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第十四篇第二章 大蜘蛛を背負う者
感恩戴徳の日々 “訃報”
しおりを挟むあれから、五年の刻が流れた。
刻は無情にも針を進めて行こうともアラネア
という男の其の後の音沙汰は無い。
“大蜘蛛”という万屋はディルが継ぎリゼアが
其の後方を固める形で存続。
ストラーダも時折、仕事を求めて尋ねるもの
の、彼等からアラネアの名は出ない。
アラネアは、此の世界から姿を消したのだ。
そんな折に、ストラーダ達を訪ねて来た一人
の男から衝撃の事実が明かされる。
「ストラーダ様ッ!!」
「……ランス…」
慌てて入って来たランスはストラーダの元で
大きく息を切らしている。
そして、息を整えて言葉を発した。
「ストラーダ様………ご報告したい事がッ…」
「…………何だ?」
意味合いの深さを察したストラーダは息を
呑んでランスの言葉を待っている。
「昨日の戦争の過程で……ッ…兄君に当たられます……エヴィア・ケーニッヒ様が……ッ…亡くなられましたッ………!」
「何…だと…ッ………!?」
届けられたのは兄エヴィアの訃報。
しかし、話は此れで終わらなかった。
「…………すいやせんが、話はまだ終わりやせん……第十四代国王…父君に当たられますリオス・ケーニッヒ様の……容態が悪化……もう長くは保たない……ッ……との事です…」
ストラーダは言葉を失ってしまった。
そして、部屋の奥から覗いていたサーラにも
見える位置でランスが膝を着いた。
そして、額を床に当てながら言葉を紡ぐ。
「ストラーダ様の想いは……重々に理解しておりやす……だが、しかし……兄君…エヴィア・ケーニッヒ様亡き今……ケーニッヒ王家を正当に後継出来る者が……ストラーダ様をおいて他におりませぬ……ッ!!」
ストラーダも理解をするのは早かった。
幾ら十年程の空白があるとは言え、此の話を
自身が蹴ればケーニッヒ王家の血縁は完全に
途絶える事を意味していたのだ。
「今更……王家を捨てた俺に…何が出来るというのだ……」
「あの玉座に…坐して頂ければ周りからの雑音は後に…収束は可能ッ!!今は……ッ…先祖代々繋げて来た…王家の灯火を消さないことが先決でございやすッ!!!!」
ランスの心からの頼みにストラーダの心境の
中に暗い光が灯されてしまう。
ストラーダが第十五代を継承すれば王家の灯
は途絶えはしないが、其れ即ち、サーラとの
訣別を意味する事となる。
バルモアという出身を持つサーラを国王と
成る自身の婦人として迎えるのはリスクしか
無いのが現実なのだ。
「俺は…………ッ…」
ストラーダは深い悩みの底に堕とされる。
生まれながらの運命を取るか、愛する妻と子
を取るのか其の判断は何方も悪手と言われて
しまえばそうだったのかもしれない。
「………ストゥ」
「…………サーラ…ッ」
其処に話を聞いていたサーラがストラーダの
後方から咄嗟に声を掛けた。
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