RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十六篇第八章 天下分け目の大戦・漆

漏れ伝わる戦況

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此処は、帝国軍本部地下、檻の間。

冷たいコンクリートの壁に包まれた此の場で
スーツ姿の男女の背後に、鎖に繋がれ自由を
奪われたもう一組の男女の姿在り。

無線を取る眼鏡を掛けた女性は此の戦況下の
報告を聞き終えると無線を仕舞い込んだ。



「建物の外は、どんな現状だ?」


「そうね……大分、均衡はしている様だけど…残数勢力的にまだ此方が有利なのは変わらないと思うわ…」


「そうか…随分と戦いの愉悦に浸っている様だ……しかしまあ、同盟軍とやらも一筋縄では行かぬ様子…」


「それに…此処にも同盟軍の魔の手が迫ってる……たった二人で奮闘している様よ…私より貴方が良く知る男達が……」


「……ッ!!……其れはまた……愉しくなって来たじゃないか……」



言葉を交わすスーツ姿の男女。

此の二人は、宰相警護特命衛士という役職を
持つ政府内に於ける大臣職の二人。

名は、アダムとイヴ。

其の二人の会話を耳にし、本当に僅かながら
縛り付けられた身体ごと鎖を震わせる黒髪の
男と其の隣で潤んだ瞳で床を眺める女性。

振り返ったイヴから二人に向けて絶望的とも
言える言葉が放たれた。



「救けが来てます…しかし、希望等持たれません様に……仮に私達二人を貴方達の仲間が打倒しようと…奪還後の道を作る役割だった筈の其の他の戦力は中将クロスの前に沈みました……」


「………ッ!!」


「最早、救かる見込み等ありません。一度救われようとも其れ以上の脅威が貴方達に襲い掛かる……此れもまた運命ですよ。暫定的にお呼びします……国王様……!」



イヴの言葉の矛先は、其の視線の先にて鎖に
縛られ運命の刻を待つストラーダ。

そして、其の妻にしてバルモア人、サーラ。




「………ストゥ…やはり私が捕まった時点で…もう未来は途絶えていたんじゃないかな…」



震えた声で言葉を放つサーラ。

しかし、ストラーダの反応はサーラとは全く
異なるモノであった。



「賭けるしか無い。自分達の命を賭して掲げた此の作戦…彼等がまだ…未来を信じて戦う以上…俺達が其の未来を諦める訳には行かないッ!!」



ストラーダを唇を噛みながら気丈にも言葉を
発すると、サーラは再び深く頭を下げる。



「………作戦?はは、貴方様が何かを狙っている事は百も承知…だからこそ敢えて生かし…時間を置いて其の反乱分子達を今日、此の場に集めたのだ…。愉楽に浸りながら其の総てを終わらせる為に……!」



振り返ったアダムが狂気に満ちた表情で声を
放つとストラーダ達は自身を傷付け、唇から
血が流れる程に歯を立てる。

ストラーダの言う、此の作戦。

作戦の中にはストラーダ達が捕縛されず時期
を見付けて動き出すという目もあった。

つまり、ストラーダ達の捕縛は、作戦を描く
上で可能性のあった道の一つ。

出来る事なら、此の道で戦う事は避けて通る
其れが本来で在ればベストだった。

最底辺の状況下で進行するとある作戦。

其の是非は、作戦が成功であれ失敗であれど
自ずと答えが導き出されるであろう。
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