RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十三篇第三章 血の氾濫

血の氾濫 “逆上”

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何も知らされて居なかったグレイは蚊帳の外
のまま裏帝軍の部隊が帰還を果たした。

フォスター等、部隊は直ぐ様、裏帝軍の当時
の軍団長達に呼び出しを受けていた。

そして、事態は急速に動く。

喧騒に包まれた裏帝軍本部に於いて全兵士に
招集の命が降され、中庭へと急ぐ兵士達。

集まった兵士達の動揺と騒めきの中、グレイ
は数分遅れて其の場へと到着した。

其処に映し出された光景にグレイは絶句の
表情を浮かべて立ち尽くしてしまった。



「オイッ……!何だこりゃあ……何が起きやがったんだッ!!」



荒ぶるグレイは偶々、隣に居た女性の首元を
掴んで慌ただしく問い詰める。



「いきなりなんね……アンタ……!」


「いいから答えろッ!!」


「………見せしめばい……!」


「………は?見せしめ……だと……」



七年前当時、入隊したての二十二歳であった
エマ・メディックスに告げられた言葉にまた
静寂に包まれたグレイは改めて目を向ける。

其処には木の長机の上に並べられた幾つもの
生首が有り、其の中央にはグレイにとっては
最も見知った男の首があったのだ。



「此奴等は、此のプレジアへの忠誠心を失った大馬鹿共だ。神風特攻という此の国への自愛を示す事の出来る光栄な機会を雨風如きに失念し我々を…此の国の上層部を落胆させた。因って…ッ!!処刑したッ!!」



当時の軍団長の言葉が集められた全兵士達の
耳へと刺さり恐怖に怯える者達が言葉を失い
軍団長に視線が集まった。



「何の希望もなか……死ぬ事でしか貢献度ば測れんなんて……うちらん扱いは“人”やなかやろうか……」



グレイに首元を掴まれたままのエマの口から
絶望の淵に立たされた様な声が漏れる。

其のエマの視線は軍団長の背後に並んだ四人
の当時の幹部達へと向けられていた。

其の中のスーツの男を見て、エマは絶望した
表情を浮かべているのだが其のスーツの男は
エマの実の父親であった。

裏帝軍という環境を知らなかったエマは父に
敬愛の念を抱き憧れていた。

しかし、父を追って辿り着いた此の場所には
尊敬出来る父が居るとは思えない程の無残な
現状に肩を落とした。

すると、グレイはふわりとエマの首元から手
を離すと人混みを掻き分けて行く。



「どこしゃ行くったいッ!?」



エマの呼び掛けにも応じずグレイは無言で
中庭の中央を目指して行く。

人を突き飛ばしながらも加速して行くグレイ
に気付いた幹部達が静止の声を飛ばす。



「キサマ、どういうつもりだッ!?其の目は何だッ!?止まれッ!!」


「うるせぇな……」



幹部達の真上に跳び上がったグレイは右拳を
引くと其処に紺碧色の炎が灯る。



「テメェ等は神か何かなのかッ!?あァ!?テメェ等の罪はよ……閻魔大王でも裁き切れねぇだろうぜッ!!!!」



フォスターの死がグレイの閉ざされていた
怒りを其の拳の炎に目覚めさせてしまった。
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