RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十六篇第四章 天下分け目の大戦・参

気炎の鉄拳

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 崩界・気炎突ほうかい・きえんづきッッッッ!!!!」



ゼロが渾身の正拳突きを叩き込む。

其の拳が振るわれた途端に幾重にも重なった
衝撃波と共に連鎖する大爆破が起こる。

其の一撃に、グレイを囲む様に落下して来て
いた溶岩の群れが砕け散り崩落を起こす。

其の崩落の下にグレイは沈んだ。



「ハァ……ハァ……我は…罪を背負う咎人なり。地獄へ参る前に未だ此の現世で全うする事がある……のだ……ッ」



更に前へと歩き出そうと動かした左足。

しかし其の左足は既にゼロの身体を支え前へ
進む程の力を残してはいなかった。

膝をついた所からゼロが完全に地面に臥して
しまう所まで時間は然程、掛からなかった。

チカラを使い果たし意識が遠退いて行くゼロ
の視界がボヤけて行く中で眼前の瓦礫の下で
燻った火種が紺碧の火柱となって昇る。

瓦礫を吹き飛ばし、空を衝く様に炯々と空に
立ち昇った火柱の下に、無傷のグレイが表情
を変えずに澄ました顔で立ち尽くす。

そして、ゼロに向けて薙刀を突き付けた。



「……満足したか?死は人の完成形だ…そいつァ…俺も此の世の真理だと思ってたトコだ。死して尚、先へ……テメェの言葉を解釈するに俺にはそう聞こえたぜ」



人に興味等浮かべる事も無かった冷徹無比の
グレイという男から発せられた言葉には多少
の違和感を持つ所だが、言葉が続く。



「だが、テメェと俺の考えが解釈一致だとしても……方向性はまるで違ェ……テメェは為すべき事を見据えてる……俺はただ…早く終わりてェだけなんだよ……こんな渡世を」



ゼロとグレイ、両者の行動理由の原本は同じ
怨みという感情から来ていた。

しかし、求める終わり方は其れでも真逆。

全く同じ人間は、やはり存在し得ない。

グレイは薙刀を静かに振り下ろした。

ゼロの命を、此処で断つ為に。





しかし、一発の銃弾が薙刀を弾いた。

其れは紫苑色の弾丸、弾丸に弾かれたグレイ
の薙刀が凍結し氷の華を咲かせた。



「テメェ等……ついこないだまで敵対してたんだろうがァ…水に流して仲良くおてて繋いでお遊戯でもしてるつもりか?あァ!?」



グレイは右斜めに在る建物の屋根に向かって
睨みを効かせると其処にはエルムとの戦いの
末に、エルムを政府の医療班へと届けた黒髪
にウェスタンハットを被った女性の姿が在り
ライフルを手にグレイを見据えていた。



「悩み争い、共に生死を掛けて来たからこそ解り合えるモノもあった。かつての敵も今や仲間……昨日の敵は今日の友と言うだろう」


「バカにしてやがる……んなモン…甘ったれのセリフじゃねぇか…」



ゼロの救援に訪れたのは同じく同盟軍。

革命軍所属のルナ・オウスムーンだった。



「次は私が相手だ。来い…」


「だったら逃げんなよ……雑魚が…ッ」


ゼロを救う為、囮となったルナは其の場から
一気に離れる為、飛び出して行く。

グレイは、ゼロを其の儘に、ルナを追い足を
早めて駆け出して行くのだった。
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