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第十六篇第七章 天下分け目の大戦・陸
襲い掛かる壮絶な痛み
しおりを挟むウィルフィンは逃げ惑う。
ヨハネの覚醒、其の固有特性“痛覚”の効力を
全身に浴び襲い掛かる痛みの中で滴り流れる
血の量が其の壮絶さを物語っていた。
漆黒のマントの形状と成って背に広げられた
蝙蝠の翼が開く度に身体が軋む。
体勢を崩し掛け低空飛行を続ける中でそっと
地を蹴る様に伸ばした片足。
其の足が大地の摩擦を受ける事で痛覚が倍と
なったウィルフィンには耐え難い衝撃が全身
を蝕む様に其の身を嘲り笑う。
「醜い……抗い、そして逃げ惑う。己のチカラの限界を知り得ず、我に無謀にも立ちはだかり無惨にも散る…其の直前でこうまで羽虫の様に蠢き回るとは……笑止とは今の貴様の為に在る言葉だった様だ」
空に其の翼を広げ優雅にも優勢を保ちながら
冷たい視線を落としつつも特殊な羽根の矢を
ウィルフィンに向けて幾度も放つヨハネ。
そんな中、ウィルフィンは自身の現状を此の
窮地の中で冷静に分析していた。
「(厄介な特性を持っていたモノだな……本来なら俺も奴も知らぬ隠された其のチカラで此の窮地を打破して行きたい所だ……だが…)」
心の中で紡いでいた言葉が突如として止まり
ウィルフィンは唇を噛む仕草を見せる。
数秒の沈黙の後、ウィルフィンが其の仕草の
真意にて緩りと言葉を心の中で再度紡ぐ。
「(残念だが……俺の固有特性は…今此の現状を打破出来るモノじゃない……何とも使い勝手の悪いチカラを授けてくれたモノだ…)」
ウィルフィンに逆転の一手は、無い。
本人の言葉から此の窮地が本物で在る事だけ
伝わってしまった事となる。
だが、止まる事は許されない。
各地で此の作戦の第一の絶対条件である陽動
四隊の働きが見事に的中している。
巨大戦力を打ち倒す為に、政府の上級戦力達
を各個撃破して行かなければ此の作戦は背後
に控える真打ち達を待たずして終わりを迎え
全員揃って、反逆者として一生を終える。
そして、此れだけの戦力達が政府打倒の為に
列挙し動く事は時代に於いてそうは無い。
ウィルフィンが負けた時点で其の歯車は狂い
此の大きな好機を逃す事となる。
運良く生き永えられたとしても全員が揃って
次のチャンスに動く事は不可能だろう。
傷付き倒れた仲間は此の機に殺される。
そうなっては、エルヴィスやノア達を擁して
時代を変える事は完全に頓挫する。
国王すら失い、新たな独裁者を迎えて閉鎖的
な国が出来上がり此の国の文化も此の国家の
成長速度も他国に完全に遅れを取る。
現実は、そう。
だが、今のウィルフィンにそんな考えを持つ
余裕は勿論無く、彼を動かすのは唯、一つ。
エルヴィスに其のバトンを繋ぐ事、のみ。
「俺だけが……此処で尻尾を巻いて逃げる道理はどの……視野から見てもある訳が無い…必ず…貴様を打倒するッ!!」
ウィルフィンが身体を旋回させて、ヨハネに
向け改めて攻撃の意思を見せ付ける。
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