいなんですよね。
 婚姻の際の契約書にレイリーの娘が生まれたら、レイリー死亡の際、全権をジェフリーではなく娘に移譲するとなっているので、出来る範囲内で無能をさらけ出していると言った方が良いでしょう」
「レイリーはこれを予知していたのか?
 そうだとしたら何故結婚なんかしたんだ」
「この文言を入れさせたのはアステム・ラインバッハと言う執事長ですね。
 ラインバッハ子爵の三男で、ジェフリーと同格の人物です」
「ジェフリーはボートマン子爵の三男だったか?」
「ですね。
 しかし、当主の後見人と言う肩書きは強いらしく、諫言をしても止まらないことでこうなってしまっているんだとか」
「会ってみたいなぁ」
「会いますか?彼、今階下にいてリリーを探してる様子ですけど」
「会おう。
 ついでに、リリーも呼んでくれ」
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