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2 本当の始まり(スタート)

9.幼女は過保護と共に

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私達は現在それぞれの家や宿から時間を合わせて集まって活動をしている。
本当ならパーティーで家や宿を同じにした方が良いのだがお父様が心配だからと許可してくれないのだ。
だからお金を貯めてこの街の中に私達のパーティーハウスを建てるとお父様に交渉に来た。
勿論、私の家では無くアトラティア公国軍部の執務室にだ。

「お父様、ヒメです。」

「あぁ、入りなさい。」

私がドアをノックして言うと中から声がする。
私がドアを開けて中に入り他の3人も続く。

「冒険者は順調な様だね。ヒメ。」

「はい。お陰様で。」

「アインからも優秀だと聞いているよ。」

お父様が嬉しそうに言った。
アインとは冒険者ギルドのギルドマスターであるアイランドさんだ。
何でも昔はお父様の下で働いていたらしいが結婚を機に軍を退役したらしい。

「それで、お父様。ご相談があります。」

「街を出て拠点を作るのなら許可は出来んな。
一応お前は王位継承権がある。
少なくともそれが無くなるまではクエスト以外で街の外に出るのは許可しない。
冒険者になる代わりの約束だろ?」

お父様が言った。
お父様としても一人娘が心配なのだろう。
まぁ、過保護だと思うけど。

「はい。ですから、街の中に拠点を設けたいと思いまして。
それを許可して頂きたいのです。」

私が言うとふむと少しお父様が悩む。

「街の中か。わかった。少し待っていなさい。」

お父様はそう言って何やら書類を書き上げる。

「私だ。あれを持って軍部の執務室に来てくれ。至急だ。」

そして誰かにコールをした。

「さて、ヒメ。お前は公爵令嬢だ。
故に、民の模範でなくてはならない。
そんなヒメが貧相な家を借りたとなれば私の名も傷つく。
いつかヒメが拠点を欲しいと言うのでは無いかと思っていた。
故に、その準備はしていたのだ。
貴族街A-3番地。そこに土地を確保してある。
お前の好きにして良い土地だ。
土地代はこちらで払っているから気にしなくて良いし我が家からもそう遠くなくて安心できる。
住居こそまだ建っていないがそれも建築ギルドに頼めば良い。
その資金も私が出そう。
何、ヒメの一人立ちのお祝いだよ。」

お父様がそう言ったのとほぼ同時にメイドがやってきた。

「旦那様、例の物をお持ちしました。」

そう言って持ってきたのは茶色い革製のスーツケースだ。
メイドが鞄を開くと中にはこれでもかと金貨が詰まっていた。

「ここに1000万hqがある。
これをパーティー資金にすると良い。
足りなければ言うんだぞ?」

お父様がそう言ってスーツケースを閉じると私に渡した。

「お、お父様・・・」

「はぁ、私の可愛いヒメが冒険者とはとても心配だ。
何かあったらと思うと特にな。
流石にヒメのクエストを手伝うわけにはいかないから代わりに資金の援助をするよ。
足りなければいつでも言うんだぞ。」

お父様がにこやかに微笑んで言った。
相変わらずお父様の過保護は止まらない。

「あぁ、そうだ。
そういえば兄さんがヒメに話があるとか言っていたな。
暇ができたら王城に行くと良い。兄さんもお前のことを気に入っていたからな。」

お父様がそう言って私の後ろを見る。

「ヒメの事をよろしく頼む。
こう見えて甘えん坊で我が儘だから迷惑をかけるかもしれんが根は真面目で良い子なのだ。」

お父様がそう言って微笑んだ。
うぅ、恥ずかしい。

「お、お父様!変なことを言わないで下さい!
と、取りあえずこれから王城に行って参りますので。」

私はそう言ってそそくさとその場を去った。
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