RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
13 / 954
第一篇第一章 旅路の出逢い

届けられたケジメの形

しおりを挟む


笑いながら急かして来るケーシーに
先導されて、二人は噴水広場へと向かう。

辿り着いた噴水広場には大きな荷車の前に
長屋町の町民が輪を描くように集まる光景が
二人の視界に飛び込んで来た。


「でっけー荷車…」


「何だ?」


二人は民衆を掻き分けて荷車の前に
顔を出すと其処には、荷車の前に胡座を
かいて座り込む大男の姿があった。


「へ?アンタ」


「アドラス」


「待っていた。お前等」


巨大な荷車の前に座り込んで居たアドラス
を視界に捉えた二人はその背後の荷車に
乗せられた大量の食糧や金品を見て
度肝を抜かれる。


「話は全てドノバンに訊かせて貰いやした。儂は今、護国師団反乱軍幹部に名を連ねるも元は奴と手を組んだ伯盛一家バズーの親分でもありやした」


アドラスが言葉を紡ぎながら緩りと
頭を垂れる姿を前に、民衆は言葉を失う。


「儂の教えに背き、カタギの皆さんにご迷惑をお掛けした奴等にはケジメを付けさせ、もうこの町から出て行きやした。苦しんだ数年は戻りゃあしやせん。じゃが此処は一つ此の食糧と金品で納めては貰えぬか?カタギの皆々様方」


頭を深々と下げたアドラスの言葉。

そして、背後の食糧や金品。

更にドノバン達の脅威が去った事。

其れは町民にとって日々願い続けた
平和の訪れが成されたと言うこと。

民衆は歓喜した。

人目を憚らず涙を流して。


「護国師団反乱軍は民衆の、カタギの皆さんの味方じゃ。そして同志達は此の国の至る所に居る。もしまたドノバンの様な馬鹿が、現れた時は儂の名を持って反乱軍が皆々様を守ると約束しよう」


此れで手打ち。

数年に渡る痛みは戻らない。

だが、民衆にとって此れ以上無い形での
幕引きとなった。


「はは…!」


「顔を上げてくれ。アドラスさん・・。有難う、恩に着ます」


シャーレの言葉に顔を上げたアドラスと
目を合わせたロードとシャーレの笑顔に
アドラスも笑みを浮かべる。

アドラスが立ち上がりその場から離れると
次々と頭を下げた町民が荷車に押し寄せる。

噴水広場は歓喜のパニックを起こしていた。


「アンタ、良い奴だったんだな。ししし、俺はアンタ好きだぞ」


「じゃかあしい。ケジメを付けただけじゃ。じゃが、お前等が動かんかったら儂は此の町を知らぬ間に過ぎ去ってしまったんじゃろうな」


「見て見ぬフリをしない。それだけでも立派さ、アドラスさん」


「ふん。じゃあの」


アドラスはそう言うと噴水広場から
重たい足音を響かせながら消えて行った。

其れを見届けたシャーレはロードに
背を向けたまま、口を開く。


「長屋町は此れで安心だ。幼い頃に拾われた此の町に少しは恩返しが出来た気がする。有難う、ロード。ついでだが、君の旅、私も同行してはいけないだろうか?」


シャーレの言葉に目を丸くしたロードは
爽やかに吹き抜ける風をその身で浴びながら
驚きの表情を隠せなかった。



しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ
ファンタジー
 ハートとお気に入り登録、ぜひぜひお願いいたします!  ↓簡単なあらすじは''もっと見る''へ!↓  ここは、剣と魔法の異世界グリム。  ……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。  近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。  そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。  無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?  チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!  努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ! (この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...