RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十六篇第五章 天下分け目の大戦・肆

卑劣なる急襲

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戦いを終えた二人の漢が並び立つ。

元牛鬼組、同じく元犀騒一家の総長を冠して
プレジアの東西の裏を制圧して来た極道界の
巨頭とも呼べる二匹の雄。

アドラスとウォッカ。

緩りと覚醒の姿が解かれた両者の背中に燦然
と輝く牛と犀の刺青たるや正に壮観。

ノアとエルヴィス。

二人の若き新星達を陰から支える事に徹した
今も其の力量に一片の曇り無し。



「わははは…俺っち達を甘く見たら火傷じゃ済まねェぜ…!」


「グハハハ…やはり戦場ってのは血が激る。こんなドデカイ、カチコミ…そうそう転がっちゃいねぇからなァ…!」



緩りと黒と白の団服を二人が着直した其の時
両者が想像し得ない事態が起こる。



「んなッ……柳色のマグマだァ…?」


「グッ…何が起きたァ……?」



状況を呑み込めない儘に背後から勢い激しく
溢れ出た柳色のマグマに呑まれた二人。

其のマグマの下敷きにされて地面に臥せった
両者は何とか首を回して背後を見遣る。

其処に居たのは、またしても両者が知らない
一人の監獄からの刺客であった。



「お初にお目に掛かる、罪を背負いし極道界のゴミクズ達よ。私は大監獄プリズングァザ署長マッド・ゲルティーノである。背後から等、卑劣だの姑息だのといった類いの文句は辞め給えよ?重々承知済みなのでな」



アドラスとウォッカの視線の先で建物の屋根
に後ろで手を組み姿勢良く立ち尽くしていた
のは大監獄プリズングァザ署長の大きな看板
を収めるマッド・ゲルティーノ。



「ハッ…後ろからしか勝てないって考えたんだろォ…?」


「グハハハ…頭ァ良いじゃねェか……」



強がり笑うアドラスとウォッカを見下ろして
冷たい視線を放つマッドが口を開く。



「ロア、ルミナ…何時迄寝ているつもりだ」



其の言葉に傷を負いながらも生き永らえ屋根
へと跳び乗った両名が膝を着く。



「す、済まねェ…署長……」


「す、好きピ…んじゃなかった…ごめんなさいっ…マッド様…お許しをぉ……」


「顔を上げよ。未だ戦争の真っ只中。此のゴミクズ共の処置は私に任せ、その他の犯罪者共を引っ捕えて参れ」


「…了解したッ」


「う、うち…名誉返上!じゃなかった…汚名挽回??あーもう何でもいいしッ!!今度こそマッド様のお役に立ってくるねん!!」



マッドの指示にロアとルミナは両者別方向に
向かって勢い良く離散して行った。

そして、一人残ったマッドは緩りと屋根から
飛び降りると未だに地に這いつくばった儘の
アドラスとウォッカの元へ歩を進める。



「立ち上がれぬか。其の痛みは貴様等が民へと与え続けて来た恐怖と知れ」



息を荒くした儘、立ち上がれぬアドラス達の
頭上で静かに組んだ手を離すマッド。

其の両手からドロドロと溢れ出て来る柳色の
マグマを前にしてアドラスとウォッカは自身
に迫る死期を感じながらも笑みを浮かべる。
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