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水神様とのことを話してみた結果
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「鏡をご覧になりますか?」
うんうん唸っていると、枢機卿がそう言って手鏡を差し出してきた。そうだけどそうじゃない。確かに髪の色も目の色も気になるけど、むしろ知りたくない。自分でカラー剤とかカラコン使ってるとかなら良いけど、オレの与り知らないところで勝手に色が変わってるとか、オレの日本人としてのアイデンティティが行方不明すぎて怖い。
「あ、いや、それもまあ気にはなるけど、あー、さっきのは夢だったのか… とか考えてただけです、よ。」
「夢、ですか?」
王子と枢機卿の言葉がハモる。あ、やっぱ気になるわな。鏡を断るにしても、他に何も思い浮かばなかったしな…
「あー… なんか、水神様? って人魚に呼ばれてる人? に会った夢? 見てたっぽい。」
夢、なのか。でも体はここにあったみたいだし、夢なんだろうな。まさかの幽体離脱? さっきの出来事をなんて説明すればいいんだろうか。
「なんと! それは誠ですか?」
枢機卿は驚いているのか嬉しいのか、きらきらした目をかっぴろげて、オレに詰め寄ってくる。多少の遠慮なのか配慮なのか、隣の席、くらいの距離で留まってくれたのは幸いである。オレにとって。
「ちっこい人魚に、水の中の城に案内されて、そこで会った。」
「神々の声が聞こえるだけでなく、直接会ったのか。」
王子も驚いている。二人とも、驚いてはいるけど疑ってはいないみたいだ。
「え? 信じるんだ? ただの夢かもなのに?」
「このタイミングで見る夢なら、おそらく水神様のお力によるものなのではないか?」
オレの言葉に、王子は少し考えて枢機卿に確認している。
「その可能性はありますね。ちなみに水神様はどのようなことを仰ってましたか?」
うむ、って感じに頷いた枢機卿がそうオレに聞いてきた。」
「…え? なんか、今までの聖女は神様との所縁が無くて、助言が中途半端になってたらしい。だから災厄を終わらせられなかったって言ってた。オレは、人魚の血を引いてて、人魚は水神様の眷属だから、直接会って話せるって言った。」
水神様の話を思い出しながら、一応説明してみる。
「やはり人魚の末裔だったか。」
王子が満足気に頷いている。そういや、人魚かウンディーネの末裔かもって言われてたな。当たりか。マジか。王子カンが良いな。
「それでは、この災厄は終わらせられると水神様は仰られたのですね?」
「あー、うん。なんか、各神殿を巡って祝福の力を満たしてから、北に封印されてる邪神の所に行って、邪神をどうにかすればいいみたいだけど。」
どこまで信用して良いのか分からないので、最後はふわっと説明する。
「あと、水神様の神殿に行ったらまた会ってくれるらしい。」
はっと思い至って、余計な突っ込みをされる前に、また水神様に会えるっぽいことを言っておく。邪神の詳しい話はまた今度ってことにしておく。
正直、枢機卿も王子もイマイチ信用しきれない。枢機卿はテンション高過ぎなおっさん達の一人な訳だし、王子はオレのこと花嫁とか言い出してたし。まあ、ただの感情論ではあるな。
「なるほど。その、邪神については詳しくはお聞きになってないのでしょうか?」
「なんか時間制限で。人魚の血を引いてるとかそういう話も聞いてたしで。」
「ああ、それで水神様の神殿でまたお会いするのだね。」
王子の言葉に、そういうことですか、と枢機卿は納得している。先に言っといて良かったのか意味なかったのか微妙なところだな。
「やはり、聖女様の巡行はしないといけないな。北の神殿が最終目標になるのなら、時計回りに巡ることになるか。すぐに計画を立てるよう、陛下に進言しておこう。」
枢機卿と何やら話し込んだ王子が、そう言い切って、オレの方を見てにっこり笑った。
何その笑顔。怖いんですけど。
うんうん唸っていると、枢機卿がそう言って手鏡を差し出してきた。そうだけどそうじゃない。確かに髪の色も目の色も気になるけど、むしろ知りたくない。自分でカラー剤とかカラコン使ってるとかなら良いけど、オレの与り知らないところで勝手に色が変わってるとか、オレの日本人としてのアイデンティティが行方不明すぎて怖い。
「あ、いや、それもまあ気にはなるけど、あー、さっきのは夢だったのか… とか考えてただけです、よ。」
「夢、ですか?」
王子と枢機卿の言葉がハモる。あ、やっぱ気になるわな。鏡を断るにしても、他に何も思い浮かばなかったしな…
「あー… なんか、水神様? って人魚に呼ばれてる人? に会った夢? 見てたっぽい。」
夢、なのか。でも体はここにあったみたいだし、夢なんだろうな。まさかの幽体離脱? さっきの出来事をなんて説明すればいいんだろうか。
「なんと! それは誠ですか?」
枢機卿は驚いているのか嬉しいのか、きらきらした目をかっぴろげて、オレに詰め寄ってくる。多少の遠慮なのか配慮なのか、隣の席、くらいの距離で留まってくれたのは幸いである。オレにとって。
「ちっこい人魚に、水の中の城に案内されて、そこで会った。」
「神々の声が聞こえるだけでなく、直接会ったのか。」
王子も驚いている。二人とも、驚いてはいるけど疑ってはいないみたいだ。
「え? 信じるんだ? ただの夢かもなのに?」
「このタイミングで見る夢なら、おそらく水神様のお力によるものなのではないか?」
オレの言葉に、王子は少し考えて枢機卿に確認している。
「その可能性はありますね。ちなみに水神様はどのようなことを仰ってましたか?」
うむ、って感じに頷いた枢機卿がそうオレに聞いてきた。」
「…え? なんか、今までの聖女は神様との所縁が無くて、助言が中途半端になってたらしい。だから災厄を終わらせられなかったって言ってた。オレは、人魚の血を引いてて、人魚は水神様の眷属だから、直接会って話せるって言った。」
水神様の話を思い出しながら、一応説明してみる。
「やはり人魚の末裔だったか。」
王子が満足気に頷いている。そういや、人魚かウンディーネの末裔かもって言われてたな。当たりか。マジか。王子カンが良いな。
「それでは、この災厄は終わらせられると水神様は仰られたのですね?」
「あー、うん。なんか、各神殿を巡って祝福の力を満たしてから、北に封印されてる邪神の所に行って、邪神をどうにかすればいいみたいだけど。」
どこまで信用して良いのか分からないので、最後はふわっと説明する。
「あと、水神様の神殿に行ったらまた会ってくれるらしい。」
はっと思い至って、余計な突っ込みをされる前に、また水神様に会えるっぽいことを言っておく。邪神の詳しい話はまた今度ってことにしておく。
正直、枢機卿も王子もイマイチ信用しきれない。枢機卿はテンション高過ぎなおっさん達の一人な訳だし、王子はオレのこと花嫁とか言い出してたし。まあ、ただの感情論ではあるな。
「なるほど。その、邪神については詳しくはお聞きになってないのでしょうか?」
「なんか時間制限で。人魚の血を引いてるとかそういう話も聞いてたしで。」
「ああ、それで水神様の神殿でまたお会いするのだね。」
王子の言葉に、そういうことですか、と枢機卿は納得している。先に言っといて良かったのか意味なかったのか微妙なところだな。
「やはり、聖女様の巡行はしないといけないな。北の神殿が最終目標になるのなら、時計回りに巡ることになるか。すぐに計画を立てるよう、陛下に進言しておこう。」
枢機卿と何やら話し込んだ王子が、そう言い切って、オレの方を見てにっこり笑った。
何その笑顔。怖いんですけど。
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