『冒険者ギルドへようこそ(最強剣士と娘巫女) ~全ての謎を解き明かし、全てを救う物語~』

此木、大(しばいぬ)

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第1章 リリアの巫女(いわやのはなのみこ)

第68話 カワイ神父

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「1カ月前までアルテミシア正教だった教会がある日突然アルテミシア教の教会に変わった訳だ」
「ふむ?」
ダラが何を言いたいのか分からず、思わず変な声が出た。
「おかしいと思わないか? その信者達はどこから来た?」
「あっ!」
ダラの指摘にリンが声を上げた。
「フミナ、嫌でなければ教えてくれ… 君は… 信者たちはどこから来た?」
フミナは俯いたままだった。
「ダラ、それくらいにしておきなよ」
ジャンがダラに自制を求めるが…
「いえ、良いのです。 私は元々この町の者です」
フミナはゆっくりと話し始めた。

「ある日どこからともなくカワイ様が信者達を連れてリリアの町に現れました。
町長の体調が悪くなったのは丁度それくらいでした。
日に日に悪化する町長の病にアルテミシア正教の巫女の『浄化』の力は全く役に立ちませんでした」
「ん? それは君の事じゃ無いの?」
フミナの話にジャンが口を挟む。
「私は…」
「それは言いたくなった時で良いさ」
言い淀むフミナに助け舟を出したのはダラだった。
「それでカワイ神父が町長の病を治し、ホリウチ神父は失脚した、 そんな感じか」
「はい」
ダラの言葉にフミナがうなずいた。

「つまり俺達が『うっかり』倒しちまった信者達はこの町の人間じゃ無かった、って訳だ」
「ダラ、貴方何か隠してないかしら?」
含みのある物言いにリンが問い詰めるが、ダラは笑って見せた。
「さて、な、そう言うリンこそ何か隠し事してないか?」
ダラがリンの目を覗き込むとリンは目を逸らした。
「な、何を言っているのかしら? そんな訳無いでしょ?」
「それもそうだな、俺に隠し事は出来ないさ」
ムキになって否定するリンにダラはウインクして見せた。

「それじゃ次行ってみようか、旅そのものは順調で何も無かったから割愛しようか」
「本当に何も無かったよな」
ジャンがうなずいた。
「次は町に着いてからの事だな、時刻は昼の12時過ぎ、町であったのは3人だけだ」
「爺さんは確か『ホリさん』と呼ばれてたな」
ジャンにしては記憶が良い。
「一緒にいた少年は爺さんに何か言われて酒蔵に消えて行った」
ダラがそう言うと、ジャンが何か言いたげに手を挙げた。
「珍しいな、どうかしたのか?」
ダラは珍しく遠慮するジャンに発言を促した。
「話が飛んで悪いんだけど、晩飯の時に出て来た酒さ、匂いが『ロンリコ151』に似てたんだよな」
「ロンリコ?」
ダラも聞き馴染みのない単語だったようだ。
「確かアメリカの方のお酒で、アルコール度数75度あるラム酒だ」
「75度?」
驚いて思わず声が出た。
「『パリピ』でも罰ゲームでしか呑みたがらない酒で、間違っても田舎の教会の晩飯に出て来て良い物じゃ無いんだよなぁ」
ジャンが唸った。
ジャンは爺さんの指示で少年がその酒を持って来たと思ってる訳だ?
「そう考えると辻褄が合うだろ?」
ジャンは俺の質問にうなずいて答えた。
「ジャンは酒の事、詳しいんだな」
「ん…まぁね」
ダラの何気ない言葉にジャンは言葉を濁した。

「次行こうか、黒髪の女性についてだ」
ダラはジャンに気遣う様に話題を変えた。
「女性、というか『少女』って感じだったけど」
リンが目線を漂わせながら記憶を辿る。
「疲れた表情をしていたから大人っぽく見えたけどな」
ジャンもリンの意見に賛成の様だ。
「黒い髪の女の子に会ったのですか?」
そう尋ねて来たのはフミナだった。
「町の連中が口を揃えて『そんな娘はいない』って言う訳だが、何か知っているのか?」
「おそらくその人はアルテミシア正教の巫女で私の姉です」
「あれ? と言う事は君は…」
ジャンが何かを言いかけて、ど忘れした様に口を噤む。

「月の巫女?」
「それ!」
ジャンがビシッと俺を指差した。
「どうしてその呼び名を?」
「それじゃやっぱり君が?」
フミナはジャンに首を横に振ってみせた。
「それは私の姉です」
「そういう事か」
ダラがうなずいた。

「一人で納得していないで説明して欲しいわ」
リンがダラをジト目で見据える。
「元々フミナは巫女である姉の交代要員だった。 そこをカワイ神父に拾われて結果的に引き返す事も出来なくなった、ってところかな?」
「はい…まさかこんな事になってしまうなんて…」
フミナはダラの推理に頷くと目を伏せた。
「こんな事にしてしまってゴメンな…」
ジャンが責任を感じてフミナに頭を下げた。
「いいえ、そうではないのです」
フミナは頭を横に振り、少しだけ躊躇いを見せたが後を続けた。

「カワイ様は教会を乗っ取る為に、毒薬や得体の知れない薬品を使っていました」
「なんて事を…」
フミナの言葉を聞いて、リンが口元を掌で隠す様な仕草を見せた。
「私は巫女になれた事に浮かれて、そんな事も知らずに過ごしていたのです」
深いため息をつくフミナを誰も声も出さずに見守った。
「気が付けばホリウチ神父と姉が行方不明、逆らった町の人も何人か行方不明になったと聞きました」
そう言うとフミナは悔しそうに唇を噛んで続けた。
「私が、至らないばかりに…」
「君の姉と、ホリウチ神父らしき人物には一昨日の昼に会っている、心配はいらないさ」
「良かった…」

フミナはダラの言葉に安堵の表情を浮かべ、涙を流した。

「結局のところ、フミナにも姉ちゃんと同じような力はあるのか?」
「なるほど、商隊長、例のペンを見せてもらっても良いか?」
ジャンの質問にダラが反応した。
「もちろん構わないが」
リーデンは大事そうにペンを取り出した。
「フミナはこのペンに見覚えはあるか?」
ダラの質問にフミナがうなずいた。
「『契約のペン』ですね、姉が力を注入しているのを何度か見た事があります」
「それは君も出来るの?」
「試した事はありませんが、可能だと思います」
頷きながらフミナが答える。

「それにしてもコレってそんなに凄い物なの?」
ジャンがペンを指差してフミナに尋ねた。
「神の名のもとに契約するペンだと聞いています。 契約を違えると何らかの罰が下るそうですが、それほどの力があるとは聞いていません」
「…使い方次第、って事?」
ジャンはフミナの説明に首をかしげた。
正直、今までの苦労を考えると『そんな物』という感想だった。

「儀式は今夜21時からとなっていたが、時間には何か特別な意味があるのか?」
「ペンに力を注入するだけでしたら特に時間は関係ないはずです」
ダラの問いにフミナが答えた。
「そもそも誰がその時間を指定したのだろう?」
「経緯から察するにホリウチ神父だろう、元々今夜の21時から儀式を執り行い、明日の午前中にリリアの町を発つスケジュールになっていたからな」
何となく疑問を口にした俺にリーデンが答える。
そうなると儀式には神父が必要な気がする。
「ホリウチ神父を探し出そう」
ジャンがそう言うとダラがうなずいた。

「儀式まであまり時間が無い、手分けして探そう」
ダラの言う通り、太陽はまもなく沈みそうだった。



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