11 / 12
フィナーレ
しおりを挟む
この世界は終わった。
気が付いたら女は、見慣れた場所に立っていた。まだせわしない人間たちのにおいがする、学校の夜の屋上。都会の派手なネオンが馬鹿らしく、ギラギラと存在を主張している。よくいじめられた時はよくここに逃げていた気がする。風が女の短い髪を弄んでいく。隣には警察服を着た女がいた。おそらくもう一人の自分に真実を教えて協力を仰いだ人間だろう。かすれた声が隣から聞こえる。
「なぜ―、なぜこのようなことをしたのですか。」
なぜだろう。いまさらながら動機について考える。「たのしかったから」。高校生のあの時なら、そう答えたかもしれない。確かに楽しかった。一番輝いている気だってした。
勉強は少しできるぐらいだった。
大好きな本を取り上げられて、からかわれてばかりだった。
自分の好きなことを、真っ向から否定された。
暴力は無かったけれど、悪口は散々言われてきた。
運動は全くできない。
見せられる特技もない。
となると、学校で表彰されたこともない。
忍耐力もない。
明るい性格でもない。
思いやりもない。
やる気もない。
ないないないないないないないない―。
できないことばかり。
そう、皆より優れているものといったら、悪知恵ぐらいだった。
だからたくさんの人を傷つけた。悪いのは向こうだった。手のかからないおとなしい性格だったから、ばれた時も、今までおとなしくしてきてやった分のローンを返しただけだと思った。
だから女はこう言った。
「周りみたいなあほで馬鹿で、決められたレールを歩んでいることになんとも思わない人間たちとは、違うんだって、証明したかったのかな。結局自分もあいつらとそう変わらなかったんだが。」
そして、さびしそうに笑う。
それを聞いた相手はというと、何も言わずに女の手首に手錠をかけた。
カシャン。
冷たい音がして、その手錠の想像以上の重たさに、少しだけどきりとして。
遅れて、ほっとしたような、哀しいような、そんな気分になった。
たとえ遠いどこかで、小さな世界が終わったとしても。この世界はお構いなしにまわり続けるのだろう。
これは、終らなさすぎる世界に、あがき、苦しみ、這いつくばりながら生きる、そんな人間たちの物語に繋がっていくはずだから。
―――――――――――――――――――――
初めまして、作者のじゅうごにちです。この度は短編小説「the last canon」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。この作品は一年前に書きためておき、とある賞に応募したものです。しかし、実はこうして投稿するのは初めてでした。不慣れな所もあったとは思いますが、お楽しみいただけたなら幸いです。今後の参考にしたいので、よろしければ感想をください。これからは短編、長編共に投稿していこうと思いますので、よろしくお願いしますm(_ _)m
気が付いたら女は、見慣れた場所に立っていた。まだせわしない人間たちのにおいがする、学校の夜の屋上。都会の派手なネオンが馬鹿らしく、ギラギラと存在を主張している。よくいじめられた時はよくここに逃げていた気がする。風が女の短い髪を弄んでいく。隣には警察服を着た女がいた。おそらくもう一人の自分に真実を教えて協力を仰いだ人間だろう。かすれた声が隣から聞こえる。
「なぜ―、なぜこのようなことをしたのですか。」
なぜだろう。いまさらながら動機について考える。「たのしかったから」。高校生のあの時なら、そう答えたかもしれない。確かに楽しかった。一番輝いている気だってした。
勉強は少しできるぐらいだった。
大好きな本を取り上げられて、からかわれてばかりだった。
自分の好きなことを、真っ向から否定された。
暴力は無かったけれど、悪口は散々言われてきた。
運動は全くできない。
見せられる特技もない。
となると、学校で表彰されたこともない。
忍耐力もない。
明るい性格でもない。
思いやりもない。
やる気もない。
ないないないないないないないない―。
できないことばかり。
そう、皆より優れているものといったら、悪知恵ぐらいだった。
だからたくさんの人を傷つけた。悪いのは向こうだった。手のかからないおとなしい性格だったから、ばれた時も、今までおとなしくしてきてやった分のローンを返しただけだと思った。
だから女はこう言った。
「周りみたいなあほで馬鹿で、決められたレールを歩んでいることになんとも思わない人間たちとは、違うんだって、証明したかったのかな。結局自分もあいつらとそう変わらなかったんだが。」
そして、さびしそうに笑う。
それを聞いた相手はというと、何も言わずに女の手首に手錠をかけた。
カシャン。
冷たい音がして、その手錠の想像以上の重たさに、少しだけどきりとして。
遅れて、ほっとしたような、哀しいような、そんな気分になった。
たとえ遠いどこかで、小さな世界が終わったとしても。この世界はお構いなしにまわり続けるのだろう。
これは、終らなさすぎる世界に、あがき、苦しみ、這いつくばりながら生きる、そんな人間たちの物語に繋がっていくはずだから。
―――――――――――――――――――――
初めまして、作者のじゅうごにちです。この度は短編小説「the last canon」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。この作品は一年前に書きためておき、とある賞に応募したものです。しかし、実はこうして投稿するのは初めてでした。不慣れな所もあったとは思いますが、お楽しみいただけたなら幸いです。今後の参考にしたいので、よろしければ感想をください。これからは短編、長編共に投稿していこうと思いますので、よろしくお願いしますm(_ _)m
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
聖女は聞いてしまった
夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」
父である国王に、そう言われて育った聖女。
彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。
聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。
そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。
旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。
しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。
ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー!
※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる