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第十六篇第一章 “日の出戦争”
先陣を切る者達
しおりを挟む刻はほんの少し遡る。
此れは旅籠“ヒノマルでの”作戦会議での一幕
なのだが本部内の敷地を把握した死蜘蛛狂天
ディル・ウォンリザードから説明が為されて
おり六撰将達が其の作戦に耳を傾けた。
『第一の目的である国王の其の妻の奪還…恐らくは帝国軍本部内地下の牢に彼等は囚われている筈……宰相ガズナの性格を持ってして目の届く場所に二人を連れて来る可能性は薄いだろう……だからこそ政府の戦力を削る陽動の隊と奪還を目指す隊を選抜する』
死蜘蛛狂天ディルの説明はこうだ。
城下町から帝国軍本部を見上げるのに最適の
本陣の位置は巨大な櫓の上。
其処から二重の濠を越えて内輪道を突き進む
事で帝国軍本部の左陣と右陣へと到達する。
そして外輪の道を行けば、其の先は王宮。
帝国軍本部と王宮の左右へと抜け進軍を図る
陽動を請け負う四隊と中央を突き進み帝国軍
本部地下の国王達を目指す隊を選抜する。
中央を行く本隊の中心には勿論、敷地の中を
把握している六撰将のランスとガスタが其の
任にお誂え向きなのは事実。
だからこそ、ランスとガスタと連携の取れる
六撰将の中でガルフを除いた五名が其の隊に
組み込まれる事となった。
此処で重要なのが四隊に別れて進む陽動部隊
で在るが此処にも重要な役割が為される。
陽動作戦というだけ有り、敵陣が其の陽動の
隊に誘われて貰わなければならない。
其処には打ってつけの人材が同盟軍には何と
揃っている事が此処で打ち明かされる。
其れは革命軍と反乱軍の最高幹部達。
一番隊隊長ウィルフィン・フィンドール。
二番隊隊長アドリー・エイテッド。
三番隊隊長フロウ・ダルバイン。
四番隊隊長ティア・ミルキートライヴ。
ディルの予測からして此の四人を陽動四隊の
隊長に据える事で敵陣の戦力の中で侮る事の
出来ない中将達を本部から左右に誘き出して
行けるという算段が成り立った。
陽動四隊で敵戦力の分断。
奪還を目指す五番隊の突破力で国王達を其の
手で取り戻しつつ、最大の難所となる大将の
三人とロストを中心戦力で止める。
勿論、此れは机上の空論。
不安点等、挙げればキリが無い。
退路を断った同盟軍に撤退は無いのだ。
勝つ事以外での命を守る術すら無い。
其れを理解しつつ同盟軍全員が此の作戦の中
に覚悟を灯して行ったのだった。
不安は在るが、迷いは無い。
反乱軍と革命軍の最高幹部達を先頭に陽動を
目的とした四隊が作戦通り敵陣を駆け上がる
中でロードの元に二人の男が声を掛ける。
「今俺達にしてやれんのはアイツ等を信じてやる事だけだぜ…ロード」
「俺達は皆が作った道の先で為すべき事が待っている…其の為に今は耐えよう」
「………ああ、わかってる」
本陣となった櫓の上に残されたロードを始め
としたエルヴィス、ノア、シェリー、ガルフ
の五人は仲間達の背中を見送った。
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