皇太子殿下と婚約すると思いきや、近衛騎士を任されました。

じゅうごにち

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15.何が起きたのでしょう?

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派手な音楽が鳴り出して、意識が浮上した。目の前に、大勢の人が集まっていて、こちらを品定めするように見ている。身体を動かそうとして、椅子に縛りつけられていることに気が付く。しかも、今自分が着ているのは露出度の高いドレス。知らぬ間に着替えまでされていたらしい。
「お集まりいただき、誠にありがとうございます! 本日の目玉は、女神も羨む美しさをもつ娘であります。しかもこちらは未使用品でございまして……。」
司会の説明が続く。なにやらこっちを見る人が増えたような。
「5000G!」
「10000G!」
「25000G!」
そのうち値段を叫ぶ人が現れた。もう落札するタイミングに入ったようだ。まずい。完全に逃亡のタイミングを逃した。
「500000G!」
誰かが高額を口にすると、周囲にどよめきが広がった。
「ほ、他の方はいらっしゃいますか。……それではこの方が、本日の落札者となります!」
丸々と突き出た腹を抱えた男が、舞台上へ上がってくる。その男と目があい、背筋が寒くなった。
今売られていたのは、ゼラだったのだ。
男の従者が、司会に大きなカバンを渡す。あれには金貨がどっさり入っているに違いない。
ゼラは悟った。
これ以上機会を窺ってはいられない。身体をひねって縄から抜け出すと、舞台の端まで急ぐ。
「おい、奴隷が逃げたぞ!」
当然、大勢の人がこちらを追いかけてくる。ゼラは舞台下を見た。それ程の高さはないだろう。一か八か、ここから飛び降りるのだ。
床を蹴る。グキリ、と嫌な音がした。足首を痛めたのかもしれない。今さら、高いヒールの靴を履いていたことを思い出す。
気にしている暇はない。
舞台の下には沢山客が集まっていたので、客の上に飛び乗る形になった。
驚いた人をなぎ倒し、ガタイのいい男たちの間をすり抜ける。
ゼラは表情を歪めた。足が痛む。今の自分は走る、というより、歩いているのだろう。掴もうとしてきた手を躱し、なんとか切り抜けているが、もう限界だ。

諦めるべきなのかもしれない。
走馬灯のようにスローモーションになった世界で、そんな考えが頭をよぎった。
ドレスの裾を掴まれている。足がもつれる。涙がこぼれ落ちる。
それでも、腕だけは前にしっかりと伸ばして。
あの方が来てくださるのを、待っている。出口まで、あともう少し。
勢いよく扉が開いて、待ちに待った人物が姿を現す。
「勅令だ! 奴隷取引禁止法により、ここを封鎖させてもらう!」
「でんかっ……!」
掠れた声で、彼の人の名を呼んだ。殿下はすぐにこちらにお気づきになった。
そして、ゼラの周りにまとわりつく全ての人を振り払い、抱きしめてくださる。
「俺が目を離したばかりに、悪かった……!」
ゼラは顔を上げて、殿下を見つめた。
「いえ、殿下は悪くありません。むしろ悪いのは、私の方で……。」
激しく痛む足のせいで、上手く立てない。見かねた殿下が、ゼラを横抱きにした。
殿下の率いた兵士が会場になだれ込んできて、オークション関係者を捕縛していく。
「足を怪我しているようだな……。他にも何かされたか?」
ゼラは俯いた。顔に熱が集まるのがわかる。
「く、唇に…………、キスを。」
その時の殿下の表情はわからなかった。荒々しく上を向かせられ、気がついた時には、噛みつくようにキスをされていた。
「んっ、でんか……。どうして。」
息が出来ない程、激しく唇を奪われる。情報の処理が追いつかず、混乱する。
「で、殿下。他の人が見ています...…。」
かろうじて言えたのは、そんな言葉だけだった。
「すまない...…!  俺は何を。」
殿下が身体を離した。
「ともかくお前は休む必要がある。ここの処理は部下に任せてあるから、俺たちは城へ戻ろう。」
ゼラは殿下の顔をまともに見れないまま、頷く。
「は、はい。そういたしましょう。」
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