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第十篇第三章 反乱と革命のストリンジェンド
猪進フロウvs馬猟ヒューズ
しおりを挟む腕組みをしながら真っ直ぐにヒューズの横顔
を眺めていたフロウの視線が段々と痛く感じ
始めたヒューズは流石に物思いに耽り過ぎた
かと反省を浮かべながら恐る恐るフロウへと
視線を向けて口を開いて行く。
「あのー…待っててくれてるみたいなんだけど…やっぱり戦わないとダメかな…?」
「君が此の先…何もせずに降参を言い出してくれるなら手を引くが?」
「それって…仮に誰かがピンチになってもって事だよね…?」
「ああ。其の通りだ」
ヒューズは溜息を吐きながら頭をガシガシと
掻くと直毛の黒髪が明らかにボサボサの頭へ
変わって行くと諦めた様に口を開く。
「まあ…そうなるよね…其れはちょっと…条件としては余り宜しくないや…本当…向いて無いのに…ああ…薄暗い部屋に帰りたい…トホホ…」
解りやすくダルそうに背中に背負っていた
ジャベリン型の業物を構えるとヒューズは
またしても深い溜息を吐く。
「中々、見ないな。其処迄、戦いへ面倒くさそうに入ってくる人間は」
「だろうね…僕はさ。技術屋なんだ…自分で言うのも何だけど…賢いのがウリなんだよ…戦いは怖いし、嫌だ」
「其れでも仲間の事を思えば構えて来るか…やはり、戦いの流れは変えられんな」
「いやー…全然…変えてくれてもいいんだけどね?」
ブツブツと言葉を発するヒューズを見ながら
革命軍参謀フロウは大槌を其の手に握ると目
の前のヒューズを見遣りながらニヤリと笑み
を浮かべる。
すると、ヒューズは悪寒に晒された様に身を
震わせフロウと視線を合わせた。
「ああ…もうっ…なるようになっちゃえっ」
ヒューズが発動させたのは松葉色(くすみの
ある緑色)の樹木のギフトだった。
そして其の樹木のギフトに因って生み出され
フロウの足場から勢い良く飛び出た蔓の触手
が鞭の様に頭上を蠢き襲い掛かる。
フロウは大槌で上手く捌きながら蔓の触手を
打ち倒して行くが弾いた触手の一本がフロウ
の肩口に軽く掠る。
だが、其の瞬間にフロウは軽い眩暈に襲われ
視界が一瞬、揺れてしまう。
此れは樹木のギフトの特性の一つ“猛毒”。
攻撃に付与された其の特性は相手の五感に
刺激を与え毒を体内に紛れ込ませる。
ジワリジワリと敵の自由を奪う特性だ。
「どう見ても…僕より君の方が強いんだから…此処は一気に行かせて貰うよ?」
ヒューズの身体が松葉色のギフトと波動の
オーラに包まれて行く。
フロウは覚醒が来る事を直感し背後へ一つ
バックステップを入れて距離を取る。
「樹木覚醒…“ 槍陣怪馬”…!」
ヒューズの身体が覚醒を起こす。
下半身が大きな蹄を持つ馬、上半身は毛皮の
様なコートを羽織る半獣体ケンタウロスへと
変化し背中から羽衣を纏う。
そして、尾が二股に別れまるで蔓の触手の様
に長く蠢いており、手首から伸びた草木と手
に握られたジャベリンの柄が繋がった。
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