RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十一篇第二章 標的包囲戦

平和の祈りを捨てた者

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「(ヒック…駄目だ…弾かれるよォ…)」



レザノフの放った弾丸の硬化レベルは非常に
高い水準に達しておりオーズの棍棒を軽々と
弾くと其の弾丸は勢いを失わずに彼の肩付近
を貫いて見せると鮮血が弾け飛ぶ。



「ヒック…ああ…此処には鬼の肩当てがあったのに…こうも容易くねぇ…うぃ~…」



肩を弾丸で貫かれたオーズだったが手のひら
を肩に当てながら何とか足のバランスを保ち
息を荒くしながらも立ち続ける。



「諦めて退く事を勧めますよ」


「あっしは…ヒック…もう一つ諦めちまってるからねぇ…死ぬのは怖くないのさァ…」


「一つ諦めた?何を…」


「戦いの歴史だよォ…ヒック…アンタ達は此の国の鎖国を解き放ち…また兄弟国としての時代を取り戻そうとしてるんだろォ…そうなってもまたいつかは…戦う未来が訪れる事になる…こうして歴史は繰り返されて来たんだからねぇ…」



レザノフのオーズの言葉を静かに受け止めて
聞き入れようと黙り込んでいた。

何故なら歴戦は確かにそう繰り返して来た。

蔓延る悪意、連なる裏切り。

一度の和睦や同盟では戦争が無くなる事が
事実では無い事は歴史が証明済みなのだ。

レザノフも然りオーズも然り、此の時代の
平均寿命を考えれば良く生きた方だ。

かけがえのない喜びも知っている。

しかし、遣る瀬無い哀しみも知っている。

だからこそオーズという人間の目から見れば
其の哀しみの大きさが途方も無い程心の奥底
にマグマ溜まりの様に沈澱している事を眼前
のレザノフは気付いていた。

諦めた上でいつ死んでも構わないと考えの
オーズを言葉で説得するには時代に生きて
来た年数が長過ぎるのかもしれない。

レザノフは痛みを堪えながら棍棒を握って
フラつきながら向かって来るオーズの心臓に
向けてライフルの照準を合わせる。

しかし、オーズは止まらなかった。

一度棍棒で大地を殴ると想像を遥かに凌駕
する大地震が起こり始めた。

ほんの一瞬よろめいたレザノフの其の隙を
見逃さなかったオーズは声を上げる。



「絶技… 鬼気隆震・瀑羅酒ききりゅうしん・はくらざけッッ!!」



更に地面を棍棒で連打したオーズの足元から
隆起した地面が連なり重なってレザノフの頭
の上を囲う様に支配した。

其れが頭上から降り掛かる酒の様にレザノフ
を包み込んで行く。

絶技を放つと同時によろめいたオーズの身体
にレザノフは反撃の一撃を放ち終えると両腕
の盾を頭上に翳してオーズの絶技を凌ぐ。

そして、鈍色の弾丸がオーズの身体に命中
すると血反吐を宙に撒き散らしながらオーズ
は背中から地面に倒れ込む。



「生きる事も辛いのは良く解ります…しかし次世代達が生きる未来を諦めて死ぬ訳には行かないのですよ…私はね」



レザノフはオーズを一瞥すると覚醒を解き
静かに背を向けて言い放った。
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