RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第一編第三章 蔓延る悪意

言葉に込められた憂い

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「迷走…?」


「ああ、簡単に言うとな、“力に溺れた”そんな印象を受けちまうんだよ、帝国軍には」



U・Jが続けた帝国軍の現状に各々が
想いを耽って行く様に黙り込む。

帝国軍は今、転換期にある。

長年、軍を支えてきた大御所を追いやって
若き力のある者を登用する時代となった。

戦争をし続けた中、疲弊しているのは
国だけではなく兵士も、というのは明白。

其れを理由に、帝国軍は
大幅な進路変更を行ったというのだ。



「全盛期を終えた功労者の首を切って今、戦いの中で才を持つ人間が上に立つ。この数年で将官の顔触れは大きく変わった」



将官とは所謂、パイロの担う准将以上の
立ち位置の者を指しており、其れを機に
U・Jも将官の立ち位置を手にしている。

U・Jにとっての軍への不信感は
自身も関わった此の人事問題が大きい。



「まあ、なら何でその昇格を受けたんだ、と思うかもしれねぇが。色々あんのよ。こんな俺でもよ」


「なんだろ、アタシ的にだけど。U・Jさんは革命軍や反乱軍の人達が羨ましいみたいに聞こえる」


「だはは、ポアラちゃんだっけか。俺に“さん”なんて付けなくていいぞ。…だがよ。羨ましいのは事実かもしれんな」



豪快に笑ったU・Jを見て多少だが
宴席のテーブルに明るい声が響いた。



「なら、アンタはどうして帝国軍の看板を背負ってるんだ?」



ロードの問いにU・Jは沈黙の後
より豪快に笑い飛ばして口を開く。



「だはははッ!!そいつァやめとこう。俺はもう酔っちまったよ、お暇させてもらうぜ」


「随分、急だな。U・J」


「…今此の国を憂いて各々が自分なりの正義をぶつけて、苦しみ悩み傷付いてる。日常で起こる死を前にして自分で答えを探すんだ……俺もまだ悩みの中だ」



そう言い残したU・Jはその席を立って
緩りと歩き出して行く。



「おーい!お嬢ちゃん、勘定頼む」


「いえ、此れはお礼なので勘定は頂きませんよ」



U・Jの言葉に手を横に振って話すマオ。



「めんどくせぇ事言うなよ、お嬢ちゃん」


「…え?」


「美味い酒に美味い料理…こんなの頂いて金を払わせないってのは、一種の拷問だぜ」


「で、でも。お礼ですからコレは!」


「それ以上は野暮だ。いい時間だった、暇がありゃあまた来させてもらう。次は綺麗な・・・着物でも着て出迎えてくれや」



半ば強引に金をマオの手の中に押し込んだ
U・Jはそのまま振り返る事なくマオの
店を後にして暗闇に消えて行った。

あっけに取られたマオは驚いたまま口を
開けていたが手の中のお金を見て仰天する。



「え、え、多すぎ、多すぎます!」



其れを見たポアラが笑みを浮かべて
マオに寄り添い、頭を撫でて口を開く。



綺麗な・・・着物代なんじゃない?」



マオの家は元々貧乏だった。

自分の着ていた着物の継ぎ接ぎ・・・•を見て
マオは目に涙を浮かべてお金を胸に当てがい
ゆっくりとポアラの胸に顔を埋めた。



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