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第六編第一章 一輪の花を巡って
旅の小休止
しおりを挟む「メディチさん…今戻りました…」
「…ポアラの様子は…?」
息を切らして薬師メディチの住む麓の村落内
の小屋へとバタバタと駆け込んで来たロード
とシャーレの二人は膝に手を当てて話す。
「…待ってたよ。アンタ達…苦しんでるがちゃんとまだ息はあるさね。…で?アユターレの花は…?」
「此処に…」
シャーレの手に握られ多少クシャッと潰れて
はいるがあの下山の中でとても大事に花を
シャーレ自身が扱っていた事が解る。
「良く手に入れて来たね…。後は薬師の仕事だよ…。アンタ等は水飲んで待ってな…」
アユターレの花を受け取った薬師メディチは
気合いを入れる様に帯をキュッと締め上げる
とすり鉢に花を入れて作業に取り掛かった。
「ロード様…良かったです。あのお花を手に入れる事が出来て…」
「シャーレ殿もお疲れ様でした…。後はポアラ殿の容態が良くなるのを待ちましょう…」
「…はぁ…何とかなったんだよな…」
「勿論。まだ安心は出来ないが…もう信じて待つしか出来る事は無いだろう」
シェリーとレザノフから其々、竹筒に入った
水を受け取ると喉を潤しながら小屋の畳の床
に腰を下ろすと薬師メディチの仕事を険しい
表情で眺めながら苦しみ、床に伏せるポアラ
の復帰を願う様に静かに口を閉じた。
そして、薬師メディチの手が止まると緩りと
出来上がった薬をポアラの口へと運ぶ。
そして、メディチが一息を付いた。
「メディチさん…。ポアラは?」
「もう大丈夫なんすか…?無事…なんすよね?ポアラのヤツ…」
身を乗り出す様にメディチに問い掛ける
ロードとシャーレに背を向けて居たメディチ
は緩りと腰を回して向き直り口を開く。
「後は…少し寝かせてやれば大丈夫さね。山を越えて疲労もあるだろうし…急ぐ旅で無ければ多目に此処で休めばいいよ」
メディチが笑顔を見せて話した言葉にロード
とシャーレの緊張の糸が完全に解けたかの様
に全身の力が抜けてふにゃふにゃに寝転がる
二人の様子が見受けられた。
「シェリー…レザノフさん。まだ時間はあるのか?」
「はいっ、貨物船の到着は明後日ですのでポアラ様の回復を待ちましょうっ!」
「なら良かった。因みにレザノフさんの身体の状態は大丈夫なんですか?」
「ええ。私も出来ればほんの少し身体を休められると助かりますね。御言葉に甘えるとしましょう…」
「決まりだ…。メディチさん。済みませんがポアラの回復まで少し御厄介になります」
頭を下げたシャーレを見て薬師メディチは
緩りと立ち上がると笑顔を見せて小屋から
姿を消して行ったのだが、此の小屋の隣には
メディチの家がある。
恐らく此の小屋は仕事場なのであろう。
棚には色々な文献や調合済みの薬などが
並べられて居る場所であったからだ。
だが仕事場としては余り物が多くも無い小屋
であるからしてロード達は五人も居るのだが
意外と広く悠々と畳の上で一息を付いた。
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