皇太子殿下と婚約すると思いきや、近衛騎士を任されました。

じゅうごにち

文字の大きさ
18 / 31

16.殿下の様子がおかしいのですが……。

しおりを挟む
「飯を持ってきてやったぞ。」
部屋にいらっしゃった殿下は、食事の乗ったトレーをお持ちだ。ゼラはベッドに横たえていた身体を起こす。
「ありがとうございます。」
食事をいただく。あれから三日が経ち、今は四日目の朝だ。ゼラは足が腫れて熱も出てしまい、三日も意識朦朧とした状態でいたのだ。殿下はその間甲斐甲斐しく世話をしてくださったらしい。熱がひいた今でさえ、どことなく優しい。
「殿下、お仕事はどうなさっているのですか。私の世話をするほど、お暇ではなかった気が……。」
ゼラが遠慮がちに問うと、殿下は言った。
「仕事はレンゾに任せている。もともと大したことのない仕事内容だった。」
ゼラは驚いて目を見開いた。今まで殿下が仕事を休まれたことはなかった。殿下は何よりも仕事を大事になさっていたからだ。
「ダム建設予定地の視察は?」
「……お前は気にしなくていい。」
「行かれてないんですね !?」
ゼラは驚きを隠すことが出来ない。一体殿下に何があったというのだろう。
ゼラは食事を終えて、そばにあったテーブルにトレーを置く。それを見た殿下は、顔をしかめた。
「まだ残っている。お前は食が細すぎるんだ、もっと食べろ。」
ゼラはムッとした表情で言う。
「一般女性はこれぐらいしか食べないんです!」
「そうなのか?」
殿下は少し考え込んだ後、渋々といった様子で頷いた。
「わかった。シェフに言って量を減らしてもらい、その代わり栄養価の高い食事にしよう。」
ゼラはまたもや意外に思わされた。殿下が自分の栄養面まで考えてくださっている。今日は雪でも降るというのか。
「殿下は様子がおかしいように思われますが。」
「俺だって怪我人の面倒ぐらいみる。何せ俺とお前は...…。」
殿下は口ごもった。そんな殿下の代わりに、ゼラが続きを話した。
「私と殿下は、近衛兵とその主人ですからね。」
四日前のことが蘇り、ゼラは不思議に思った。自分の殿下の関係が近衛兵と主人なら、何故あの時殿下はーー。
殿下のお声で、思考が中断された。
「言いづらかったらいいんだ。ゼラ、四日前のことを教えてくれないか...…?」
殿下の真紅の瞳に見つめられ、ゼラは俯いた。そう、自分は友達で、よき先輩だと思っていた人物に裏切られたのだ。
「私、あの日……。」
言おうとした。しかし、言えなかった。口にしてしまったら最後、殿下は激しく怒りミレニアさんを罰しに行くだろう。
いや、考えてもみればミレニアさんがゼラを売ったのだって、自分が殿下と必要以上に馴れ合っていたせいだ。原因を作っておいてミレニアさんのことを守りたいなどと願うのは、自分のエゴでしかないのだ。
「...…すみません、やっぱりまた今度でもいいですか?」
「ああ、構わない。」
ゼラは気持ちを切り替えるために、立ち上がって伸びをした。まだ足の痛みは残っているけれど、杖があれば歩けなくもない。
「それでは、着替えて散歩でも行きますかね。」
「...…駄目だ。」
殿下に行く手を塞がれる。
「え?」
「あと二週間は城から出るんじゃない。これは、主人からの命令だ。何かあれば、すぐに俺を呼べ。」
ゼラは開いた口が塞がらなかった。
殿下がとんでもなく過保護に、パワーアップなさっている……???
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...