RISING 〜夜明けの唄〜

第十六篇第一章 “日の出戦争”

錯綜する急報

“始まりの街コミンチャーレ、長屋町”



一人の少年が海に伸びる桟橋の上で一枚の紙
に目を通していた。



「えっ？ロード…さんってあの時シャーレ兄ちゃんと一緒に旅に出た……？」



少年の名は、ケーシー・アスラン。

彼の背には、今一振りの青龍刀が背負われて
おり其れはシャーレから託された使命を彼が
果たす為の愛刀だと推測される。



“砂の街コルドデザート、ダフマ”



ボロボロだった家屋を段々と綺麗に仕立てて
行く一人の男性の元に少女が駆け寄って来る
なり慌てた様子で一枚の紙面を突き付ける。



「パパっ！！大変だよっ…これ見て！？」


「………此れは…あの子の言っていた仲間…もしや…此の戦争に彼女も参戦すると言うのでしょうか……？」



ダフマ奪還戦にてポアラとシャーレに救われ
彼女等の動向を心配し、追っていた親子。

フィオナ・ネフェルティートと其の父ラムス
は不安げな表情で紙面を覗き込んだ。




“水の街アリアアクア、パンテ・コネーロ山”



此の山中に拠点を置く、とある山賊の間でも
此の急報は即座に広まって行った。



「兄貴ッ！！見やしたか？コレッ！！」


「あー……見たぜ。あんの赤坊主がまさかなァ……王子と来たかァ……面白ェ……」



此処等を縄張りにするバディット山賊団。

其の頭領、バディット・マルコーニと部下の
ベニー・フェルミは目を丸くしていた。



“水の街アリアアクア、麓の村落”



パンテ・コネーロ山の麓に建てられた小さな
村落では薬の調合を一度止めた老婆が同じく
此の号外に目を通していた。



「アンタ達…とんでもない運命を背負ったもんさね……死ぬんじゃないよ…！」



ポアラにとっては命の恩人とも言える薬師の
老婆、メディチ・フランチェスカも此の胸の
張り裂けそうな痛みを堪えていた。



“氷の街ケベルアイス、ウルジムスルク”



此処では、一人の氷像造形師の女性が作業を
止めて此の一大事件を知る。



「あの時の彼が……プレジアの王子…。そして隣にいたあの子は……あらあら、ちょいと夢見がちかねぇ…時代が動くと思ったアタシは……」



氷像造形師、イザベラ・リンドハーツは一度
出逢ったロードとシェリーに想いを馳せる。



“火の街メルフレア、グラセ・カラステ”



刀鍛冶が集う里、グラセ・カラステに於いて
は一人の老人が煙管を吸いながら此の情報に
ニヤリと笑みを浮かべた。



「……おやまあ、とんでもない事になっとるのう」



伝説の武器職人フェレーロ・タイルトンにも
此の一大事件の大きさは悠々と伝わる。



“風の街ヴェント、ロジャーズグリフ”



度重なる風車の修繕をする一人の父親と其の
息子にも此のニュースが伝播する。



「父ちゃん…これって…ロード兄ちゃんの事だよね……？」


「なぁに、心配するな。ロニー……彼奴はお前さんのヒーロー…きっと何食わぬ顔でまた此の窮地も乗り越えて行くだろ…！」



息子ロニー・マグワイヤのアタマをガシッと
掴んで話す父親、ゲイツ・マグワイヤの表情
には裏腹に不安なモノが浮かんでいた。