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2.誕生日会に出席しました。
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家族に見送られ、家を発ったゼラ。自信満々だった気持ちは、馬車の中ですぐに沈んでいった。思えば、皇太子殿下の女性の好みも知らないし、どうアプローチすればいいのかもわからない。ゼラは頭を悩ませた。
「お嬢様。いかがなさいましたか?」
隣に座っていたルティがこちらを心配している。きっと、表情が固くなっていたのだろう。
「ああ、ごめんなさい。少し緊張していまして。」
「お嬢様なら大丈夫ですよ! とてもお美しいですから。」
ルティはいつものごとくゼラを安心させてくれる。心優しい子だ。
「それにありのままのお嬢様をお見せすれば、殿下もきっと、お嬢様の虜になりますよ!」
ありのまま、か。我が家特有の荒っぽい部分が出ないように、気を付けなきゃ。
「ありがとう。あなたのお陰で、いつも助かっています。」
ゼラがそう言うと、ルティは綻ぶような笑顔を見せた。
「あら、お嬢様。もうすぐでごさいますよ。」
外の様子を覗き見ると、王城の庭園が見えていた。一面にバラが咲き誇っている。王妃様のご趣味だとか。
やがて馬車が止まる。出迎え役の使用人に手を引かれ、降りる。
お城は、息をのむほどの美しさで、堂々とそびえ立っていた。
「わぁー! 綺麗ですね!」
ルティが弾んだ声を上げている。ゼラも気持ちは同じだった。このお城は訪れる令嬢たちをシンデレラのような気分にさせる。
「ロッターレ男爵家の、ゼラ・ロッターレです。」
「ゼラ様、お待ちしておりました。」
門の前で名乗ると、初老の使用人はうやうやしく頭を下げた。それから、ヒールの靴を履いたゼラに合わせたペースで、ゆっくりと先導してくれる。
さすが王家の使用人と言うべきか、気遣いに余念がない。
使用人はホールまでゼラ達を導くと、すぐに立ち去っていった。会場は既に、多くの令嬢で埋め尽くされている。
不意に、ルティが耳打ちしてきた。
「……すごい人だかりができていますね。あの中心に、皇太子殿下がいらっしゃるのでしょう。」
皆必死になって、皇太子殿下とお近づきになろうとしているのだ。皇太子殿下の姿はその中に隠れてしまって見えない。なんとなく、あの集団に割り入っていくのは気が引けた。
「ゼラお嬢様、行かれなくてよろしいのですか?」
ゼラはためらった。
「ああ……、私は向こうでお菓子でも頂くことにします。ルティ、あなたは好きになさい。」
働き詰めのルティにとって、今日は数少ない楽しみの一つである。好きにさせてあげないと。
「では、お嬢様。ルティはメイドとお話をしてきます!」
ルティはメイド達が語らっているところへ行った。メイド達は皆、主人に同伴してきた者だ。
一方ゼラは、集まる令嬢達を尻目に、お菓子の置いてある区画へ向かう。
そこは人手の少ない場所だった。お誕生会に来たと言うのに、お菓子を食べている令嬢などいないからだ。
自分だって、こんなことをするために来たわけではない。
さくら色のお菓子を、一つ口に入れた。
優しい甘さが、口の中に広がる。
「はあ……。」
ため息が出た。思えば、今まで異性との関わりが少なすぎた。幼い頃は、父の影響で剣ばかり振るっていたのだ。
異性との出会いといえば、五歳のときに少年に出会ったことぐらい。
なんで今まで、なにもしてこなかったんだろう。
一人感傷に浸っていると、外の空気を吸いたくなった。
ぼんやりとした頭で、テラスに足を運んだ。
「星が、綺麗です……。」
きらめく星は、一つ一つが、小さなダイヤモンドのようだった。空気は澄んでいる。
辺りは静かだ。
あれ?
ゼラの耳が、草木の擦れるかすかな音をとらえる。
ゼラは尋ねた。
「そこにどなたか、いらっしゃいますか?」
その時だった。
一本の木の上から、黒い影が飛びかかってきた。
「お嬢様。いかがなさいましたか?」
隣に座っていたルティがこちらを心配している。きっと、表情が固くなっていたのだろう。
「ああ、ごめんなさい。少し緊張していまして。」
「お嬢様なら大丈夫ですよ! とてもお美しいですから。」
ルティはいつものごとくゼラを安心させてくれる。心優しい子だ。
「それにありのままのお嬢様をお見せすれば、殿下もきっと、お嬢様の虜になりますよ!」
ありのまま、か。我が家特有の荒っぽい部分が出ないように、気を付けなきゃ。
「ありがとう。あなたのお陰で、いつも助かっています。」
ゼラがそう言うと、ルティは綻ぶような笑顔を見せた。
「あら、お嬢様。もうすぐでごさいますよ。」
外の様子を覗き見ると、王城の庭園が見えていた。一面にバラが咲き誇っている。王妃様のご趣味だとか。
やがて馬車が止まる。出迎え役の使用人に手を引かれ、降りる。
お城は、息をのむほどの美しさで、堂々とそびえ立っていた。
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ルティが弾んだ声を上げている。ゼラも気持ちは同じだった。このお城は訪れる令嬢たちをシンデレラのような気分にさせる。
「ロッターレ男爵家の、ゼラ・ロッターレです。」
「ゼラ様、お待ちしておりました。」
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使用人はホールまでゼラ達を導くと、すぐに立ち去っていった。会場は既に、多くの令嬢で埋め尽くされている。
不意に、ルティが耳打ちしてきた。
「……すごい人だかりができていますね。あの中心に、皇太子殿下がいらっしゃるのでしょう。」
皆必死になって、皇太子殿下とお近づきになろうとしているのだ。皇太子殿下の姿はその中に隠れてしまって見えない。なんとなく、あの集団に割り入っていくのは気が引けた。
「ゼラお嬢様、行かれなくてよろしいのですか?」
ゼラはためらった。
「ああ……、私は向こうでお菓子でも頂くことにします。ルティ、あなたは好きになさい。」
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「では、お嬢様。ルティはメイドとお話をしてきます!」
ルティはメイド達が語らっているところへ行った。メイド達は皆、主人に同伴してきた者だ。
一方ゼラは、集まる令嬢達を尻目に、お菓子の置いてある区画へ向かう。
そこは人手の少ない場所だった。お誕生会に来たと言うのに、お菓子を食べている令嬢などいないからだ。
自分だって、こんなことをするために来たわけではない。
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ため息が出た。思えば、今まで異性との関わりが少なすぎた。幼い頃は、父の影響で剣ばかり振るっていたのだ。
異性との出会いといえば、五歳のときに少年に出会ったことぐらい。
なんで今まで、なにもしてこなかったんだろう。
一人感傷に浸っていると、外の空気を吸いたくなった。
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「星が、綺麗です……。」
きらめく星は、一つ一つが、小さなダイヤモンドのようだった。空気は澄んでいる。
辺りは静かだ。
あれ?
ゼラの耳が、草木の擦れるかすかな音をとらえる。
ゼラは尋ねた。
「そこにどなたか、いらっしゃいますか?」
その時だった。
一本の木の上から、黒い影が飛びかかってきた。
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