皇太子殿下と婚約すると思いきや、近衛騎士を任されました。

じゅうごにち

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9.あの日のこと ヴァイス皇太子side

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またこの祭りを、誰かと共に訪れることになろうとは。
ヴァイスは楽しそうにしているゼラを見た。彼女の笑顔は、色とりどりの火球に照らされ、眩しく映る。
こんな風に、あの子と一緒に花火を見たな。
懐かしい記憶が、鮮やかによみがえるのを感じた。
そう、これはまだ自分が5歳の子供だったときのこと。


「おぼっちゃま! どこに行かれましたか!」
「お願いですから、お姿を現してくださいませ!」
ヴァイスは、町を駆け回っていた。執事達から逃げているのだ。辺りは薄暗く、ろうそくの明かりがあちこちに置かれている。今日は仮面祭の一日目だ。
絶対に捕まるわけにはいかない。この日は祭りに参加すると、心に決めたのだから。
角を曲がった先に、仮面が売っている屋台があるのを見つけた。
そこに入り込んで、身を隠す。店主は勝手に入ってきたヴァイスにぎょっとした顔をしたが、唇に指を当て静かにするよう指示する。
しばらくして、執事達の足音が遠ざかっていった。
「……仮面を一つ売ってくれ。」
店主にコインを渡した。値段は知らないので、金貨を三枚渡した。
店主が言う。
「少年、これは多すぎるっす。」
「うるさい。口止め料もこみだ。」
店主は渋々といった様子で金をポケットにしまうと、仮面が沢山かけられた壁へ向かう。
「どれがいいすっか? うちのは種類が豊富ーー。」
「何でもいい。時間がないんだ。はやく。」
すると、店主はトラの仮面をくれた。子供用に小さく、丁寧に彫られている。
「……恩に着る。」
ヴァイスは素早く屋台を出ていこうとした。
「一つだけ聞いても?」
「何だ。」
「あんたどこのお偉いさんの息子っすか?」
ヴァイスは自分の着ている服を見下ろす。上質な布地に、精緻な刺繍が施されている。
「やはりこの服装では目立つか。」
「これを着ていくといいっす。」
店主は自分が着ていた上着を、こちらへ放った。
「冒険する少年に、幸あらんことを。」
「お前にもな。」
ヴァイスはニヤリと笑った。初めての仮面祭は、楽しくなりそうだ。
屋台を出て、右手へ曲がる。執事から逃げつつも、祭りを楽しみたい。
綺麗な飴が置いてある屋台があったので、飴を買う。前回の反省を生かして、銅貨一枚を払うと普通に買うことが出来た。
飴を舐めつつ、人々の間に紛れる。それでも親のいない子供は、目立ちやすい。
「そこの坊や、母さまとはぐれたのかい?」
まずい。中年の女性が、話しかけてきた。女性の声で、周りの視線が一気にこちらへ向く。上着の襟を引き寄せると、なるべく落ち着いた声で答える。
「違うんです。家族はさっきまでそこにいて……。」
「それははぐれたということでねぇかい。あたしが一緒に探してあげようか?」
視線をさまよわせる。普段庶民に話しかけられる経験がないので、どうしたらいいか分からないのだ。
その時、後ろから腕を引かれた。
「マクウェル、どこにいたの? お母様が心配してたわ。」
そこに、一人の女の子が立っていた。
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