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第九編第四章 此の国の護り神
裏帝の長
しおりを挟む死蜘蛛狂天三大幹部ディルの登場から戦いが
止まっていた活火山ポルナダベトル。
其の活火山に突如として紺碧の火柱が何本か
轟々と音を立てて空に向かって立ち昇る。
何かの気配を察したディルと裏帝軍の反撃に
全神経を集中させていたガルフすらも流石に
とばかりに其の気配へ振り返る。
すると、ロード達の位置からは上に見える
火山の高台の位置に一人の人影が見えた。
其の男は大きな欠伸をしながら眼下に広がる
此の光景を緩り緩りと撫でる様に見つめた。
「しゃらくせぇ…アイツまで出張って来やがったか…」
「フフフ…更なる混沌か…」
ガルフとディルの二人のみが其の男の存在に
気付くと遅れてリゼアとソフィアも其の正体
を知ると顔を引き攣らせる。
色黒の肌に赤い瞳、上半身には黒光りした
ジャケット一枚で前を豪快に開けている事
から逞しい肉体が目に入る。
胸の辺りから恐らく背中まで掘られているで
あろう刺青が其の男の恐怖感を滲ませる。
すると、其の男が発生させたであろう火柱の
熱がガルフの黒き氷を溶かして行くと裏帝軍
其々が此の状況を理解して痛む身体を無理に
叩き落として高台に立つ男の元へと向かう。
そして、四人其々が一斉で片膝を付いて片手
を黒道の地面に押し当てると頭を垂れる。
裏帝軍幹部が揃って跪いた光景にロード達も
其の男が何者なのか示唆し始めた。
「オイオイ…雁首揃えて此のザマか?なあ…テメェ等良くそんなんで裏帝の幹部なんて名乗ってやがんなあ…」
其の男の言葉に頭を垂れて跪いたままの幹部
四名がダラダラと止まらぬ冷や汗を流す。
「も…申し訳御座いませぬ…グレイ様…」
何とか言葉を絞り出したのはスネイクだった
のだがグレイと呼ばれた男は何も気にする事
は無く数歩前に出る。
そして黒いパンツスーツのポケットに両手を
突っ込んだまま大きな欠伸を見せ付ける。
「アレは…誰だ…?」
「フフフ…あの男が裏帝軍の軍団長を務める…グレイ・ギルノーブルだ…」
グレイ・ギルノーブル。
政府直下裏帝軍軍団長を務める黒髪短髪の
ガタイの良い男であるがダサいという理由で
裏帝軍の翠色のマントは羽織っていない。
性格も荒々しい面が目立つ裏帝軍最恐の男。
「テメェ等は…良く知ってる筈だ…弱ェ人間の末路をな…」
軍団長グレイの言葉に何かが脳内を奔った
裏帝軍の幹部達は痛む身体等物ともせずに
サッと立ち上がり高台から一斉に跳び降りる
と四人全員が覚醒状態のままでガルフの首を
狙ってまたも動き始めた。
「しゃらくせぇな…来るぞッ!」
ガルフの掛け声にロード達は改めて武器を
構え応戦の姿勢を取って見せた。
すると、軍団長グレイも高台を跳び降りて
ポケットに両手を突っ込んだまま緩り緩りと
肩で風邪を切りながら歩みを進める。
活火山ポルナダベトルの戦いに新たな戦力が
現れ更に激化の時を迎えた。
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