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10.まるで夢のようで ヴァイス皇太子side
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いきなり現れたウサギ面の女の子に動揺したものの、ここは話をあわせておこうと思った。
「姉さん、仮面を買ってたら、はぐれちゃった。ごめんね。」
「全くもう、何してるの。はやく行くわよ!」
女の子に手を引かれて、人混みをかき分けつつ進んだ。
女の子が耳打ちしてきた。
「良い道を知っています。教えて差し上げましょう。」
先ほどまでの強気な口調は、どうやら演技だったようだ。
「ああ、頼む。」
女の子は工場の敷地、倉庫の中など様々な場所を通りながら、ヴァイスを仮面祭の名所へ連れていった。
二人は、とある空き家の屋根に上った。
「ここの位置から、火魔法使いの花火が見られます。」
「花火?」
「まあ、ご覧になってください。」
女の子の顔から景色に視線を戻すと、空が明るくなった。
火球が上ってきて、空中で弾ける。
ヒュー、ドン!
橙色の光が先陣を切ったかと思うと、続けて色とりどりの火球が現れては消えた。
「ねえ、綺麗でしょう。」
そう問いかけられても、正直ヴァイスには花火の美しさは分からなかった。
女の子が満足げに花火を見ていた。彼女の仮面の奥に覗く、蒼の瞳を見つめる。
「ああ、綺麗だな。」
「本当にそうおもってます?」
「本当だ。」
ヴァイスはしばし間を開けると、問うた。
「ところでお前。何で俺を助けた?」
女の子はきょとんとした顔をする。いや、ウサギ面のせいで表情は分からないけれど、きっとそんな顔をしていたに違いない。
「当たり前じゃないですか、あなたが困っておられたからですよ。それに、仮面祭は皆のお祭りです。どんな身分のお方でも、おもいっきり楽しむべきだと思ったので。」
思わず、目を見開いた。どう答えていいか、分からなくなった。彼女のような人間に出会うのは初めてだった。
教育係が何かするときも、執事も、家族だって。誰ひとりヴァイスのためではなかった。
国のためか、金のためか、自分のためか。あるいはその全てかもしれないが、決してヴァイスのことを考えてくれていたわけではないだろう。
しかし彼女は違った。平然と、さも当たり前のように、出会ったばかりのヴァイスを助けた。
彼女のことを知りたいと思った。
「お前……。」
脳裏に浮かんだ言葉に、ヴァイスの台詞はせき止められた。
祭りで出会った者たちは、互いに名前を訪ねてはいけない。
これはしきたりだ。ヴァイスは唇を噛み締めた。きっと苦虫を噛み潰したような顔をしていただろう。
「どうかいたしましたか?」
「……いや、何でもない。もう、行こう。」
ヴァイスは立ち上がった。驚いたことに腕を引き寄せられ、体勢が崩れる。
あっという間もなく、
二人の顔が、重なりそうなほど近づいた。
彼女の艶やかな唇が動く。
「まだ、花火は終わっていませんよ?」
「……!」
その時、一際大きな花火が弾けた。それはハートの形をしていた。花火に茶化されたかのように錯覚した自分達は、赤面して離れた。
ヴァイスは思う。
この夢が、覚めなければいいのに。
「姉さん、仮面を買ってたら、はぐれちゃった。ごめんね。」
「全くもう、何してるの。はやく行くわよ!」
女の子に手を引かれて、人混みをかき分けつつ進んだ。
女の子が耳打ちしてきた。
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「花火?」
「まあ、ご覧になってください。」
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橙色の光が先陣を切ったかと思うと、続けて色とりどりの火球が現れては消えた。
「ねえ、綺麗でしょう。」
そう問いかけられても、正直ヴァイスには花火の美しさは分からなかった。
女の子が満足げに花火を見ていた。彼女の仮面の奥に覗く、蒼の瞳を見つめる。
「ああ、綺麗だな。」
「本当にそうおもってます?」
「本当だ。」
ヴァイスはしばし間を開けると、問うた。
「ところでお前。何で俺を助けた?」
女の子はきょとんとした顔をする。いや、ウサギ面のせいで表情は分からないけれど、きっとそんな顔をしていたに違いない。
「当たり前じゃないですか、あなたが困っておられたからですよ。それに、仮面祭は皆のお祭りです。どんな身分のお方でも、おもいっきり楽しむべきだと思ったので。」
思わず、目を見開いた。どう答えていいか、分からなくなった。彼女のような人間に出会うのは初めてだった。
教育係が何かするときも、執事も、家族だって。誰ひとりヴァイスのためではなかった。
国のためか、金のためか、自分のためか。あるいはその全てかもしれないが、決してヴァイスのことを考えてくれていたわけではないだろう。
しかし彼女は違った。平然と、さも当たり前のように、出会ったばかりのヴァイスを助けた。
彼女のことを知りたいと思った。
「お前……。」
脳裏に浮かんだ言葉に、ヴァイスの台詞はせき止められた。
祭りで出会った者たちは、互いに名前を訪ねてはいけない。
これはしきたりだ。ヴァイスは唇を噛み締めた。きっと苦虫を噛み潰したような顔をしていただろう。
「どうかいたしましたか?」
「……いや、何でもない。もう、行こう。」
ヴァイスは立ち上がった。驚いたことに腕を引き寄せられ、体勢が崩れる。
あっという間もなく、
二人の顔が、重なりそうなほど近づいた。
彼女の艶やかな唇が動く。
「まだ、花火は終わっていませんよ?」
「……!」
その時、一際大きな花火が弾けた。それはハートの形をしていた。花火に茶化されたかのように錯覚した自分達は、赤面して離れた。
ヴァイスは思う。
この夢が、覚めなければいいのに。
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