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第十六篇第四章 天下分け目の大戦・参
崩拳ゼロvs天照グレイ
しおりを挟む痛む拳も其の儘に、ゼロは地面を蹴る。
そして、足から紫黒色の爆破を起こし身体を
加速させると歯を食い縛り腕を引く。
其処から更に肘から爆破を起こし荒ぶる其の
拳に勢いを与えてグレイを狙う。
しかし、グレイが薙ぎ払った薙刀の先端から
紺碧色の火柱がゼロの身体を包み込む様にし
熱気を込めて放たれる。
「(此れで覚醒前……やはりとんでもない男だ……)」
身体を呑み込まれたゼロの加速した勢いすら
掻き消したグレイの一撃にゼロは背後に向け
大きく吹き飛ばされて行く。
「なあ、坊さん。見りゃあ解る。テメェは限界だ……此れ以上、何も出来やしねェ」
火柱と共に建物の壁を突き破ったゼロは瓦礫
を何とか退かしていち早く立ち上がる。
しかし、身体は軋む一方であった。
「我は……安寧なる世の為に……此の身を国家に対する復讐者へと堕とした。我が報われる事等、望まぬ……我は罰を受けて生きて行くのだ……だがしかし、罪無き者達を苦しめる貴公等…政府を次の時代にのさばらせる訳には行かぬ……」
「テメェの事をテメェで見捨ててやがんのか?其の痛みを全部テメェが背負おうってのか……」
「其れも、是である。我は我自身を罪人として贄とし……此れからを歩む子供達が夢を語り合える世を必ず形と成すのみ……!」
ゼロは再び、前へと出る。
尽き掛けの其の波動とギフトのチカラを余す
事なく拳に向けて練り上げて行った。
「(皆、相済まん。神の命の語り部となり争いや諍いを不要だと告げて来た我が……今や暴力で時代を動かそうとする哀れな罪人に堕ちた。我は浄土へは行けぬ……我が逝くのは地獄なのだ……再開は来世である。其れでも…皆の様に苦しむ子供を我はもう見たくはないのだ……ッ!!)」
ゼロの口から溢れた懺悔。
神の御言葉を人が歩むべき道標であると説き
次の時代の子供達に其の信仰を勧めた僧侶が
焼き討ち事件を機に破戒僧へと堕ちた事への
戒めが其の懺悔には込められていた。
普段は誰よりも温厚で物静か、そして争いを
好まぬ優しき大男が秘めし其の熱情。
其の熱情が、ゼロに再びチカラを与える。
奇しくも此れは逸話だが、人の心に呼応して
神から与えられしチカラの名がギフト。
其のギフトが、神の信仰を取り止め破戒僧へ
堕ちたゼロへ土壇場にてチカラを与えた。
神は、此の男を見捨てる訳が無いのだ。
誰かの為にチカラを振るい傷付く事を厭わぬ
優しさこそ、チカラに溺れた此の時代の中で
必要不可欠なモノであるからだ。
「絶技……」
ゼロの其の言葉を起点に空中から降り注いだ
溶岩の群れがグレイの四方八方を囲む。
そして、一歩ごとに昇華を続ける紫黒色へと
染まりオーラを纏った其の腕をゼロはグレイ
を眼前に見据えて大きく引いて見せる。
ゼロは確信した。
此れが、此の戦い最後の一撃である。
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