1 / 13
序:monologue
しおりを挟む
ある日、異変に気付いた。
ほんの少しの異変、のはずだったそれは思いの外… オレを蝕んでいたらしい。
「…。白髪?」
朝、顔を洗おうと洗面台の鏡に映った自分を見て、え? 何? オレまだ十代だけど? と不満を漏らしたのが数日前。
そして、若白髪の1本くらい気にしなければよかった、と思っている今日この頃。え? なんでそんなこと思ってるかって? メッシュ入れたみたいに白髪が増えて(なんでだ)、それだけじゃなくて、瞳の色も日に日に色素が薄くなっているように見えるからだ。
まあ、白髪は染めればいいって思うだろ? オレもそう思ったんだよ。1本しかなかった時は抜いたんだけどな、そのせいか知らんけど、次の日には1本どころか1房に増えてたんだよ。さすがに悪目立ち過ぎだろって思って、ドラックストアでカラー剤買って染めてみたんだよ。次の日… どころか午後には白く戻ってたよな。なんでだ(2回目)。しかも2房に増えるおまけつきだったぜ。嬉しくねえ。
そんなこんなで、どうにかしようとする度白髪が増えていって、メッシュになったところで対策を練るのも実行するのもやめた。このまま続けたら十代の身空で真っ白になっちまう。頭が。
…っつうか、ホントに白髪なんだろうか、コレ。なんつうか、銀っぽい感じもする。でも白髪か。いや、ふつうの白髪ではないよな。
って悩んでいるうちに、瞳の色がなんか違うことに気付いた。ダークブラウンだったはずが、明るい茶色に見える。光の加減かな? とか気楽に考えていたら、黄色味がかってきて、そうして。
だんだん色素が無くなっていって、白いというか青いというか、…こう、海の色のような。浮かれたリゾートの海っていうよりは、冬の海、日本海のような、どこか物悲しい色。
分かるだろうか。こんな得体のしれないことが身に降りかかるってことがどんなことか。髪がメッシュ手前になるくらいで、いじられるのに辟易したオレは、まさかの引きこもりになった。病院に行っても原因が分からず、瞳の色が薄くなってくると両親も腫れ物を扱うような態度を取るようになったのは本気でショックだったな。
同情してくれていいと思う。
誰にも会いたくなくて、何もしたくなくて、日がな一日ベッドの中で無為に過ごしていたある日のことだった。
何もしないことに飽きて、マンガを読んでみたりゲームをしたりしてもすぐに投げ出してただぼんやりと天井を眺めていた。ふと、何気なくスマホに触れる。何かがしたい訳じゃない。友人だと思ってたやつらからのメッセージが来ていると通知を無視して、結局何もせずにソレを投げ出そうとした、その瞬間。画面が謎の発光をする。カメラのフラッシュより強烈な光がオレの網膜を焼いた。
「んっだよ、これ!!」
日頃の鬱憤込みで、オレは苛立ちを隠せず吐き捨てた。
目を閉じていても、光が目を射抜く。真夏の太陽の下で目を閉じても真っ暗にならないあの感じだ。
目を庇うように自然に体を丸めていたオレは、他人の話し声に思わず顔を上げてしまった。いや、だってヘンだろ? オレは自分の部屋に一人で引きこもってたってのに、ガヤガヤと大勢が好き勝手に話している声が近くから聞こえるんだぜ?
「おお、聖女様…!」
感極まったおっさんの声が響く。
え? なに? 聖女? はやりのやつ?
オレは人ごとのように周りを見渡してみた。おっさんがたくさんいる。中世ヨーロッパの貴族っぽい格好のおっさんとか、RPGとかでよく見る司祭っぽい格好のおっさんとか。あ、若い兄ちゃんもいたわ。こっちは騎士っぽいな。人ごみの向こうには煌びやかな装飾の壁に天井が見える。
すげえな。コレ。夢じゃなかったら、あれだな。いわゆる巻き込まれ召喚とか転生とかってやつ? 最近鬱っぽかったけど、この展開はちょっとアガるかも。
ってウワサの聖女は?
オレは今度は自分の周りを見てみた。オレの真下の床には、魔法陣が淡く光っている。これが聖女召喚の魔法陣か。…。聖女は? オレしかいなくね?
なのにおっさん達は口々に聖女が、って盛り上がっている。
なんでだ(3回目)。
ほんの少しの異変、のはずだったそれは思いの外… オレを蝕んでいたらしい。
「…。白髪?」
朝、顔を洗おうと洗面台の鏡に映った自分を見て、え? 何? オレまだ十代だけど? と不満を漏らしたのが数日前。
そして、若白髪の1本くらい気にしなければよかった、と思っている今日この頃。え? なんでそんなこと思ってるかって? メッシュ入れたみたいに白髪が増えて(なんでだ)、それだけじゃなくて、瞳の色も日に日に色素が薄くなっているように見えるからだ。
まあ、白髪は染めればいいって思うだろ? オレもそう思ったんだよ。1本しかなかった時は抜いたんだけどな、そのせいか知らんけど、次の日には1本どころか1房に増えてたんだよ。さすがに悪目立ち過ぎだろって思って、ドラックストアでカラー剤買って染めてみたんだよ。次の日… どころか午後には白く戻ってたよな。なんでだ(2回目)。しかも2房に増えるおまけつきだったぜ。嬉しくねえ。
そんなこんなで、どうにかしようとする度白髪が増えていって、メッシュになったところで対策を練るのも実行するのもやめた。このまま続けたら十代の身空で真っ白になっちまう。頭が。
…っつうか、ホントに白髪なんだろうか、コレ。なんつうか、銀っぽい感じもする。でも白髪か。いや、ふつうの白髪ではないよな。
って悩んでいるうちに、瞳の色がなんか違うことに気付いた。ダークブラウンだったはずが、明るい茶色に見える。光の加減かな? とか気楽に考えていたら、黄色味がかってきて、そうして。
だんだん色素が無くなっていって、白いというか青いというか、…こう、海の色のような。浮かれたリゾートの海っていうよりは、冬の海、日本海のような、どこか物悲しい色。
分かるだろうか。こんな得体のしれないことが身に降りかかるってことがどんなことか。髪がメッシュ手前になるくらいで、いじられるのに辟易したオレは、まさかの引きこもりになった。病院に行っても原因が分からず、瞳の色が薄くなってくると両親も腫れ物を扱うような態度を取るようになったのは本気でショックだったな。
同情してくれていいと思う。
誰にも会いたくなくて、何もしたくなくて、日がな一日ベッドの中で無為に過ごしていたある日のことだった。
何もしないことに飽きて、マンガを読んでみたりゲームをしたりしてもすぐに投げ出してただぼんやりと天井を眺めていた。ふと、何気なくスマホに触れる。何かがしたい訳じゃない。友人だと思ってたやつらからのメッセージが来ていると通知を無視して、結局何もせずにソレを投げ出そうとした、その瞬間。画面が謎の発光をする。カメラのフラッシュより強烈な光がオレの網膜を焼いた。
「んっだよ、これ!!」
日頃の鬱憤込みで、オレは苛立ちを隠せず吐き捨てた。
目を閉じていても、光が目を射抜く。真夏の太陽の下で目を閉じても真っ暗にならないあの感じだ。
目を庇うように自然に体を丸めていたオレは、他人の話し声に思わず顔を上げてしまった。いや、だってヘンだろ? オレは自分の部屋に一人で引きこもってたってのに、ガヤガヤと大勢が好き勝手に話している声が近くから聞こえるんだぜ?
「おお、聖女様…!」
感極まったおっさんの声が響く。
え? なに? 聖女? はやりのやつ?
オレは人ごとのように周りを見渡してみた。おっさんがたくさんいる。中世ヨーロッパの貴族っぽい格好のおっさんとか、RPGとかでよく見る司祭っぽい格好のおっさんとか。あ、若い兄ちゃんもいたわ。こっちは騎士っぽいな。人ごみの向こうには煌びやかな装飾の壁に天井が見える。
すげえな。コレ。夢じゃなかったら、あれだな。いわゆる巻き込まれ召喚とか転生とかってやつ? 最近鬱っぽかったけど、この展開はちょっとアガるかも。
ってウワサの聖女は?
オレは今度は自分の周りを見てみた。オレの真下の床には、魔法陣が淡く光っている。これが聖女召喚の魔法陣か。…。聖女は? オレしかいなくね?
なのにおっさん達は口々に聖女が、って盛り上がっている。
なんでだ(3回目)。
0
あなたにおすすめの小説
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
俺の居場所を探して
夜野
BL
小林響也は炎天下の中辿り着き、自宅のドアを開けた瞬間眩しい光に包まれお約束的に異世界にたどり着いてしまう。
そこには怪しい人達と自分と犬猿の仲の弟の姿があった。
そこで弟は聖女、自分は弟の付き人と決められ、、、
このお話しは響也と弟が対立し、こじれて決別してそれぞれお互い的に幸せを探す話しです。
シリアスで暗めなので読み手を選ぶかもしれません。
遅筆なので不定期に投稿します。
初投稿です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる