The Last Canon

じゅうごにち

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フィナーレ

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 この世界は終わった。
 気が付いたら女は、見慣れた場所に立っていた。まだせわしない人間たちのにおいがする、学校の夜の屋上。都会の派手なネオンが馬鹿らしく、ギラギラと存在を主張している。よくいじめられた時はよくここに逃げていた気がする。風が女の短い髪を弄んでいく。隣には警察服を着た女がいた。おそらくもう一人の自分に真実を教えて協力を仰いだ人間だろう。かすれた声が隣から聞こえる。
 「なぜ―、なぜこのようなことをしたのですか。」
 なぜだろう。いまさらながら動機について考える。「たのしかったから」。高校生のあの時なら、そう答えたかもしれない。確かに楽しかった。一番輝いている気だってした。
 勉強は少しできるぐらいだった。
 大好きな本を取り上げられて、からかわれてばかりだった。
 自分の好きなことを、真っ向から否定された。
 暴力は無かったけれど、悪口は散々言われてきた。
 運動は全くできない。
 見せられる特技もない。
 となると、学校で表彰されたこともない。
 忍耐力もない。
 明るい性格でもない。
 思いやりもない。
 やる気もない。
 ないないないないないないないない―。
 できないことばかり。
 そう、皆より優れているものといったら、悪知恵ぐらいだった。
 だからたくさんの人を傷つけた。悪いのは向こうだった。手のかからないおとなしい性格だったから、ばれた時も、今までおとなしくしてきてやった分のローンを返しただけだと思った。
 だから女はこう言った。
 「周りみたいなあほで馬鹿で、決められたレールを歩んでいることになんとも思わない人間たちとは、違うんだって、証明したかったのかな。結局自分もあいつらとそう変わらなかったんだが。」
 そして、さびしそうに笑う。
 それを聞いた相手はというと、何も言わずに女の手首に手錠をかけた。
 カシャン。
 冷たい音がして、その手錠の想像以上の重たさに、少しだけどきりとして。
 遅れて、ほっとしたような、哀しいような、そんな気分になった。
 たとえ遠いどこかで、小さな世界が終わったとしても。この世界はお構いなしにまわり続けるのだろう。
 これは、終らなさすぎる世界に、あがき、苦しみ、這いつくばりながら生きる、そんな人間たちの物語に繋がっていくはずだから。

    ―――――――――――――――――――――

初めまして、作者のじゅうごにちです。この度は短編小説「the last canon」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。この作品は一年前に書きためておき、とある賞に応募したものです。しかし、実はこうして投稿するのは初めてでした。不慣れな所もあったとは思いますが、お楽しみいただけたなら幸いです。今後の参考にしたいので、よろしければ感想をください。これからは短編、長編共に投稿していこうと思いますので、よろしくお願いしますm(_ _)m
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