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第七篇第二章 王家に仕えし血族の墓標
疑問を残した言葉
しおりを挟むロード達は革命軍シルヴァの手助けを得て
大滝の内側にあったレイノルズ家の墓標から
脱出を図ると吹雪が吹き荒れるエルブルーム
の雪山の下り坂を駆け降りていた。
ロードとシグマ、ガスタは自身の足で力強く
雪の大地に足を埋まらせながら走り、そんな
彼等の真横でシェリーは閃光のギフトに依り
生み出した光の円盤の上に座り込み優雅さを
醸し出しながら雪山を降りて行く。
「……あのよ…ガスタ…。一個訊いてもいいか?」
「…何でしょうか…?」
ロードはガスタへ訊きたい事を山程抱えて
居たが自身の事については此の場は後回し
にして先程出来た疑問をぶつけた。
本人の事はきっと走りながらでは注意力が
散漫になる事は明白だと考えたのだろう。
「…ディルって男を知ってたんだよな…?」
「……ええ。昔少し縁がありましてね」
「今は敵ってのはどういう事なんだ…?昔は味方関係だったって事なのか…?」
「……私は彼が十代の頃から知っています。今となればもう其れが二十年よりも昔の事ですね…。私は彼の師匠の様な人間とも顔見知りでしてね…彼の師匠と縁あって繋がった頃に若い衆として彼がいました…。其の時は間違いなく協力関係にはあったのです…」
ガスタが紐解いたのはディルが十代だった
二十年程前の頃のお話だった。
彼の師匠、そしてガスタが其の当時は何者
だったのか、いや今ですらガスタが何者かも
解っていないロードからしたら全て初耳。
ディルという男の不気味さも相まってロード
は頭の中が糸がこんがらがる様に混乱した様
な表情を見せると次の疑問に繋がらない。
「……ですが。私も彼が今何故、死蜘蛛狂天という傭兵組織を立ち上げて裏社会に暗躍しているのかには覚えも無ければ知識も無いのです…此ればかりは本人にしか答えが無い物と思って下さい…」
「……わかった。すまねぇな…」
「……いえ。謝る事では…」
「……ああ、そうだな…」
ロードはディルの行動を更に訝しむ。
そして表情を曇らせた其の時だった。
「…アホくさ…辛気臭いわボケがァ…!」
唐突に頭に拳骨を食らったロードは鳩が正に
豆鉄砲を食らった様な表情で固まる。
そして背後で舌打ちをしたシグマに視線を
向けると段々と普段のロードが戻って来た。
「何しやがんだ…テメェはァ…!!」
「あァ!?そんなもん女々しく落ち込んどる馬鹿が悪いんやろがッ!」
「……ニャロウ…誰が女々しいだと…?」
「お前じゃボケが。あんなあ…なんもかんも上手くいったり理解出来るなんてないやろが。…せやけどな…あんのべっぴん嬢ちゃんに兄貴からの伝言言えたんやろ…?」
サバネとロードの話を聞いていた訳では無い
のだが話の流れから理解していたシグマから
の言葉にロードも一歩は進んでいたという事
を改めて思い出しほんの少し笑顔を見せた。
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