八百比丘尼の孫は異世界で恋をするか

渡邉 幻月

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水神様の仰ることには②

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 覚醒自体は特段説明することも無く終わってしまった。水神様の両手に発生した光球がオレの体に吸い込まれてった。力が湧いてくるっぽいな、って思っていたら、
「これで聖女として覚醒しました。」
そう水神が微笑んだ。思わず、これで⁉ って言っちゃったよね。
「ええ。あなたには薄まっていても眷属の血が流れていますから。」
「そういうものですか…」
納得できるような、ご都合主義のような、とモヤモヤしたオレはきっと複雑な表情をしていたんじゃないかと思う。
「とはいえ、多少の訓練は必要でしょう。魔法とは全く無縁の世界で生まれ育っていますから。ですが、それはあちらに戻ってからで問題ないでしょう。彼らもそのつもりでいるでしょうから。」
確かに、と思って思わず頷いていた。これでいきなり何でもできるとなると、それはそれで必要以上に利用されそうで怖いし良かったかもしれないとも思う。いや、ハイテンションじいさんたちが悪人とは思えないけど。王子も悪い人間には見えなかったけど。
「そうしたら、オレは、ルリビタキの娘さんを蘇生させるのが仕事ってことですね?」
「そうですね。ただ、その前に各地の神殿を巡り、祝福の力を世界に満たすことが必要になるでしょう。あなたの訓練も兼ねていますので、面倒がらずに神殿へ向かうようにしてくださいね。」
邪神がラスボスなんだろうから、それはそうか。正直、何がどう変わったのかも理解できていない今の状態で、邪神の所に直接出向くのは言われなくても怖いな、とオレは色々考える。

「そろそろあなたをここに留めおく時間も終わりそうです。水の神殿で会えるでしょうが、その前に聞いておきたいことはありますか?」
水神様がそう声をかけてきた。
あ、と思わず声が出た。そうかこの世界にいるにも制限時間があるのか。
「全てにケリがついたら、オレは元の世界に帰れるんでしょうか?」
ぶっちゃければ、他の事なら王子達に質問してもどうにかなると思う。でも、これは彼らには聞けない。オレを花嫁とか言っちゃうような連中には聞けない。
「それ相応の魔力が必要になりますが、可能でしょう。あくまでも、そのための魔力が用意できれば、という条件が満たされる必要がありますが。」
めっちゃくちゃ含みがある答えだった。取り敢えず帰る手段はあるなら、今貰える答えとしてはそれでも良いか。
「ありがとうございます。」
と、お礼を言ったところでオレの体から変に泡が噴出してくる。ナニコレ?

「時間が来たようですね。水の神殿でまた会いましょう。」
視界もぼやけてくる中、水神様の声が頭に響いた。

 気が遠くなるような感覚がして、次に目を開けたら王子の顔のどアップだった。目の前に広がる美形の顔。光で目が焼ける。止めて欲しい。
「ああ、目が覚めましたね。」
ほっとしたと言うような感じで、王子が言った。なんか手が暖かいと思ったら、王子が握ってた。どういう状況だよ。
「あー… えぇと?」
「儀式の途中でお倒れになったのですよ。」
少し離れた所から枢機卿の声がした。倒れたんだ、オレ。
「髪の色も変化していたので、無事覚醒はされたと思うのですが…」
と、枢機卿は不安げな声で続けた。あぁ、まあ、倒れたら心配だよね。分かるわ、それ。
「瞳の色も変化していますね。」
じっとオレを見詰めながら王子が言う。…そういや髪の色も変わってるんだっけ? また変わったの? 何色なんだよ、今。怖いわー。次に水神様に会ったら髪の色とか元に戻るか聞かないと。
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