RISING 〜夜明けの唄〜

第一編第三章 蔓延る悪意

最後の悪足掻き

「Ｕ・Ｊ。ウィグルは？」


「ウィ…だれ？」


「ワグラターナの総帥ですよ！何とぼけてんですか！」


「ん？あー…そんなのそこでオネンネしてるに………」



Ｕ・Ｊの指差した先には誰の姿も無い。

ほんの少しの沈黙の後、事態を察する。



「おいーーーーーーーッ！！！！どこ行ったんだアイツはァァーーー！！！？」


「…もしかして。私達が喋ってる間に…」


「逃げられた、みたいな？えへへ。あたしなーんにも気づかなかった」


「いつの間に…忍者か？アイツは」


「…ッ…此の子達はともかく…！アンタはいつになったら其の詰めの甘さが無くなるんですかッ！！早く探して捕まえてこーいッ！！」



此れぞ正に、体たらく。

ともかくと呼ばれたが四人揃って
気付かなかったのもまた事実。

パイロの爆発した怒りの言葉に
反射でロード達もＵ・Ｊと共に敬礼の
ポーズを取って返事をしていた。

兎にも角にもＵ・Ｊとパイロの関係は
序列では計り得ない物があるようだった。



「すっぐに捕まえてくらぁ！！…めんどくせぇけど…」



部下から出された命令にすたこら走り出した
Ｕ・Ｊに何故か付いて行く三人。

賭場にはパイロとサバネが向かった奥の
部屋と入り口の階段以外に出口は無く奥には
パイロ達がいた為、階段を使ったはずだと
ロードとＵ・Ｊ達は来た階段を駆け上がる。

階段を登り切った瞬間に足を引き摺って
歩くウィグルの姿を確認した一同。



「いたよ！」



ポアラが声を上げると全員でウィグルに
向けて走り出すと、ウィグルは近くの女性
を蔓で縛り上げ、人質に取る。

悲鳴を上げた其の女性に見覚えのある
ロード達が足を止めて立ち止まる。



「マオさんッ！！」


「みなさん…たすけて…！」



シャーレが叫んだ其の女性は賭場への
入り方を教えてくれたマオだった。



「手を引け…この女が八つ裂きになるぞ…！」



息を切らしたウィグルがロード達に向けて
脅迫を行い、足を封じる。



「女性を人質に取るなど、この下衆が…！」


「そこはこのスケベに同感ッ！離しなさいよ、卑怯者！」


「マオ！大丈夫だ…安心しろ…絶対助けるからよ…！」



ロード達がウィグルの隙を突こうと
集中して其のタイミングを探している。

すると、Ｕ・Ｊがたった一歩だけ前に出る。



「めんどくせぇとか言ってられなくなったな。アンタ、越えちゃ行けねぇラインを越えちまったよ…！」



其の瞬間、ロードの横に居たはずのＵ・Ｊが
十手で蔓を両断するとウィグルの顔面に
思い切り拳を叩き込むと呻きを上げながら
ウィグルは身体ごと吹き飛ばされる。



「そ、そんな…いつ俺の真横…に…」



そう言うとウィグルを気を失った。

その後、駆け付けた帝国軍の兵によって
ウィグル、更にはその他のメンバーは拘束。

パイロに依って集められた証拠物品から
サバネが真実を記事にする。

犯罪組織ワグラターナの麻薬ＳＤ６の
全貌が世の明るみに晒される事となった。