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私は線路の上に立っていた。頭上には暖色の明かりが点々と灯っている。どうやら駅の中にいるようだ。ここで終点なのか、線路は駅を抜けずに途絶えている。それならもしかしてお祖父さんもここにいるかもしれないと、駅の中を探してみることにした。
けれど、いくら探しても人の姿が見当たらない。もう外に出てしまったのかもしれないと、出口に向かうと、白い壁の街並みに、やはり暖色系の明かりが点々と灯り、霧をつないだような細い雨の中に滲んでいた。
その明かりの下を人影が横切る。お祖父さんだ、と思い、コートのフードを被り、雨の中へと駆け出した。そんなものでどこまで雨をしのげるかは疑問だけれど、何もしないよりはいくらかましだろう。
町全体が雨に霞んでいた。誰もいないように見えた町の中に、まるで霧のスクリーンに映し出されたみたいな人影が、明かりの下を行ったり来たりしている。それはまさに影、あるいは亡霊とでも言うのがふさわしいように思えた。そこはかとない気味悪さを覚えつつも、その胸にぽっかりと黒い空洞があいているのを見ると、自分の胸の傷と同じようなものを彼らも抱えているのかと思うことができ、少しだけ落ち着いた。
影たちが行き交う町の中で、お祖父さんの姿はすぐに紛れてしまった。そもそもさっきお祖父さんだと思ったのも私の勘違いではないかという気がしてくる。それでも自分の直感を信じ、お祖父さんが入っていったと思しき路地に飛び込む。
その瞬間、誰かとぶつかりそうになった。謝ろうとした時にはもう、目の前に銃口を突きつけられていた。すぐには状況が把握できずに、恐怖は遅れてやってきた。私は銃口を見つめて硬直していた。
「なんだ、アンタか」
その声にようやく相手の顔を見た。縮れ毛で色黒の見知った少年の顔に、ふっと肩の力が抜けた。脅かさないでほしい。もしかして、フードのせいで私だと気づかなかったのだろうか。まだ胸がドキドキしている。
「悪かったな。でも、どこから敵が襲ってくるかわからないからさ」
彼の胸にも私と同じような傷があるのを見つけ、わずかに残っていた緊張も解けていった。
少年は油断なく周囲に視線を向けていた。敵って何だろう。少年の目元には隈が浮かび、この短時間で少しやつれたような印象がする。徘徊する影たちは、敵意どころかこちらにまるで関心がないように見えた。
少年の肩越しに路地の向こうを覗く。行き交う影たちの中にお祖父さんらしき姿は見当たらず、少年に聞いてみた。
「いや、見てないな……。それより、アンタのそれは、大丈夫なのか」
少年が私の胸の傷を指差す。
「もちろん」
私が自信に満ちた声で答えると、少年は眉を顰めた。
「これは私が元々持っていたものだから、だいじょうぶ」
それから彼を安心させようと思って、こうしてみんなが胸に傷を抱えているのが分かったら争いなんて起こらない、だからもう戦わなくてもいいんだよ、と言うと、少年は益々眉間にしわを寄せて、これ、アンタのせいか、と自分の胸の傷に手を当てた。
「傷は弱みだ。弱みを見せたら、そこを狙われる。他人にさらすようなもんじゃない」
どうやら私とは根本的に考え方が違うらしい。今度は私が顔を顰める番だった。
「それより、おじいさんを探すんだろ」
そうだったと、慌ててこの辺りでお祖父さんを見かけたことを話すと、少年は何やら考えるような様子で、私が見たのは本当にお祖父さんだったのかと聞いてきた。つい唇が尖った。
「私の見間違いだというの」
実際のところ自分でも見間違えかもしれないと思っていたことなど棚に上げて、責めるような口調になってしまった。でも、根拠はなくてもあれがお祖父さんだと私が思ったのなら、きっとそうに違いないのだという気もしていた。それを否定されると何だか気分が悪い。
「いや、アンタは本当に見たのかもしれないさ。でも、それって本物のおじいさんだったのかってこと」
言葉の意味が分からず戸惑っていると、アンタが会いたいと願えば、おじいさんの姿が現れるってこともあるんじゃないかってことだよ、と彼は言った。
願えば叶う、のか。そんな簡単に?
「あるいは、願わなくても鏡は映し出すかも」
どこに鏡があるというのだろう。周囲をきょろきょろと見回す。
「そんなに警戒しなくても、じいさんは襲ってこないだろ」
たぶん、と少年は言った。そんな心配なんかしていないのに。さっきまでの少年の様子を思い出し、彼には警戒しなければならないような敵がいるのか、と思った。少年は私の思考を察したらしく、言い訳をするように言った。
「俺は、復讐を願ったんだ。だから」
少年はいつでも撃てるように銃を持ち直し、油断のない視線を周囲へ向ける。血走った眼と濃い隈が痛々しい。武器を持つということは、武器を向けられても文句は言えないということだ。こうしている今も、相手はどこかからこちらを狙っているかもしれない――。私にはそんな感覚を理解することができなかった。
「どうしてそんなにまでして戦わなきゃいけないの」
「だって、そうしなきゃ死んだ弟に申し訳が立たないじゃないか」
「弟のために戦うの」
「自分のためだって言いたいんだろ。その通りさ」
別にそんなことを言うつもりなんてないのに、彼の言葉は止まらなかった。
「俺は、俺の命に意味が欲しかったんだ。ただ生きて、ただ死んで、そこには何もなかったなんて、思いたくはない。何かを成し遂げたんだって実感が欲しい。それはいけないことなのか」
いけないだなんて言っていない。言っていないけれど、それが正しいとも言えないのだった。恨む気持ちももっともだと思う。同情もする。けれど、今の彼を見ていて、これが彼の望んだことだとはどうしても思えないのだった。
自ら望んでここにいる私と、望んだわけではない彼。私の願いがこんなに正確に叶えられているのに、彼は自分の望みにさえ自信を持てずに、こんなにも魂を擦り減らしている。そのことが納得できなかった。
私たちは同じように胸に傷を抱えている。けれど、同じ傷を抱えているわけじゃない。もしかしたら、彼が抱えているのは、私よりもずっと深い傷なのかもしれない。つい傷を比べたくなってしまう。私は、どうしてこんな傷を抱えているのだったか。私には傷つくのに十分だった原因も、彼の抱えたものと比べれば酷く矮小なものなのかもしれなかった。
気がつくと傷の深さを見定めようと少年の胸を覗き込もうとしている。その悪趣味ぶりに慌てて視線を逸らした。
どんなに矮小で醜い傷だとしても、それを失えば、私がここにいる理由まで失ってしまいそうで、私にはそれを手放すことなんてできそうになかった。たとえ愛すべきものではないとしても、これはもう、私の一部だ。
「ねえ、一緒におじいさんを探してくれない」
少年はきっと私の意図を見抜いたのだろう、渋面を浮かべていた。お祖父さんと同じところへ行ければ、きっとこんなことで悩まなくても済むだろうという、浅はかな考え。けれど、私たちはそのためにここまで来たのだ。いや、彼は本当にはそれを願っていなかったのかもしれないけれど、それでも私がここまで連れてきたようなものなのだから、そうする責任があるのだと思った。私の本心が自分の行為を正当化したいだけなのだとしても、今は気づいていない振りをしよう。
私の身勝手を責められても仕方がない、そう覚悟していたのに、少年の返答は想定外のものだった。
「俺と一緒にいると、アンタも危ないかもしれない」
敵が襲ってくるかもしれないから、か。
「でも、もしアンタのことも俺の仲間だと思われていたら、ひょっとして一緒にいた方がましかもな」
俺には武器があるし、と少年は腰に差したナイフを示し、手にした銃を構えてみせた。なんて殺伐とした理由だろうと思いつつ、一緒に来てくれるならそれでもいいかと考えていると、少年の背後を人影がよぎるのが見えた。お祖父さんなのでは、という気がした。
すぐに後を追おうとする私の腕をつかみ、やっぱり変だと、少年は言った。人影が一人なのはおかしいと。本当にお祖父さんなら天使と一緒にいるはずだと。
「でも、早く追いかけないと見失っちゃう」
少年は納得できない様子だったけれど、この際だから正体をはっきりさせようと、追い掛けることに同意してくれた。護身用にと渡されたナイフは、使えるとは思えず断った。彼は渋い顔をしながらそれを腰に戻す。彼は本当にそれを振るうことに迷いはないのだろうか。私は、迷わず他人にそんなものを向けられるような人間にはなりたくなかった。
けれど、いくら探しても人の姿が見当たらない。もう外に出てしまったのかもしれないと、出口に向かうと、白い壁の街並みに、やはり暖色系の明かりが点々と灯り、霧をつないだような細い雨の中に滲んでいた。
その明かりの下を人影が横切る。お祖父さんだ、と思い、コートのフードを被り、雨の中へと駆け出した。そんなものでどこまで雨をしのげるかは疑問だけれど、何もしないよりはいくらかましだろう。
町全体が雨に霞んでいた。誰もいないように見えた町の中に、まるで霧のスクリーンに映し出されたみたいな人影が、明かりの下を行ったり来たりしている。それはまさに影、あるいは亡霊とでも言うのがふさわしいように思えた。そこはかとない気味悪さを覚えつつも、その胸にぽっかりと黒い空洞があいているのを見ると、自分の胸の傷と同じようなものを彼らも抱えているのかと思うことができ、少しだけ落ち着いた。
影たちが行き交う町の中で、お祖父さんの姿はすぐに紛れてしまった。そもそもさっきお祖父さんだと思ったのも私の勘違いではないかという気がしてくる。それでも自分の直感を信じ、お祖父さんが入っていったと思しき路地に飛び込む。
その瞬間、誰かとぶつかりそうになった。謝ろうとした時にはもう、目の前に銃口を突きつけられていた。すぐには状況が把握できずに、恐怖は遅れてやってきた。私は銃口を見つめて硬直していた。
「なんだ、アンタか」
その声にようやく相手の顔を見た。縮れ毛で色黒の見知った少年の顔に、ふっと肩の力が抜けた。脅かさないでほしい。もしかして、フードのせいで私だと気づかなかったのだろうか。まだ胸がドキドキしている。
「悪かったな。でも、どこから敵が襲ってくるかわからないからさ」
彼の胸にも私と同じような傷があるのを見つけ、わずかに残っていた緊張も解けていった。
少年は油断なく周囲に視線を向けていた。敵って何だろう。少年の目元には隈が浮かび、この短時間で少しやつれたような印象がする。徘徊する影たちは、敵意どころかこちらにまるで関心がないように見えた。
少年の肩越しに路地の向こうを覗く。行き交う影たちの中にお祖父さんらしき姿は見当たらず、少年に聞いてみた。
「いや、見てないな……。それより、アンタのそれは、大丈夫なのか」
少年が私の胸の傷を指差す。
「もちろん」
私が自信に満ちた声で答えると、少年は眉を顰めた。
「これは私が元々持っていたものだから、だいじょうぶ」
それから彼を安心させようと思って、こうしてみんなが胸に傷を抱えているのが分かったら争いなんて起こらない、だからもう戦わなくてもいいんだよ、と言うと、少年は益々眉間にしわを寄せて、これ、アンタのせいか、と自分の胸の傷に手を当てた。
「傷は弱みだ。弱みを見せたら、そこを狙われる。他人にさらすようなもんじゃない」
どうやら私とは根本的に考え方が違うらしい。今度は私が顔を顰める番だった。
「それより、おじいさんを探すんだろ」
そうだったと、慌ててこの辺りでお祖父さんを見かけたことを話すと、少年は何やら考えるような様子で、私が見たのは本当にお祖父さんだったのかと聞いてきた。つい唇が尖った。
「私の見間違いだというの」
実際のところ自分でも見間違えかもしれないと思っていたことなど棚に上げて、責めるような口調になってしまった。でも、根拠はなくてもあれがお祖父さんだと私が思ったのなら、きっとそうに違いないのだという気もしていた。それを否定されると何だか気分が悪い。
「いや、アンタは本当に見たのかもしれないさ。でも、それって本物のおじいさんだったのかってこと」
言葉の意味が分からず戸惑っていると、アンタが会いたいと願えば、おじいさんの姿が現れるってこともあるんじゃないかってことだよ、と彼は言った。
願えば叶う、のか。そんな簡単に?
「あるいは、願わなくても鏡は映し出すかも」
どこに鏡があるというのだろう。周囲をきょろきょろと見回す。
「そんなに警戒しなくても、じいさんは襲ってこないだろ」
たぶん、と少年は言った。そんな心配なんかしていないのに。さっきまでの少年の様子を思い出し、彼には警戒しなければならないような敵がいるのか、と思った。少年は私の思考を察したらしく、言い訳をするように言った。
「俺は、復讐を願ったんだ。だから」
少年はいつでも撃てるように銃を持ち直し、油断のない視線を周囲へ向ける。血走った眼と濃い隈が痛々しい。武器を持つということは、武器を向けられても文句は言えないということだ。こうしている今も、相手はどこかからこちらを狙っているかもしれない――。私にはそんな感覚を理解することができなかった。
「どうしてそんなにまでして戦わなきゃいけないの」
「だって、そうしなきゃ死んだ弟に申し訳が立たないじゃないか」
「弟のために戦うの」
「自分のためだって言いたいんだろ。その通りさ」
別にそんなことを言うつもりなんてないのに、彼の言葉は止まらなかった。
「俺は、俺の命に意味が欲しかったんだ。ただ生きて、ただ死んで、そこには何もなかったなんて、思いたくはない。何かを成し遂げたんだって実感が欲しい。それはいけないことなのか」
いけないだなんて言っていない。言っていないけれど、それが正しいとも言えないのだった。恨む気持ちももっともだと思う。同情もする。けれど、今の彼を見ていて、これが彼の望んだことだとはどうしても思えないのだった。
自ら望んでここにいる私と、望んだわけではない彼。私の願いがこんなに正確に叶えられているのに、彼は自分の望みにさえ自信を持てずに、こんなにも魂を擦り減らしている。そのことが納得できなかった。
私たちは同じように胸に傷を抱えている。けれど、同じ傷を抱えているわけじゃない。もしかしたら、彼が抱えているのは、私よりもずっと深い傷なのかもしれない。つい傷を比べたくなってしまう。私は、どうしてこんな傷を抱えているのだったか。私には傷つくのに十分だった原因も、彼の抱えたものと比べれば酷く矮小なものなのかもしれなかった。
気がつくと傷の深さを見定めようと少年の胸を覗き込もうとしている。その悪趣味ぶりに慌てて視線を逸らした。
どんなに矮小で醜い傷だとしても、それを失えば、私がここにいる理由まで失ってしまいそうで、私にはそれを手放すことなんてできそうになかった。たとえ愛すべきものではないとしても、これはもう、私の一部だ。
「ねえ、一緒におじいさんを探してくれない」
少年はきっと私の意図を見抜いたのだろう、渋面を浮かべていた。お祖父さんと同じところへ行ければ、きっとこんなことで悩まなくても済むだろうという、浅はかな考え。けれど、私たちはそのためにここまで来たのだ。いや、彼は本当にはそれを願っていなかったのかもしれないけれど、それでも私がここまで連れてきたようなものなのだから、そうする責任があるのだと思った。私の本心が自分の行為を正当化したいだけなのだとしても、今は気づいていない振りをしよう。
私の身勝手を責められても仕方がない、そう覚悟していたのに、少年の返答は想定外のものだった。
「俺と一緒にいると、アンタも危ないかもしれない」
敵が襲ってくるかもしれないから、か。
「でも、もしアンタのことも俺の仲間だと思われていたら、ひょっとして一緒にいた方がましかもな」
俺には武器があるし、と少年は腰に差したナイフを示し、手にした銃を構えてみせた。なんて殺伐とした理由だろうと思いつつ、一緒に来てくれるならそれでもいいかと考えていると、少年の背後を人影がよぎるのが見えた。お祖父さんなのでは、という気がした。
すぐに後を追おうとする私の腕をつかみ、やっぱり変だと、少年は言った。人影が一人なのはおかしいと。本当にお祖父さんなら天使と一緒にいるはずだと。
「でも、早く追いかけないと見失っちゃう」
少年は納得できない様子だったけれど、この際だから正体をはっきりさせようと、追い掛けることに同意してくれた。護身用にと渡されたナイフは、使えるとは思えず断った。彼は渋い顔をしながらそれを腰に戻す。彼は本当にそれを振るうことに迷いはないのだろうか。私は、迷わず他人にそんなものを向けられるような人間にはなりたくなかった。
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