RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
823 / 954
第十六篇第十章 天下分け目の大戦・玖

ギフトに宿る意志

しおりを挟む





「(私は…ギフトには其々の心が在り、意志が存在すると考えている。証明は今の所、不可能だ。だが、仮にギフトに宿る意志が私達、人間を“依り所”として選んでいるとすればどうだ…?此の国の護り神“鳳凰”が両国を繋ぐ架け橋となりそうな男に宿り三百年振りに顕現した事も偶然では無いと言えるのでは…)」



マッドの仮説は、こうだ。

神から授かりしギフトには其々の意思が在り
心が存在していると言う事。

以前、語られた物語の中に時代の変遷を迎え
大事件が巻き起こる時には必ず其の人間達の
中に“光”か“闇”のギフトを持つ者が居る。

本当にランダムでは無く、ギフトに宿る仮に
此処では“精霊”とでも呼んでおこう。

“精霊”達、其のモノが依り所を選び時代変化
の波の中に身を落としているのではとマッド
は考えているのだ。

そして、自身に聞こえた声を改めて思案する
中で導き出される答えが一つだけ、在る。

依り所が消えれば、其の精霊達は虚無の世界
へまたしても巻き戻り一度、消失する。

消える事は、精霊達にとって防いで置くべき
事なのでは無いか、と。

声が聞こえた其のタイミングで、マッド自身
も固有特性を得て窮地を脱した。

だからこそ、言える。

今は赤子でも化ける可能性を秘めているのが
ギフトという人智を超越したチカラなのだ。



「仮説であろうと、私の勘違いであろうと早急に息の根を止めて置く事にマイナスは存在しない…葬り去る…悪く思うな…」



マッドから放たれる、マグマの葬列は容赦等
無くシャーレの身体を焼き焦がす。

呻き声だけが響く戦場の中でシャーレの意識
は今にも掻き消える寸前となっていた。



「(し、死ぬのか…?私は……)」



そんな瞬間だった。

シャーレにとっては、正に強運。

マッドからして見れば仮説が最悪のケースで
立証されて行く事となる。



『シャーレ君…シャーレ君…私の声が聞こえますか…?』



まるで、水面を叩いた様に伝播する水の音が
身体に染み渡る様に声が心に響く。



「(誰だ…私の名を呼ぶのは……)」


『貴方の中に目醒め、貴方と共に此の戦乱の世に身を投じました。私を信じて下さい…さあ、扉に手を伸ばすのです』


「(扉、だと…?フッ…死ぬのも時間の問題…興じてやろう…貴方の言葉にな…)」



シャーレは、そっと手を伸ばす。

現実には見えてはいない、彼の心の内にのみ
存在する此の、強固な扉へとー。

今迄は、触れる事すら出来なかった扉の鍵が
勝手に開いた音が聞こえた。

其処に唯、手を差し伸べただけだったー。

扉が、緩りと開いて行く。




そして、シャーレの姿が忽然と消えた。



「何…彼奴は何処へ消えた…?死して消える等有り得ぬぞ…臓物は…骨は…何処へ消し飛んだと言うのだ…?」



マッドは初めて、焦りを顔に出す。

そして、突如としてマッドの背中に斬り傷の
様なモノが出現し泉の様に血が吹き出した。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...