RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十二篇第五章 繋がれて行く絆

十年にも及ぶ強がり

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そんな過去の会話がフラッシュバックする中
拳を強く握り締めたエルヴィスは続ける。



「二人しか居なかった頃はよ…ずっと寝れやしねぇから…夜が長かった。でもよ…お前が居たから……お前が居てくれたからッ…此処まで来れたんだッ!!」


「……ッ!そんなの…私もだよ…ッ」



アドリーの身体に震えが起き始めた。

何かを堪えるかの様に。



「お前が居て俺が居る。だからよ……たまには頼れッ……強がってなんかいねぇで今お前がどうして欲しいかを言えよッ!!!!」



心からのエルヴィスの叫びの声がアドリーの
胸の奥底にまで真っ直ぐに突き刺さる。

十年間、唯一アドリーが自分に対して禁じて
いた事、其れはエルヴィスの前でだけは涙を
流さない事、彼の重荷になりたくない、彼の
力になる為に隣に立ったのだから。

だが、もう其れは破っていいのだとアドリー
は感じ、溢れ出る其の涙を止められない。

そして、クシャクシャになった表情で初めて
エルヴィスに唯一の願いを託した。



「ごめんッ…強がってごめんッ!救けて…お願いッ…エルヴィスッ…私…まだエルヴィスと皆と…一緒に生きたいがらッ!!!!」



其の言葉を聞いたエルヴィスの表情に普段と
変わる事の無い笑みが戻って来た。



「其の言葉を待ってたぜッ!!」



既に覚醒の姿のまま此処に辿り着いた獅子の
如く圧を放つエルヴィスが大将ララに向けて
双剣の鋒を構える。



「つうワケだ。悪いが…アドリーは連れて帰らせて貰う」


「其れをさせない為に私が居るのだけれど」


「いーや…。もう関係ねぇな…そんなモン。ダサくたっていい…カッコ悪くたっていい…全員無事に帰るんだ…!」



エルヴィスの圧を前に大将ララは腰元の鞘に
収まっていた刀を緩やかに抜刀する。

すると、美しい金髪の髪を靡かせて其の身体
に薔薇色の樹木のギフトのオーラを纏わせる
と鋒をエルヴィスに向けて構えた。

其の彼女が誇る強さ、大将という肩書きから
もたらされる圧倒的な制圧力をエルヴィスは
瞬時に見抜いていた。

そして、心の中で悟る。

大将ララは自身よりも強い、という事を。

だからこそ、エルヴィスが発した先程の発言
の内容があったのかもしれない。

必要なのはアドリーを救け出し全員無事に
帰還する事、其れを自身に言い聞かせた。

目的を身失わない様に。



「行くぜッ!!」



エルヴィスが一気に加速し大将ララとの距離
を詰めて行くがララの足元から発現した赤い
薔薇の棘を持つ荊が其の特性“増殖”を活用し
此の部屋内を一気に覆って行った。

其の増殖力にエルヴィスの持ち前のスピード
は半減されてしまい棘を避けながら其の荊の
園の中をララ目掛けて何とか進む。

大将を前にして其の背後から煉獄の炎を纏う
監獄署長が其の首を狙って迫っている事すら
エルヴィスは気付いていなかった。


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