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始まりの章
第11話(※修正済み)
しおりを挟む____ダンッ…!
この俺、山田風太郎は瑞稀のタックルを真正面から受け止めた。
だがしかし、凡人である俺には荷が重かったらしい。
呆気なく吹き飛ばされた、しかし瑞稀に抱きついた両腕は決して離さない。だから、俺と瑞稀は互いの体がもつれながら地面に滑り込むように後方へと転がり込んでしまったのだ。
____ズザァーーー……!
その時、山田風太郎という男の心臓は先程に受けた衝撃によって心肺停止へと陥っていた。
____気がついた。
すると、見渡す限り一面が白濁とした世界に俺はいた。
「ここは……?」
そんな疑問、先程まで幼馴染の瑞稀を止める事に必死だった筈……、つまり此処はあの世___ッ!?
えっ?、俺死んだの……!?
俺の思考、そこに己の死がよぎる。
「く~、やっぱ俺じゃあ力不足だったかー」
アチャー、と額を押さえて呟いた俺。そして、不意にぶつかる瞬間に見せた瑞稀の歪み切ったあの表情を思い出す、たしかにアレは人間の為せる顔ではなかった……
だけどよ……、
すごく悲しそうでもあったんだ……。
「そんな表情、俺は見たくなかった………」
だから俺は……、
命を賭してでも止めたかった、あいつの苦しみを少しでも受け止めたかったんだがな………。
「まぁ、さすがに無理があったか……」
そう言って俺は頭を掻く、この状況は仕方がない……遺書ぐらい書く時間が欲しかったが、まぁ受け入れるとしよ___!
____ふと俺の視界が一点に注がれた。
「瑞稀……ッッ!!?」
そう叫んだ先、瑞稀がいた、うずくまっている。だがしかし、その背は明らかに普段見ていた背中よりも小さく見えた。
「瑞稀……」
幼い頃の瑞稀である、一人で泣いていた。俺は手を伸ばした、その小さな背に向けて手を伸ばそうとしたのだ。
___ハッ!
背後からの気配、反射的に俺は振り向くと、そこには普段よく見知っている大人の瑞稀が佇んでいた。そして、再び正面に向き戻った時には幼い頃の瑞稀は消えてしまっていた、仕方なく俺は後ろの瑞稀の方へと振り返った。
「えーとよ、なんていうか瑞稀……」
頬を掻く、上手く言葉が出てこない、代わりに瑞稀の声が聞こえてくる。
「フウタロー、私は……弱いね」
瑞稀の視線が下を向いた。
____俺は違うと反論する。
「何バカな事を言ってんだ、お前は……!」
____しかし、瑞稀の意見は違った。
「違うの!、私は未熟で!、ただ我儘なだけの子供ッ!、気に入らなければ他者を簡単に傷つける害悪な存在なの!」
瑞稀の瞳、そこには涙が滲んでいた。自身の胸を強く掴み、どこか苦しそうな表情でそう叫んだのであった。
しかし、俺は____、、、
「あのな瑞稀、それは__ッ!」
「フウタローを傷つけた!、あの女の子にすごく嫉妬した!、そして二人を傷つけた!、そんな私なんて……私なんて大キラ___ッ!?」
___ギュッ!
「ふぇ………!?」
不意に瑞稀を抱きしめていた、その理由は俺にも上手く説明はできない。だがしかし、その時の俺は咄嗟に瑞稀を抱きしめていたのである。
____俺は叫んだ。
「そんな事……、そんなこと言うなよ!」
無意識のうちに発していた言葉、俺はこうも呟いた。
「俺はバカで不器用だから他人より恥じてばかりの人生だ!、だけどよ瑞稀!、そんな俺を見捨てずにお前は呆れながらも毎回助けてくれたんだ!、たまに殴られる事もあるけどさ…!、瑞稀のそういう所も嫌いにはなれない自分がいる!、いつもお前は笑って!、笑いながら何度でも俺を揶揄っては、そんなダメな俺の側でいつも励まそうとお前はしてくれてた!、だからな……!、だからこそ俺は不器用ながらに今日まで笑って生きて来れたんだ!、だからさ………だからお前は昔から本当に強くてカッコいい俺にとっての___ッ!!」
"___ヒーローなんだよッ!!"
フウタローが発した、その言葉に瑞稀の瞳が光を得た。
「フウ……タロー………?」
瑞稀は驚きの混ざった表情で俺を呼んだ。そして、俺はこうも続けた。
「俺は昔からお前に憧れてた!、お前みたいに強くなりたいと何度も願って努力した!、こんな俺では力になれないかもしれんが、どうか……どうか………」
言葉に詰まった、しかし瑞稀はそんな俺を強く抱きしめた。
「ほんと……不器用な男だね、非モテのフウタローは……」
俺の胸元に顔を埋めて、瑞稀はそう微笑んで呟いてみせた。
そして____、、、
「じゃあフウタロー、最後に質問……」
そんな瑞稀からの質問である。
「あぁ、いいぜ……?」
「もしも私が君の事を好きだと告げていたら、君は恋人になってくれたかな?」
フウタローは処理落ちした脳で思考する。
____んっ?、こい…びと……恋人ッ!?
「な、なななな!?、へっ……ッ!!?」
驚きのあまり抱きしめていた瑞稀の体から両腕が離れてしまった、俺の心臓がドキドキとして鳴り止まない……!?
「ちょっと!、そんなに驚かれたら私だって傷つくんだからね!、これでも一応は女の子だし……」
そう瑞稀は両頬を赤らめて呟いた、その表情や仕草はどこかモジモジとしていて彼女は思わず俺から目を逸らした。
「あ、あぁ…悪いな瑞稀」
でも___、
「それには答えられない…!、俺はあの少女に恋をした……いわゆる一目惚れってやつだ!、だからお前とは___!」
瑞稀は人差し指でフウタローの唇を閉じた。
「みなまで言わなくていい、私……知ってたからさ」
ふっ、と諦めのついた表情……、
瑞稀は数歩、後ろへと下がった。
「お、おい……?」
瑞稀は告げる。
「だから、フウタロー……!」
瑞稀は少し悲しみの含んだ表情を見せるが、それは一瞬にして消え去った。
「私、待ってるから…!、君が私のことを好きになるまで待ってるから!、だから……それまでは君達の旅路を応援するね…!」
瑞稀は、そう言って笑ったのだ。俺は____
「おいおい、それは………いや、そうだな……その時になるまで俺の側で待っててくれよな、瑞稀」
俺も、そう言って笑ってみせたのであった。瑞稀は呟く。
「ふふっ、いいよ……だって、私はとても強いからね!、だから___」
いつまでも待ってる、永遠に待ってる、貴方達が二人幸せに人生を添い遂げて……生まれ変わったとしても……、この約束をもし君が忘れてしまってたとしても……、
私はずっと君のことを待ってるから___!
だって、私は強い……!
君の憧れた、強くてカッコいいヒーローなんだからね……!
「だから、私は君達の側でずっと待ってるから……浮気しちゃダメだよフウタロー!、女の子の恨みは怖いんだぞ~!、もしあの子を悲しませるような事があったら問答無用で私が全力で君を殴り倒しに行くからさ!」
____と、最後に釘を刺しておいた。
「ひえっ!?、肝に銘じておきます……!」
そんな彼の反応に瑞稀はフフッ…と、笑うとこう呟いた。
「じゃあ、ばいばい……フウタロー」
んっ……?
「お、おい瑞稀…!」
俺は咄嗟に手を伸ばす、幼馴染へと手を伸ばす。
「また……、会えるといいね」
そう言って、瑞稀は静かに目を閉じた___。
「瑞稀___ッ!?」
その背後に見えた物影、あのムカデが瑞稀を喰らおうと姿を現したのだ……!?
俺は駆け出した、気づいた時には既に駆け出していたのである。
届けッ___ッ!!
___ドッ…!
「フウタロー……っ!?」
俺の手が瑞稀を押し退けた、そんな一瞬の出来事である。
「ムカデ野郎!、喰うなら俺を食って地獄の沙汰まで腹下してろ馬鹿野郎……ッ!!」
___ドッ…!
ムカデの触覚が俺を貫く感覚、意識は急速に薄れて視界は暗転を始めていた。
「フウタロー……!?、ねぇフウタロー……!」
瑞稀の叫ぶ声、悪いな瑞稀……最後まで俺はお前を悲しませてばかりだったな。
そうしてこの俺、山田風太郎は自身の瞳を閉じる。
暗い暗い物語の終幕に、眩いばかりの輝きがある事を願って静かに瞳を閉じたのである。
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