RISING 〜夜明けの唄〜

第十篇第四章 反乱と革命のフェローチェ

闇蝙蝠ウィルフィンvs猪進フロウ

間合いを詰め合った互いの武器が中心で派手
な金属音を奏でてぶつかり合う。

更にウィルフィンの刀に纏われた漆黒の疾風
のギフトが音を立てて風を起こす。

すると、フロウの握っていた大槌にも紫色の
大地のギフトのオーラが纏われた。

互いに武器を弾き合い一進一退の攻防を見せ
続ける戦場には互いの呼吸音と甲高い金属音
だけが不定のペースで奏でられる。

巻き起こした漆黒の風がフロウを襲うも其の
攻撃は致命傷を与えられない。

大地のギフトの特性“粘土”でウィルフィンの
足場を奪いながら大槌で攻め込むもフロウの
攻撃をウィルフィンもいなして行く。

軍を引っ張る大幹部としての肩書きも二人が
負けられない理由へと直結した。

両軍が動かしていた医療班から数々の幹部達
の負傷が此の二人の耳には入る。

更に互いの大義名分を抱えながらも遂に激突
を予見させていたエルヴィスとノアの常日頃
とは違った尋常なる覚悟をも感じてフロウも
ウィルフィンも此処に賭けている。

ウィルフィンはエルヴィスのフロウはノアの
此れ迄の苦労を見てきたからこそ報われる刻
を迎えさせてやりたい。

必ず想いを結実させたい。

此の想い同士が互いにぶつけ合う此の戦いに
火花を巻き起こさせていたのだ。

覚悟は姿となって現れる。



「大地覚醒…“ 暴突猪牙アサルトボア”ッッ！！」


「疾風覚醒…“ 迅蝙蝠嵐ラピッドストーム”……！」



示し合わされたかの様に同じタイミングで
発動された覚醒は戦いの加速を感じさせる。

蝙蝠の漆黒の翼をはためかせ口元から足首迄
を覆う同じく漆黒のマントを翻し、目元から
蝙蝠のタトゥーを描いたウィルフィン。

下唇から鋭い猪の牙を生やし肩口には巨大な
猪型の肩当てを発現させて身体全体が毛皮
に覆われた獣人の姿を見せ付けたフロウ。

闇を舞う蝙蝠と猛進する猪の本領が覚醒の姿
を借りて激突する。

振り下ろされた大槌の威力は獣人と化し大地
を割る程の増加を見せる。

だが、ウィルフィンは疾風のギフトの特性
“加速”を生かして身体に漆黒の風を吹かせて
其の攻撃を躱しながら宙を舞う。

しかし蝙蝠らしく低空を飛び構えた刀で眼前
に捉えたフロウを撹乱しながら攻め込む。

フロウも腕を振るって生み出した粘土の壁を
上手く活用しながらウィルフィンの攻めを
無効化して行った。



「やはり…強いな。ウィルフィン…其れでこそだ…」


「何を訳の解らぬ事を…俺はただ…貴様を排除しエルヴィスの歩む道を真っ直ぐな道へと整えるだけだ…！」


「悪いが…俺もノアが導く未来への扉の鍵を一つずつ開けて行くだけなのでな…譲れぬという流れだ…！」



一層の苛烈さを見せ付けながらウィルフィン
とフロウは両軍の総長の為に自身の夢や想い
は既に殺している。

両軍を裏で支え続けた二人の激闘は未だ勢い
を失うどころか加速を続けて行った。