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12.助けてください、ピンチです!
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ヴァイスがゼラを探し始める、少し前のこと。
ゼラが殿下と共に花火をみていると、後ろで声がした。
「奇遇ね、ゼラ。あなたもここにいたなんて。」
美しい深みのある声と、意思の強そうなつり目。
ミレニアさんだ。
「ミレニアさん。こんばんは! あっ、そういえばミレニアさんのこと、お誘い出来ていませんでした。ごめんなさい。」
ミレニアさんは微笑んだ。
「いいのよ。ところであなた、パイを売っている店知らないかしら。いくつか買いたいのだけれど。」
パイを扱っている店なら、近くにいい所を知っている。
「パイなら、この近くだと『ドゥ・ラフェ』っていう美味しい専門店がありますよ。案内しましょうか?」
「ええ、お願いするわ。」
ミレニアさんに頼りにされて、ゼラは嬉しくなった。仕事以外のことでも、仲良くなりたいと思っていたのだ。
隣にいる殿下の様子をうかがう。何か考え事をしているようで、心ここにあらず、といった感じだった。
お祭りの最中とはいえ、仕事柄殿下から離れるのはためらわれたが……。
「殿下が何か考え事をされているときは、一人にして差し上げるのがいいんじゃないかしら。」
ミレニアさんにそう言われ、ゼラは納得した。殿下だって常に自分が側にいては、居心地が悪いというものだ。
「……ミレニアさんと、買い物に行ってまいります。」
遠慮がちに一言伝えて、その場を去った。
実家のことや仕事の話で盛り上がりながら、しばらく道を進む。だんだんと話題は殿下のことへ移っていく。
ぱたりと後ろの足音がしなくなって、不思議に思い振り返った。
「ゼラは、殿下のことをどう思っているの?」
彼女の表情は影で隠れていて、よく見えない。
「雇用主、でしょうか。実際お給料をいただいている身ですし。」
「そうではなくて。」
ミレニアさんは今の答えでは納得がいっていないようだった。
「殿下をどういったお方と思うか、という意味でしたら。……素敵なお方だと思います。もちろん厳しくてぶっきらぼうな所が目立ちますが、部下のいい所を見ていて、とても大切になさいます。私が殿下と初めてお会いした時も、怪我の心配をしてくださいました。それから……、」
「もういいわ!」
ミレニアさんが、ゼラの言葉をさえぎった。
「もう十分よ……。殿下にはわたしさえいればいい。そうよ、そうだったのに!」
ゼラも、さすがにまずかったと理解した。しかし、今さらは取り消すこともできない。
「あ、あの、申し訳ありません。私、ミレニアさんが殿下をお好きだったなんて、知らなくて。」
ゼラは取り乱すばかりだ。
「あんたのせいよ! わたしはあんたに最後の弁明の機会を与えた。でもそれをあんたは踏みにじった!」
ミレニアさんが顔をあげた。月光で照らされた瞳に、強い憎しみが現れている。
「終わりにしましょ。ウィッチ、あなたの出番よ。」
物陰から、三角帽子をかぶった少年らしき人物が出てきた。
そして、実に楽しそうな声色で、歌うように言った。
「お任せあれ。」
ゼラが殿下と共に花火をみていると、後ろで声がした。
「奇遇ね、ゼラ。あなたもここにいたなんて。」
美しい深みのある声と、意思の強そうなつり目。
ミレニアさんだ。
「ミレニアさん。こんばんは! あっ、そういえばミレニアさんのこと、お誘い出来ていませんでした。ごめんなさい。」
ミレニアさんは微笑んだ。
「いいのよ。ところであなた、パイを売っている店知らないかしら。いくつか買いたいのだけれど。」
パイを扱っている店なら、近くにいい所を知っている。
「パイなら、この近くだと『ドゥ・ラフェ』っていう美味しい専門店がありますよ。案内しましょうか?」
「ええ、お願いするわ。」
ミレニアさんに頼りにされて、ゼラは嬉しくなった。仕事以外のことでも、仲良くなりたいと思っていたのだ。
隣にいる殿下の様子をうかがう。何か考え事をしているようで、心ここにあらず、といった感じだった。
お祭りの最中とはいえ、仕事柄殿下から離れるのはためらわれたが……。
「殿下が何か考え事をされているときは、一人にして差し上げるのがいいんじゃないかしら。」
ミレニアさんにそう言われ、ゼラは納得した。殿下だって常に自分が側にいては、居心地が悪いというものだ。
「……ミレニアさんと、買い物に行ってまいります。」
遠慮がちに一言伝えて、その場を去った。
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ぱたりと後ろの足音がしなくなって、不思議に思い振り返った。
「ゼラは、殿下のことをどう思っているの?」
彼女の表情は影で隠れていて、よく見えない。
「雇用主、でしょうか。実際お給料をいただいている身ですし。」
「そうではなくて。」
ミレニアさんは今の答えでは納得がいっていないようだった。
「殿下をどういったお方と思うか、という意味でしたら。……素敵なお方だと思います。もちろん厳しくてぶっきらぼうな所が目立ちますが、部下のいい所を見ていて、とても大切になさいます。私が殿下と初めてお会いした時も、怪我の心配をしてくださいました。それから……、」
「もういいわ!」
ミレニアさんが、ゼラの言葉をさえぎった。
「もう十分よ……。殿下にはわたしさえいればいい。そうよ、そうだったのに!」
ゼラも、さすがにまずかったと理解した。しかし、今さらは取り消すこともできない。
「あ、あの、申し訳ありません。私、ミレニアさんが殿下をお好きだったなんて、知らなくて。」
ゼラは取り乱すばかりだ。
「あんたのせいよ! わたしはあんたに最後の弁明の機会を与えた。でもそれをあんたは踏みにじった!」
ミレニアさんが顔をあげた。月光で照らされた瞳に、強い憎しみが現れている。
「終わりにしましょ。ウィッチ、あなたの出番よ。」
物陰から、三角帽子をかぶった少年らしき人物が出てきた。
そして、実に楽しそうな声色で、歌うように言った。
「お任せあれ。」
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