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第五編第三章 溢れる涙は光と成りて
光と闇を背負う者
しおりを挟むザックが話したのは歴史が証明して来た
光と闇が導く数奇な時代変革の話だ。
革命軍に導かれプレジアへと足を踏み入れた
シェリーが目覚めたのが光のチカラなので
あればシェリーは鎖国を崩し、此の国に開国
という新たな時代を呼ぶキーパーソンとなる
人間なのは恐らく疑い様も無い事だ。
だが、歴史に於いて稀に其の希少種の力が
複数並び立った場合があったのだ。
其の歴史のどれもが夥しい程の血が流れて
目が眩む程の真っ赤な鮮血の色に彩られて
来た憎悪に満ちる戦争として残っている。
最後の言葉はザック自身も目を瞑り歯を
食いしばると何とか言葉として紡ぐ。
「数年前、新たに帝国軍の元帥として成り上がった“ロスト”という男が何の因果か“暗黒のギフト”のチカラを授与しているんです…」
そう、ザックやレザノフが危惧していたのは
此の二つのチカラが並び立つ危険性を指す。
戦いの運命は避けられず、此の時代にまたも
大きな戦争を予感させる目覚めとなった。
レザノフやザックは肩を落とす。
いつの時代も変化は血の流れと人の死で
贖われてしまう事、其れは言葉にするのも
気が引ける程の哀しき時代の遺産なのだ。
ロード達はそんな運命を背負う可能性が非常
に高くなったシェリーを見遣ると、目付きが
どうしても憐れむ様な目になってしまう。
「…皆さん…心配は無用です…。どんな運命であれ…私は切り拓いて見せます…悩んでいましたがロード様の言葉に勇気づけられチカラに目覚める事が出来ました…だからこそ諦めなければ道は開けると信じたいんです…!」
シェリーの言葉に皆が、救われた様に個人差
はあれど晴れやかな笑顔を取り戻して行く。
「へへっ…だな。やっぱりシェリーは強ェよ…」
「うんっ…。感動しちゃったアタシ…!」
「シェリーの様な子が王家を継いで行くのならきっと…バルモアは良い国になりますね」
最後に口走ったシャーレの言葉にポアラは
ふと意外そうな目でシャーレの顔を覗きこむ
とシャーレすらも思わず出た言葉だった様で
ほんの少しだけ照れ臭そうな表情で頬を掻く
とポアラは笑顔を見せていた。
「……?ポアラ様、シャーレ様、どうかされましたか…?」
顔を見合わせて居た二人を見てシェリーが
首を傾げて居ると慌てた様に二人が何かを
取り繕っている姿を見せる。
「変なヤツ等だな…」
シャーレの過去はポアラしか明確には知らず
本人にとってもまた口にするのは辛い話で
あると察していたポアラは他の誰かに此の
事実を知らせる事はしていなかった。
こうして閃光のギフトという希少なチカラを
手に入れたシェリー、其のシェリーを見て
ザックは心の中でぼそっと呟いた。
「(プレジアだけでなく…バルモアにも大きな希望が現れました…必ず…良い未来が訪れるのだと信じたくなりますね…)」
ザックの言葉はそっと隠されたまま、希望
という題名でザックの心の中のアルバムの
中へひっそりと刻まれて行くのだった。
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