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第十六篇第三章 天下分け目の大戦・弐
敵対の枠を飛び越えて
しおりを挟む「…………そう甘くは居られないのだ」
ルナは唇を噛んでエルムに対し震える声にて
必死の反論を見せ付ける。
しかし、エルムの言葉は的を得ていた。
「お兄ちゃんの本懐でしょ?ルナちゃんには明確な目的ってのがあるんだもんね……」
寂しげに言い放ったエルムはルナに向かって
ステッキの先を突き付ける。
「ルナちゃんの本気にめんじて……エルムちゃんも全力でいく。でも……すっごく悲しいコトだと思うな…エルムちゃんは……」
「何を……?」
「絶技…… 氷魔創・沈黙乃嘴……」
凍てつく蒲公英色の吹雪が吹き荒れる。
そして、エルムの元に造形された巨大な氷の
ペンギンが嘴を尖らせ吹雪に乗った。
「悲しい事……解らない。しかし、そんな迷いだらけの絶技が私に届くかッ!!」
ルナが紫苑色のオーラを纏う。
すると、飛び込んで来るエルムの放った絶技
の氷の嘴が紫苑色の氷で凍結して行く。
そして、其の背後で氷の十字架がエルムの体
を凍結し、動きを止めた。
「絶技…… 氷架零填華ッッ!!!!」
ルナが紫苑色の弾丸を放つ。
其の一撃がエルムの絶技を貫通し十字架の元
で凍結されたエルムの身体を貫いた。
そして、大きな紫苑色の氷の華が咲き誇る。
「……ぅっ……あははっ……エルムちゃんの負け…っかな……」
氷の華が砕け、地上に倒れ込むエルム。
其処へ息を切らしながら近寄るルナの表情に
一切の勝利の余韻は見受けられなかった。
「ねぇ?ルナちゃん……お兄ちゃんのコト、ホントに大好きだったんだねぇ……」
「………ああ」
「このまま…っ…勝って勝って勝ち続ければ……本懐はとげられそうなのっ?」
「………必ず、遂げられると信じてる」
「……それはさあ…ルナちゃんがこの先もっともっと…傷付くことになっても?」
「………何?」
「ルナちゃんのお兄ちゃんのコト、なーんにもエルムちゃんはわからないからさあ……想像でしかないんだけどっ……ルナちゃんが傷付きながら…本懐をとげるのって……お兄ちゃんは……求めてることなのかなあって……」
「………そ、それは……ッ」
「えへへっ……ご、ごめんね……エルムちゃんは……優しいルナちゃんを傷つけられなかったから……そうっ…思った……だけっ…」
エルムの声が途切れる。
ルナは、慌ててエルムの身体に手を触れた。
冷たくなっていく其の身体に触れてルナは兄
の最後を思い出してしまっていた。
「…っま……待ってくれ……エルム少将ッ……っ……うぐっ……私は……」
エルムの言葉がルナを迷わせる。
「…………なんて事を……死なせてたまるかッッ!!」
同盟軍と政府軍がぶつかる戦場の真ん中。
同盟軍であるルナは政府軍エルムを抱え慌て
ながらも走り出して行く。
視線を泳がせ探すは医療部隊。
決死の想いを言葉に変えて何かを伝えようと
してくれたエルムを救うべくひたすら其の足
を早めて駆けて行く。
帝国軍本部、右翼の戦い。
同盟軍ルナvs政府軍エルム。
勝者ルナ・オウスムーン。
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