RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
635 / 954
第十四篇第二章 大蜘蛛を背負う者

感恩戴徳の日々 “訃報”

しおりを挟む





あれから、五年の刻が流れた。

刻は無情にも針を進めて行こうともアラネア
という男の其の後の音沙汰は無い。

“大蜘蛛”という万屋はディルが継ぎリゼアが
其の後方を固める形で存続。

ストラーダも時折、仕事を求めて尋ねるもの
の、彼等からアラネアの名は出ない。

アラネアは、此の世界から姿を消したのだ。




そんな折に、ストラーダ達を訪ねて来た一人
の男から衝撃の事実が明かされる。



「ストラーダ様ッ!!」


「……ランス…」


慌てて入って来たランスはストラーダの元で
大きく息を切らしている。

そして、息を整えて言葉を発した。



「ストラーダ様………ご報告したい事がッ…」


「…………何だ?」



意味合いの深さを察したストラーダは息を
呑んでランスの言葉を待っている。



「昨日の戦争の過程で……ッ…兄君に当たられます……エヴィア・ケーニッヒ様が……ッ…亡くなられましたッ………!」


「何…だと…ッ………!?」



届けられたのは兄エヴィアの訃報。

しかし、話は此れで終わらなかった。



「…………すいやせんが、話はまだ終わりやせん……第十四代国王…父君に当たられますリオス・ケーニッヒ様の……容態が悪化……もう長くは保たない……ッ……との事です…」



ストラーダは言葉を失ってしまった。

そして、部屋の奥から覗いていたサーラにも
見える位置でランスが膝を着いた。

そして、額を床に当てながら言葉を紡ぐ。



「ストラーダ様の想いは……重々に理解しておりやす……だが、しかし……兄君…エヴィア・ケーニッヒ様亡き今……ケーニッヒ王家を正当に後継出来る者が……ストラーダ様をおいて他におりませぬ……ッ!!」



ストラーダも理解をするのは早かった。

幾ら十年程の空白があるとは言え、此の話を
自身が蹴ればケーニッヒ王家の血縁は完全に
途絶える事を意味していたのだ。



「今更……王家を捨てた俺に…何が出来るというのだ……」


「あの玉座に…坐して頂ければ周りからの雑音は後に…収束は可能ッ!!今は……ッ…先祖代々繋げて来た…王家の灯火を消さないことが先決でございやすッ!!!!」



ランスの心からの頼みにストラーダの心境の
中に暗い光が灯されてしまう。

ストラーダが第十五代を継承すれば王家の灯
は途絶えはしないが、其れ即ち、サーラとの
訣別を意味する事となる。

バルモアという出身を持つサーラを国王と
成る自身の婦人として迎えるのはリスクしか
無いのが現実なのだ。



「俺は…………ッ…」



ストラーダは深い悩みの底に堕とされる。

生まれながらの運命を取るか、愛する妻と子
を取るのか其の判断は何方も悪手と言われて
しまえばそうだったのかもしれない。



「………ストゥ」


「…………サーラ…ッ」



其処に話を聞いていたサーラがストラーダの
後方から咄嗟に声を掛けた。



しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...