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第七篇第四章 進展と進化
ライバル
しおりを挟む「……せやけど、このままお互いがいがみ合っとったら姫様が疲れてしまうさかい…一つ提案があるんやが…」
「……なんだよ…?」
「……こっからはワイ等はライバルや…。表向きには出さんが…姫様からどっちがホントの意味で必要とされとるかっちゅうな…!」
「……ライバル……」
不思議とロードの表情が緩んで行く。
ロードは幼い頃に両親と別れて其処から十八
となる歳までランスと共に暮らしていた。
名乗れない名前がある様にロードは昔から
余り人との関わりを断絶する日々を送って
来た事は本人が自覚している事実。
其の中でシャーレと出逢い初めての仲間で
あり同性の友人が出来たのが最近の事。
そして、其処から直ぐにポアラという女性の
友人が出来、仲間三人で旅を始めた。
更には様々な出逢いがあった中でシェリーと
出逢い初めて恋という感情を知る事になる。
レザノフという信頼も尊敬も出来る大人との
出逢いでこんな風になりたいと憧れも抱く。
自分から繋がる事を選択してからはトントン
拍子の内に輪が広がり今となっては無かった
時の事を考えられない程へとなっていた。
そして、此処に来てライバルと呼んでくれる
新たな出逢いという贈り物が届いたのだ。
青臭い事かもしれないが男にとって其の言葉
は一言で言い表せない何かを掻き立たせる。
更に誰かには負けたくないという感情を抱く
事で人は更に一歩其の先へと歩を進めて行く
生物なのは紛れも無い事だろう。
ロードが持つ未だ語れないバックグラウンド
から察するにシグマの放つ“ライバル”という
言葉は彼にとって物凄く嬉しいモノだった。
「なに黙っとんねん…ワイがライバルじゃあ不服や言うんや無いやろな…?」
「……んな事ねぇよ…。嬉しかっただけだ…あんまり直球なんでビックリはしたがな…」
「せやろせやろ。直球なんがワイの良いとこやねんで?覚えとけや…」
「……ああ。覚えといてやる…」
すると、シグマが右拳を前に突き出す。
そして、緩りと口を開いた。
「ほんなら…改めてよろしく頼むで。ワイは負けてやったりせえへんで?そない甘くはないっちゅう事も覚えとき…“ロード”…!」
初めてシグマがロードの名前を呼んだ。
其の事にロードは何だか身震いが止まらず
緩り緩りと手のひらを握って握り拳を作る。
「…ニャロウ…言ってくれんじゃねぇか。俺だって負けねぇよ…オメェもそれは覚えとけ…シグマ…!」
二人は身体と身体の真ん中で拳同士をグッと
ぶつけ合い互いの顔を見合って笑顔を浮かべ
ると二人が放っていた気を張り合った様な
陰険なムードは綺麗に拭い去られて行った。
言葉は聞こえて来ないが何やら良いムードを
察したかの様にシェリーは少し遠目から二人
の表情を見遣ると手のひらを口に当てて幸せ
そうな笑みを浮かべていたのだった。
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