ある日、始まった物語

どこか儚げな美少女

文字の大きさ
47 / 64
転換の章

第46話

しおりを挟む


 「管理者、あとお主はどれだけ戦える……否、お主はあと残りどれだけの時間を生きられるのじゃ?」


 歩行者の声、その瞳が真っ直ぐに愛を見つめていた。


 「…………!」


 愛の頬、そこから流れるは一縷の汗である。しかし、掴まれた腕を振り払い、愛は呟く。


 「そんなの…、貴女には何の関係もないじゃないですか……」


 プイッと首が横を向き、逸らされた目線。愛は無意識のうちに己の袖先の端をギュッと掴むようにして握り締めていた。


 「管理者…!、答えるのじゃ」


 歩行者の声、愛へと更に躙り寄っていく。


 「っ……………、、、」


 愛は尚も喋らない、無言を貫くその姿勢に歩行者の言葉に苛立ちが混じる。


 「管理者、いいから聞くのじゃ。わしには嫌い事が一つだけある。」


 ___それは…、、、


 「沈黙に他ならない、まだ互いに口汚く罵り合っている間は少なからず互いに相手の意見を聞こうとする"余地"がある。だがじゃ、お主の"それ"は、最初からその余地すら否定してしまう愚かな行為であると、その事を決して忘れてはいけないのじゃ」


 「……………私は…、ただ……、、、」


 愛は静かに口を開けた、だがしかし今はそれを語るべき時ではない。


 「私は、紅茶が好きです。」


 本題から大きく逸れた回答、その事に歩行者は疑問を抱いて眉を顰める。


 「ん……っ?、なんじゃ?、紅茶??」


 「私は、朝早くに起きた時に見える星空が好きです。まだ夜が明けるには早い、そんな夜空に浮かぶ月明かりが好きなんです。」


 「ほ、ほお……?」


 「私は、猫が好きです。自由自適、不遜にして傲慢にして愛らしい存在である猫がとても羨ましくて、とても恨めしいです……」


 「…………?」


 「私は、虫が嫌いです。それはそれは反吐が出るほど、とても嫌いです。」


 「私は、私自身がとても嫌いです。私が私ではない、そんな私自身がとても憎たらしい程に大嫌いです。」


 「私は、管理者を嫌悪します。自分の全てを投げ打ってまで運命に逆らい、その末に何も救えなかった愚か者の末路を私は知っています。」


 愛の手が自身の胸元に伸び、そして自身の胸部を強く握りしめた。


 ___だから…、


 「私は、わたしがどうなろうと構わない。その道のりがどんなに暗く、その行く末がどこまでも私の血で染まり切っていたとしても、私は一向に構わない。私は私を…、私で無くなろうと私が……、私こそが…」


 胸を締め付けた手、そこに更なる力が込められる。


 「私が必ず…!、この救いようのない物語に終止符を打ってみせる!」


 愛の肉体が輝きを放つ。それは白銀にして神聖、それは夜空に光る月明かりよりも儚く脆い弱々しい光かもしれない。だがしかし、確かな輝き、確固たる強さを伴って歩行者の視界を染め上げる。


 「私は、貴女が"嫌い"です。とても大嫌いです…!」


 ___だから、


 「貴女を倒して、私は私の道を進みます。」


 その言葉、その意思を聞いた歩行者、彼女は呆れた様子で愛に語りかける。


 「管理者、待つのじゃ!、わしはお主が思っているような存在ではないのじゃ、これは完全なる誤解じゃ、判断を早まるではないのじゃ!」


 しかし、その声は愛には届かない。


 「対象:落伍者名"@#者"、迎撃許可を申請」


 "___許可。"


 「戦闘仕様の{. 限定解除 .}を実行!」


 "___肉体の再構築を開始、戦闘段階[a]を実行します。"


 肉体が更なる輝きを放つ、その純白の光が歩行者の心底に不愉快そうな表情を儚く照らす。


 "___管理者名:『どこか儚げな美少女』の幸運を祈ります。"


 私は、管理者……、確かに管理者だ。


 しかし、これから挑むは管理の行き届かない未知の領域。そんな規格外の存在に対して、私は愚かにも威を向けたのだ。


 ___だから、ここはこう啖呵を切る事にしたのである。


 「何見てんだよッ!、クソムシがッ!!」


 互いの視線が火花を散らす、誠に不本意ながらも歩行者の意思に反して彼女の両頬が微かに笑う。


 ___この感覚は、すごく久しぶりなのじゃ…ッ!!















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

処理中です...