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11.夢の続きは ヴァイス皇太子side
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それから二人で、色々な所を巡った。魔獣のサーカス、ゴーストのお化け屋敷、そしてお菓子の家。
なにせ、時間は有り余るほどあった。三日間。この仮面祭が終わるその時まで、彼女に案内してくれるようお願いしたのだ。
しかし、終わりの時は確実に近づいていった。ヴァイスを探すのは、執事だけではなくなった。より強敵である騎士団までもが、国王の命を受けて動き出したのであった。
そうなるともう、子供であるヴァイス達には歯が立たない。彼女は賢く抜け道を使って包囲網を何度も潜り抜けたが、相手は執拗に追ってきて、距離を縮めてくる。
二日目の夜、雨漏りのするあばら家で、彼女は限界だと言った。
「申し訳ございません。……明日の朝には、見つかってしまうかもしれません。」
ヴァイスは首をふった。
「謝らないでくれ。我が儘を言った俺の方が悪かった。」
彼女は黙りこんだ。ヴァイスもなにも言わず、屋根から落ちてくる雨の音を聞いていた。この雨のせいで、夕方は身動きが取れなかった。
雷がなった。彼女はびくりと身体を震わせる。抱きしめてあげたい気持ちになったが、そうはしなかった。どちらにせよ仮面祭が終われば、大人しく城に戻るつもりだった。
「殿下ぁー! 皇太子殿下ぁー!」
雨の中、追っ手の声が聞こえた。かなり近い。
「このあばら家の中ではありませんか?」
話し声がする。ヴァイスは覚悟を決めて、彼女の方を見る。
「お前は隠れていろ。逃亡の手助けをしたと知られれば、間違いなく処罰されるだろう。」
「でも、私……。」
彼女は何か言おうとして、口をつぐむ。そして頷いた。
ヴァイスは小屋を出て、服がずぶ濡れになるのも構わず歩いていった。
騎士団と見られる男達が、待ち構えていた。
「俺がヴァイス・ルガランド。お前らの探していた皇太子だ。」
それからは、あっという間だった。城に戻され、国王にたいそうお叱りを受けた。
「騎士団の奴らが、お前が少女と行動していたのを見たといったが。」
「そのような事実は全くございません。俺は一人でした。」
彼女の存在はひた隠した。いつしか国王も、その事を聞いてはこなくなった。
謹慎が解けて、町に彼女の姿を探した。まるで、最初からいなかったかのように、彼女は消えていた。
今でも毎年、仮面祭の日は、亡霊のように彼女のことを探している。
ヴァイスは懐かしい思い出から現実に意識を戻すと、隣を見た。
「!?」
さっきまでそこで笑っていたはずのゼラがいない。辺りを見渡しても、それらしき姿は見当たらない。
トイレへ行っただけかもしれない。しかし妙な焦燥感にかられて、ゼラを探す。
「ゼラ! いたら返事をしろ!」
周りの人々が怪訝な顔をしてこちらを見る。しかし、気にしている場合ではない。
「どこにいる! ゼラ!」
人をかき分け、必死になって叫ぶ。脳裏にちらついたのは、あの女の子のこと。あの子のように、またいなくなってはしまわないか、心配で仕方がない。
そう、あの子のように。
青空のような瞳に、艶やかな黒髪。
足が止まった。
ゼラはあの子に似ているなんてものじゃない。あの子、そのものだ。
ヴァイスがきっと好きであっただろう、あの子。
何でこれまで気が付かなかったのか、自分の頭を殴ってやりたい。
そして今も彼女のことを好きならば、迷う必要はない。
何度でも、また探し続けるだけだ。
次回からゼラ視点に戻ります。感想をくださると、作者のモチベが上がりますφ(..)
これからもこの作品を、よろしくお願いします!
なにせ、時間は有り余るほどあった。三日間。この仮面祭が終わるその時まで、彼女に案内してくれるようお願いしたのだ。
しかし、終わりの時は確実に近づいていった。ヴァイスを探すのは、執事だけではなくなった。より強敵である騎士団までもが、国王の命を受けて動き出したのであった。
そうなるともう、子供であるヴァイス達には歯が立たない。彼女は賢く抜け道を使って包囲網を何度も潜り抜けたが、相手は執拗に追ってきて、距離を縮めてくる。
二日目の夜、雨漏りのするあばら家で、彼女は限界だと言った。
「申し訳ございません。……明日の朝には、見つかってしまうかもしれません。」
ヴァイスは首をふった。
「謝らないでくれ。我が儘を言った俺の方が悪かった。」
彼女は黙りこんだ。ヴァイスもなにも言わず、屋根から落ちてくる雨の音を聞いていた。この雨のせいで、夕方は身動きが取れなかった。
雷がなった。彼女はびくりと身体を震わせる。抱きしめてあげたい気持ちになったが、そうはしなかった。どちらにせよ仮面祭が終われば、大人しく城に戻るつもりだった。
「殿下ぁー! 皇太子殿下ぁー!」
雨の中、追っ手の声が聞こえた。かなり近い。
「このあばら家の中ではありませんか?」
話し声がする。ヴァイスは覚悟を決めて、彼女の方を見る。
「お前は隠れていろ。逃亡の手助けをしたと知られれば、間違いなく処罰されるだろう。」
「でも、私……。」
彼女は何か言おうとして、口をつぐむ。そして頷いた。
ヴァイスは小屋を出て、服がずぶ濡れになるのも構わず歩いていった。
騎士団と見られる男達が、待ち構えていた。
「俺がヴァイス・ルガランド。お前らの探していた皇太子だ。」
それからは、あっという間だった。城に戻され、国王にたいそうお叱りを受けた。
「騎士団の奴らが、お前が少女と行動していたのを見たといったが。」
「そのような事実は全くございません。俺は一人でした。」
彼女の存在はひた隠した。いつしか国王も、その事を聞いてはこなくなった。
謹慎が解けて、町に彼女の姿を探した。まるで、最初からいなかったかのように、彼女は消えていた。
今でも毎年、仮面祭の日は、亡霊のように彼女のことを探している。
ヴァイスは懐かしい思い出から現実に意識を戻すと、隣を見た。
「!?」
さっきまでそこで笑っていたはずのゼラがいない。辺りを見渡しても、それらしき姿は見当たらない。
トイレへ行っただけかもしれない。しかし妙な焦燥感にかられて、ゼラを探す。
「ゼラ! いたら返事をしろ!」
周りの人々が怪訝な顔をしてこちらを見る。しかし、気にしている場合ではない。
「どこにいる! ゼラ!」
人をかき分け、必死になって叫ぶ。脳裏にちらついたのは、あの女の子のこと。あの子のように、またいなくなってはしまわないか、心配で仕方がない。
そう、あの子のように。
青空のような瞳に、艶やかな黒髪。
足が止まった。
ゼラはあの子に似ているなんてものじゃない。あの子、そのものだ。
ヴァイスがきっと好きであっただろう、あの子。
何でこれまで気が付かなかったのか、自分の頭を殴ってやりたい。
そして今も彼女のことを好きならば、迷う必要はない。
何度でも、また探し続けるだけだ。
次回からゼラ視点に戻ります。感想をくださると、作者のモチベが上がりますφ(..)
これからもこの作品を、よろしくお願いします!
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