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第十六篇第十章 天下分け目の大戦・玖
妖精、舞う
しおりを挟むマッドは、背後から迫る脅威に気付き咄嗟に
振り返ると其処には翠色の髪の女性が居た。
其の女性は妖精の翼にエメラルドの拳を既に
備えて、歯を食い縛り拳を引いた。
「シャーレに…アタシの仲間に…ッ……なにをさらしてくれてんのよッッ!!!!」
女性の拳がマッドの頬にヒットする。
勢い良く吹き飛ばされたマッドを一瞥すると
妖精モチーフの覚醒を遂げた其の女性は急ぎ
翼をはためかせ座り込むシャーレの元へ向け
一気に加速し飛んで行った。
そして、翼を折り畳み、着地した其の女性は
片膝を着いてシャーレに声を掛ける。
「大丈夫ッ!?シャーレッ!!」
「……ポアラ…済まない…随分と格好悪い所を見せてしまっているな…」
「そんなのどうでも良いから…ッ…。はぁ…でも…良かった…シャーレの波動…だいぶ弱まってたから死んじゃうんじゃないかって心配したんだから…ッ」
「ああ、済まない。まだ生き延びたみたいだ…な…」
ふと、弱々しい笑みを浮かべるシャーレ。
其処に参戦したポアラもほんの少しだけ安堵
の表情を浮かべるも、背後にて立ち上がった
マッドの気配を感じて立ち上がる。
そして、シャーレに背を向けて言い放った。
「少しだけ変わるから…。気持ちも波動もぜんぶ、整えて立ち上がって…。まだこの戦争は折り返しのとこだから…もし…アタシ達の誰かが先に死んだりしたら…戦えなくなるよッ!?ロードは絶対…ッ」
「………違いない。ポアラ…ほんの少し任せる。直ぐに私も…其処へ向かう…」
「うんっ!!待ってる…ッ!!」
死に掛けだったシャーレの瞳に宿った一つの
戦う目的、其れは仲間の存在がトリガーだ。
局面に救援に来たポアラも然り、本陣の上で
吉報を待つロードも然り。
シャーレを奮い立たせる条件が整った。
今は、緩りと瞳を閉じて体内の波動の回復を
早める事に専念を始めたシャーレ。
其れを感じ取ったポアラが覚醒状態の拳へと
チカラを注ぎ込んでマッドに立ち向かう。
「またしても…一般人。しかも…女と来たか。貴様等は戦場を罵倒し過ぎだ。背後の死に掛け諸共…焼き焦がしてやろう…!」
マッドの放った柳色のマグマの濁流に向けて
ポアラは全神経を使って大地のギフトの特性
“重力”を放って其の流れを堰き止めた。
そして、またも右拳に波動を流し込みマッド
に向けて其の拳を強く放った。
しかし、近距離戦に難が有るタイプでは無い
マッドはファングを前へと突き出す。
両者の拳が、周囲に突風の様な衝撃波を放ち
ながらぶつかり合うもポアラの勢いが弱まり
マッドの右拳と同化したファングで背後へと
吹き飛ばされてしまった。
「ッ…い、たァ……ッ…!!」
「貴様等の青くさい御遊戯にも飽きて来た所だ…終いにしよう。地獄に堕ちる未来は変えられぬぞ…!」
圧倒的強者の前に、二人はどう立ち向かえば
勝機を見出せると言うのだろうかー。
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