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Ⅲ
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少女はここ最近のことを思い出していた。昨日、おととい、一週間前までは…覚えている。しかしそれ以前の記憶がまったく残っていないことに気づいたのだ。まるで、誰かに消されているみたいに。さすがにそれはありえないだろうと、みんなに聞いてみたら、
「忘れるのは当たり前のこと。お嬢様は周りより感受性がお強いですから。」
「心配しなくて大丈夫ですよ。きっと子供ってそういうもんです。」
「つらいことがあれば、忘れちゃうこともあるんですわ。」
「待っていれば、いつか思い出しますよ。」
そういってみんななんでもないことのように笑う。周りから投げかけられる言葉に、恐怖を感じた。これではみんなまで誰かに操られているみたいだ。そう思えば思うほど、みんなの目がどこかうつろに見えてくる。やさしい言葉が薄っぺらに聞こえる。そんなことを考えていると、みんなの存在を否定しているようで、自己嫌悪に陥りそうになる。少女は次第にみんなを避けて一人の時間が多くなった。もう話しかけるのも、自分を嫌いになるのもいやだったのだ。お気に入りだった花柄のベッドで一日中ゴロゴロする日だってあった。
「忘れるのは当たり前のこと。お嬢様は周りより感受性がお強いですから。」
「心配しなくて大丈夫ですよ。きっと子供ってそういうもんです。」
「つらいことがあれば、忘れちゃうこともあるんですわ。」
「待っていれば、いつか思い出しますよ。」
そういってみんななんでもないことのように笑う。周りから投げかけられる言葉に、恐怖を感じた。これではみんなまで誰かに操られているみたいだ。そう思えば思うほど、みんなの目がどこかうつろに見えてくる。やさしい言葉が薄っぺらに聞こえる。そんなことを考えていると、みんなの存在を否定しているようで、自己嫌悪に陥りそうになる。少女は次第にみんなを避けて一人の時間が多くなった。もう話しかけるのも、自分を嫌いになるのもいやだったのだ。お気に入りだった花柄のベッドで一日中ゴロゴロする日だってあった。
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