RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十六篇第五章 天下分け目の大戦・肆

臙脂色の天馬

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「貴様等に与える牢は無い。そして考え得る処罰の見直しも無し…死刑だ、ゴミクズ共」



勢い良く熱量を増したマグマを其の手に宿し
死刑を、決行すると宣言したマッド。

其の動きを見遣り、笑みを浮かべながら死期
を認め瞳を閉じたアドラスとウォッカ。

マッドが両腕を振り上げる。



其の、瞬間だった。



橙色の髪を風に靡かせ臙脂色の迅雷を纏って
天を駆ける様に突き進んで来る一人の男。

其の男の腰元に此れまた靡く御守り有り。

そして、刀身に打ち込まれた雷の紋様を見せ
刀を振り上げた其の男が纏うは純白の衣。



「貴様は……」


「やらせてたまるかよッ!!」



臙脂色の迅雷を纏う其の刃の振り下ろしにて
マッドを正面から急襲し背後へと吹き飛ばす
と足に摩擦を起こしながら耐えるマッド。

距離を開けて刀を地面に向け振り払った其の
男は背中越しに二人に優しく声を掛けた。



「まさか、本当に諦めたワケじゃ無かったッスよね…アンタらにゃあまだまだ若いモンを導いて行って貰わなきゃ」



其の男の声掛けに緩りと身体を起こした二人
は顔を見合わせて高らかに笑う。



「わははは…悪ィなロイ…俺っち念仏唱えちまってたわ!」


「グハハハ…だが儲けた。感謝するぞロイ…お前に助けられた此の命…大切にさせて貰うからな」



ロイは背後に立った二人の声と息、気配的な
モノで今の状態を探り当てた。



「……抗って下さいよ。まだまだ…アンタ等は同盟軍の若い衆には必要なんだからさ」



駆け付けた其の男、同盟軍兼革命軍幹部ロイ
が二人に言葉を投げ掛ける。

そして、こう続けた。



「俺はまだまだ元気なんでね。此処は俺が貰いますよ…一旦下がって其の傷、癒して来て下さいな」



ロイの言葉に込められた真意。

今の状態ではアドラスとウォッカは圧倒的に
戦いに臨むには血が足りていない。

其れ程迄に、大きな傷を負っている。

不本意ながら両者は、其れを理解していた事
も汲み取るには何の障害も無かった。



「わははは…一旦。血を入れてくらあ」


「グハハハ…済まんな。此処は任せた」



振り返る事の無いロイの背後で二人の極道が
戦場からの離脱を図り始める。

アドラスとウォッカにとっては不本意である
事は間違えないが生き永らえた此の命を此処
にて無駄に消化する事は出来ない。

託す想いは、ロイの握る刀に宿った。



「ゴミクズ共を救け逃すのが此れまた反逆罪を背負う元帝国軍少将とは…傑作だな」


「……ゴミクズ…だと?」


「何の異論が有るというのか。奴等は永らく極道として民に不安と恐怖を与え続けて来た極悪な犯罪者共だろう」


「…アンタ、なんにも見えちゃいねェな」


「……ほう?」


「あの人等と触れ合ってみりゃ解る。義理人情と仁義…決してアンタなんかにゴミクズ呼ばわりされる様な人じゃねェよッッ!!」



ロイの怒りの咆哮が戦場に響き渡る。
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