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第十六篇第十章 天下分け目の大戦・玖
飛竜の弱味
しおりを挟む「流水覚醒…“ 雅清飛竜”……ッ!!」
シャーレが覚醒を遂げた。
地上から其の姿を見上げるマッドは其の目を
凝らしてシャーレの何かを見抜く様にジッと
其の場から動く事は無かった。
そして、呆れた様な表情でこう呟く。
「言葉は強くともまるで、赤子では無いか…貴様…」
「……何だと?」
「良くぞそんな状態で此れ迄、色々な組織の幹部達と戦って生き残れたモノだな…」
シャーレには、其の言葉が唯の煽り目的には
聞こえなかったのかもしれない。
だからこそ、一度黙り込んだ。
「覚醒の固有特性…其れすら解錠し切れていない貴様が私を葬るだと?冗談も休み休み言い給え…貴様にも見えているのだろう?覚醒を遂げると心の内側に強固な一つの扉が在る事に…」
「……ッ!?」
心の中の扉ー。
其れは確かにシャーレの内側に存在し今迄は
其の扉を開こうにも開き方が解らなかった。
そして、其れは今も、だ。
シャーレは知った。
其の扉が覚醒が秘める一つの可能性でもある
“固有特性”と呼べるモノであると。
「今の貴様なら、私が覚醒を見せる迄も無く焼き焦がし、葬り去れる…。此れが単なる自尊だと思うか?一般人…」
シャーレは、直感的に感じた。
マッドは言葉巧みに相手を翻弄する様な型と
呼べる男では無いという事を。
ペテン師でないなら、其の言葉は紛れも無い
真実で在り、其の答えは見ずとも解る。
「……だが、止まる訳には行かない…!」
「阿呆が…。死に急いだな、一般人…」
シャーレが一気に空から滑空する。
そして、次縹色の流水を纏って青龍刀の鋒を
マッドに向けて突き出した。
しかし、マッドの身体からまるで液体の様に
溢れ出た柳色のマグマは流動的な其の実体を
激しく昂らせシャーレの眼前で爆発を起こし
爆炎が身体を呑み込んで見せた。
「グッ…ッ……」
またもマグマから這い出たシャーレだったが
身体は焼き焦がされ、ダメージは深い。
其処にサッと差し出したマッドの掌から柳色
のマグマの弾丸が放たれる。
そして、其れも同じく大爆発を見せる。
「済まないが攻勢は止まぬよ。貴様を葬るだけでは無く、私にはやるべき事があるのでな。其れに……」
マッドは自身の体験談を思い出す。
そして、其れは不思議な体験であった。
『オイ、死ぬな。テメェが死んだら此の俺様もまた虚無の世界に戻るんだ…しっかり戦えよ。堅物野郎がァ…!!』
「(そう…声が…声が聞こえたのだ。あの時の一度だけだがな…)」
マッドは若き頃に帝国軍の隊士として其の身
を駆り出されたバルモアとの戦争で死を直面
した事があったという。
其の時に聞こえた其の言葉は、マッドの内側
心の奥底から聞こえた様な気がした。
いや、間違い無く聞こえたのだ。
其れが意味するモノは何だと言うのか。
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