『冒険者ギルドへようこそ(最強剣士と娘巫女) ~全ての謎を解き明かし、全てを救う物語~』

此木、大(しばいぬ)

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第2章 環刻館の後継者(かんごくかんのこうけいしゃ)

第100話 チート能力

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想像していたような、冒険者の群れはどこにも見当たらなかった。
そのかわり、そこにいたのは見た事も無い様な巨大なゴーレムだった。
その数、4体。
ボディは金属で出来ているようで、冷たい光沢を放っていた。
高さ15メートルはあるだろう。
相手はまだこちらには気付いてい無い様だ。
俺達はその場で足を止めて、少し観察する事にした。
「ちょっとしたガンダムだね、これは」
「がんだむですか?」
「大した意味は無いから気にしないで」
思わず出た独り言をミカに聞き返されたが、説明が大変そうだからスルーして貰う事にした。
それにしてもアレを4体同時に相手にするとかムリゲー過ぎる…
「私が囮になって引きつけましょうか?」
もし無人ならその作戦に乗ってくれたかも知れないけど…
「見て、胴体のところ」
ゴーレムの胴体を指差してミカの耳元で囁く
「中に、人がいますね」

フミナとダラの姿を探すと、街を囲む壁の上に黒っぽい服を着た男女が縛られているのが見える。
変装のつもりだろうか?
「あそこにいるの、やっぱりそうだよね?」
「ダラ様とフミナですね」
ミカが頷いた。
ミカは『フミナのいる方角がなんとなく分かる』能力の持ち主で、彼女が言うからには間違い無かった。

そこに辿り着くにはあのゴーレムを倒し、壁の階段を登って行くしか無い様だ。
「なるほど、二人を捕まえたから冒険者達はお役御免になった訳だね」
ダラ達を捕まえた冒険者達はどれくらいの報酬を手に入れたのだろう?
そんなどうでもいい事を考えながらも納得した。
俺達が助けに行ったところを一網打尽にする作戦だろう。
相手の作戦が上手くいかないパターンを想像して、思わずニヤリとする。
もっとも、今からノコノコと引っかかりに行く自分の事を考えると、それは苦笑いに変わった。
しかし縁もゆかりもない冒険者達を相手にする事を考えれば、よほど気が楽だった。

「ベルファム邸に押しかけてきた連中はもっと大人数だった、まだ隠れてる可能性もあるから充分周りに気を付けてね」
「分かりました、あの、あんなに大きいの大丈夫ですか?」
ミカは俺の忠告に頷きつつ、巨大なゴーレムを指差して言った。
「コウキチさんを信じて少し戦ってみるよ、駄目だと思ったらすぐ逃げよう」
「そう…ですね」
軽い気持ちで言った俺にミカが複雑な表情で答えた。

壁の上を見上げると、ダラとフミナの元に人影が近付いていく所だった。
後ろ手に縛られたダラを殴り倒したのは
「あの時の獣人ですね」
フミナが何かを叫んでいるようだが、ここからは何も聞こえない。
獣人はフミナの顎に手を伸ばし、自分の方を向かせると何かを話し、大声で笑ったようだ。
「見ていられませんね」
ミカが少し怒った様に言う。
「同感だよ」
俺も我慢の限界だった。

ふと、獣人の女がこちらに顔を向けた。
彼女がこちらを指差すと、ゴーレムたちが動き始めた。
「見つかったようだね」
「はい、颯竢様、支援魔法を使わせて貰っても良いですか?」
「うん、お願いするよ」
今までの様にミカを巻き込まない作戦ではなく、二人で全力で戦う作戦で行く事に決めた。

「行きます」
ミカはそう言うと、コウキチから預かってきた青銅鏡に指で魔法陣を描き始めた。
「ディフェンダー!」
「クイック!」
ミカは素早く、そして正確に、魔法陣を次々に描いてゆく。

「フィールドプロテクション!」
「アタックブースト!」

ミカの支援魔法を一つ受けることに、自分の身体に変化が起きるのがわかる。
かつて、支援魔法にこれほどの効果を感じた事は無かった。
「お気を付けて」
ミカは一通り支援魔法をかけるとそう言った。
「今ならドラゴンでも倒せそうな気がするよ、ミカちゃんも周りに気を付けてね」
そう言うと、コウキチから借りてきた草薙の剣を抜き放つ。

「はい!」
ミカは俺の声に頷いて答えた。

4体同時に相手にしたくはない。
機動性や攻撃パターンも分からない。
様子を見るために、一番左のゴーレムにターゲットを絞る。
疾風!
もともとは1歩、あるいは2歩程度の間合いを詰める為の運歩法だが、走り出す時にも使える。
1歩目の摺り足の速さにも驚いたが、2歩目の踏み込みで驚く程跳んでいた。
100メートル程離れていたゴーレムの足元まで数歩で到達していた。
あまりにも疾くて、自分の目でも追い付かない程のスピードだ。
ゴーレムの足元で俺が衝撃を受けている時も、ゴーレムは全く反応出来ずにいた。
単に消えただけのように見えたのかも知れない。

すぐに我に返り、ゴーレムの右足首を水平に斬る。
草薙の剣から返って来る手応えは、ただ空を切っただけに感じられた。
しかし、ゴーレムの足首は深く切り裂かれている。

一度気持ちを整理したくて、後ろに跳び距離を取る。
あまりの疾さに、斬られたゴーレムは何故突然足が壊れたのか分からなかったかもしれない。
これが俺TUEEEEEEEってやつか…

大体感覚は分かった。
再び左端のゴーレムの足元に跳ぶ。
左足首を斬りながら通り過ぎ、その場で力いっぱい跳躍した。
感覚的に15メートルは飛び上がった。
ゴーレムは俺の背後にいる。
走り高跳びの要領で、身体を反らすとゴーレムの後頭部が見えた。
仰け反った体勢で剣をゴーレムの頭に突き刺し、そのままバク宙の要領で一回転しゴーレムを飛び越える。
ゴーレムの体に剣を刺したまま落下すると表面の金属が縦に裂けていく。

胴体は透明なクリスタルのような材質で出来ていて、コックピットが透けて見える。
そして、操縦桿を握った貴族と目が合った。
咄嗟にゴーレムの胴体を蹴り、剣を引く。
そのまま着地し、大きく後ろへ跳んで距離を取った。

この切れ味は危ない。
あまりにも手応えが無くて、人を斬っても気が付かないかも知れない。
ゴーレムの胴体のクリスタル越しに中を確認する。
どうやら貴族の体は斬れていないようだ。
無駄な殺生をせずに済んでホッとした。
何処か重要な機関が破壊されたのか、ゴーレムはカクカクと動いた後、動きを止めた。


あと三体。
勝敗を決めるのは武具の性能だとコウキチは言っていた。
しかしこれは
「ただのチートだよ」
ミカの支援魔法の効果も凄まじいものがある。
身体強化魔法は、俺個人の能力を恐らく10倍程度引き上げてくれているだろう。
つまり、現地人に比べて100倍程度の力を出せている計算だ。
あまりにも現実離れし過ぎていて眩暈がしそうだ。

完全に理解した。
残り三体のゴーレムの真ん中に飛び込む。
ゴーレムの攻撃が視える。
中央の奴の蹴りが一番早い。

右足の蹴りを紙一重ですり抜け、軽い跳躍で左脚の内ももを斬り付ける。
着地して方向転換し、同じゴーレムの左脚の外ももを斬り付けた。
内ももと外ももの傷が繋がり、左脚が崩壊した。
蹴りあげた右足はまだ空中にあり、軸足を失ったゴーレムは地響きを上げて転倒した。
再び方向転換してもう一度跳ぶと、地面に伏せたゴーレムの頭部を胴体から切り離した。

今ので、ひと跳びで20メートルは跳べる事が分かった。
スピードは疾すぎて未だに理解出来ていない。

向かって左のゴーレムは両手を組んで振り上げていた。
俺を叩き潰すつもりだろう。

右のゴーレムは右のパンチを繰り出してきていた。
こっちの方が早い。
パンチをギリギリまで引きつけバックステップで避けると、地面に突き刺さった右腕に飛び乗り駆け上がる。
クリスタル越しに驚いた顔の貴族と目が合う。
ゴーレムの肩まで駆け上がり、後ろから首を斬り落とす。
ゴーレムの頭が鈍い音を立てて地面に落下した。

首を失ったゴーレムの上にいる俺に最後のゴーレムが組んだ手を振り下ろす。
軽く跳躍して回避すると、組んだ手は首を失ったゴーレムの胴体を派手に凹ませた。
乗ってる奴、無事だと良いけど…
今の俺には敵の心配をする程度の余裕すらあった。
空中で身体をひねり、最後のゴーレムの手首に斬りかかる。
ゴーレムの手は組んだままの形で地面に落下して、やや軽い音を立てた。
胴体が凹んだゴーレムの肩に着地すると、そのまま跳躍して最後のゴーレムの首めがけて跳んだ。
草薙の剣は何の苦も無く最後のゴーレムの首を切断し、俺は地上17メートル程度の空中を跳んでいた。
普通ならこのまま落下すれば死んでもおかしくない所だが、感覚的にフワッと地面に着地した。

振り返るとスクラップと化したゴーレムが4体転がっている。
「ふぅ」
まだ若干信じられない気持ちで草薙の剣を鞘に納めた。
「颯竢様!」
ミカが俺の側に駆け寄ってくる。
「何ですか? 今の? 凄い! カッコよかったです!」
ミカは頬を紅潮させて言った。
「ミカちゃんの支援魔法のお蔭だよ」
ミカの頭を撫でて言うとミカが嬉しそうにした。
「えへへ~、そうですか~?」
あと、コウキチの剣のお陰だった。
何という斬れ味。

壁の上の獣人に目を向けると、声が聞こえなくても見て分かる程に地団駄を踏んで悔しがっていた。
その時、壁の上にクロスボゥを構えた男達が現れた。
頭を狙われると危ない。
ミカに物陰に隠れる様に指示を出し、矢が飛んでくるのを待つ。
高さ30メートルはある壁の上から矢を撃ちおろした場合、自重による加速度も加わり、人の反射神経では反応出来ない可能性もある。
壁の上の男が放った矢が空を切り裂いて迫る。
緊張して剣を構えるが…
『ベヨン』というような変な音を立てて矢が弾き返された。

「へ?」
不覚にも変な声が出たのを自覚した。
それはミカのフィールドプロテクションの効果だった。
その後も、次々に飛来する矢をことごとく跳ね返してしまった。
暫くすると、矢が尽きたのか攻撃の手が止まった。
さっきの緊張感を返せ、という気分だった。
「ミカちゃん、もう一度フィールドプロテクションをかけ直して貰えるかな?」
「はい!」
『フィールドプロテクション!』


俺とミカの周囲に不可視のシールドが展開される。
クロスボゥの矢を弾き返す程の防御力など聞いた事も無い。
「もうチートが渋滞して何に驚けばいいのか分からないな…」
「ダラ様とフミナは大丈夫でしょうか?」
ミカが心配そうに呟いた。
壁の上を見上げるが、近付き過ぎてよく見えない。
「行こう!」
ミカの手を取り、壁の階段を駆け上がった。


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